大樹の農事録
[大樹の農事録]

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第2回

皆様こんにちは!この記事を書いている今は田植えが無事終わり、ほっと一息の我が家です。といっても次から次へと仕事は待ち構えているわけなんですけどね。

というわけで、前回は苗の準備と圃場の準備まで話したので、今回は引き続き圃場の準備と田植えの様子をお伝えしたいと思います。

 

北アルプスの残雪に農作業の時を想う

さて、5月といえば田植え真っ盛りで大忙しなわけですが、この季節になると近所でこんな会話が聞こえてきます。

「今年は坊さん遅いなぁ。」
「坊さん見え始めたがまた隠れちまったなぁ。」
「坊さん見えない内はまだ霜と西風には注意しなきゃいけんぞ。」

ん?坊さん?   はい。  彼らの言う坊さんの正体は常念岳の有名な雪形、「常念坊」のこと。

安田さん農事録

「常念坊の雪形」袈裟姿で徳利をさげた横向きの坊さんの姿に見える

この、常念坊は田植の時期を告げる有名な雪形で、ここら辺の農家であれば殆どの人が知っています。そして私たちは毎年、常念岳の坊さんに見守られながら田植えの作業を進めるのです。

ちなみに常念坊と入れ替わりのように現れるのが、「万能鍬(まんのうぐわ)」の雪形。

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「万能鍬の雪形」頭が三又に分かれた鍬の形をしている。もう少しすると鍬の部分だけがはっきりと残る

この万能鍬は農耕の始まりを告げる雪形として知られています。

安曇野のシンボル的存在である北アルプスの常念岳。その常念岳に春が訪れると山頂の雪が解け、起伏により様々な雪形を形成します。
その雪形の見え具合によって昔の人は農作業の時期を判断していたそうです。このような自然の変化に合わせて農作業のタイミングを計ることを「農事歴」といいます。「桜の花が咲いたら種をまく」とかもよく聞く話ですね。 桜の花は積算温度が一定に達すると開花するので「毎年〇月〇日に種をまく」という決め方より「桜が咲いたら」とした方がその年の気候の変化に合わせて農作業ができるので理にかなっているのかもしれません。
今ではカレンダーを見て天気予報と相談しながら作業予定を立てるのですが、こういう自然の変化に合わせた暮らしも大事にしていきたいものですね。こんなちょっと変わった視点で生活を送ると、また面白い発見があるかもしれません。皆さんも身近な山の雪形や草木の変化などで行事のタイミングを計ってみてはいかがでしょうか。

 

圃場準備は鳥さんと共に

話が横道にそれました(^^;)。さて前回説明した圃場の準備も、全ての田んぼの代掻きをしてからまとめて田植えをするのではなく、何回かに分けて圃場の準備→田植えの作業を繰り返して進めます。

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代掻き中はトラクターのキャビン内から見るとこんな感じ。水鏡が綺麗に出来ると気持ちがいいです。荒くれ、代掻き中はひたすらトラクターの中で過ごすのですが、最近のトラクターはエアコンとオーディオ完備で椅子にもサスペンションがついていて快適なんですよ♪ なので私はお気に入りのラジオ番組とマイプレイリストを聞きながらキャビン内で一人カラオケをしています。なんせどんな大声を出しても外には聞こえませんからね。めっちゃ声はります!一人でビブラートの練習なんてしてみたりします(笑)でもたまに気付かずに近くに通行人がいたりするとめっちゃ恥ずかしい思いをします!!

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外から見るとこんな感じ。トラクターの後ろについているのがドライブハローという機械です。このトラクター作業は写真的に絵になる(インスタ映えする)ようで、土日になると観光客や散歩中の人に沢山カメラを向けられます。中の人が撮られている訳ではないということは分かって入るのですが、やはりカメラを向けられると恥ずかしい。なんせ歌ってるから気付かず撮られているとやばい顔になってると思うんですよね。

さて、トラクターに乗ると面白いのが、鳥が沢山やってくること。土の中から出てくるクモやオケラ、ミミズ、幼虫等を求めてトラクターのすぐ近くまでやってきて後をついて回ります。トラクターの中に人がいれば安全だということが理解できているようで、外に出ると逃げてしまうのですが、中に乗っている間は普段ではありえない近さでバードウォッチングが出来るのです。

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アマサギ

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トビ

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セキレイ

他にはムクドリ、カラス、アオサギ、モズ、キジ、ヒバリ、ツバメ辺りを良く見ることができます♪ 鳥の羽の質感や目の色まで分かるほど近くに見ることが出来るのは凄いことですよね。

 

田植えはアート気分

いよいよ田植えです。タイミングを合わせて準備した苗は田植えの時にはしっかり根を張って白いマットを形成しています。

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このように根がしっかり張られていないと苗箱から苗がうまく取れずに崩れてしまい、田植え機にセットできません。苗づくりでは太く腰の低い丈夫な苗を目指します。
そしてこの苗を田植え機にセットして、いざ田植えというわけです。

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これが田植え機を前から見たところ。前に予備苗を沢山乗せて田んぼの途中で後ろの苗乗せ台に苗が無くなったら補充します。この機械では8条を同時に植えていくことが出来ます。そして苗を植えるだけでなく、植えた苗の隣に肥料を落とし、薬の散布まで同時にやっていってくれるのです。更に、昔は田植え機の旋回した後を「えぶり」というとんぼのような道具で綺麗に均していたのですが、今の機械には田植え機の輪形も均してくれる装置が付いているので、機械が通ったあとも綺麗に植えることができます。我が家では導入していないですが最新の機械になると自動運行ができるようになっていて、手放しで直進する機能がついています。今後はどうなっていくんでしょうね。

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田植えで重要なのは水加減です。多すぎると水を押してしまいスピードが出せないし、少なすぎても表面が乾いて硬くなってしまいます。表面が少し見える程度の小水で植えるのが一番なのですが、この水加減がなかなか難しい。しかも田んぼが平らでないとこちらはガブガブ、あちらはカピカピといった具合になってしまい効率よく作業が出来ないのです。やはり平らで綺麗な圃場準備が大切というわけです。この時期はみんな早起き。朝4時にもなれば水見のため軽トラや原付が走りまわっています。

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田植えは安曇野の風景を一変させます。茶色の大地に水が入るとあちこちで水鏡が北アルプスを映し出します。そこへ緑のストライプを描いていく田植えの作業は、さながら「安曇野の風景に色を塗っていく」様な感覚です。
そして田植えが終わると安曇野は一面鮮やかな緑に染まります。と同時に始まる「蛙の大合唱」。合唱というか騒音レベルですね(;´∀`)。慣れていない人は夜窓を開けて寝たら気になって寝られないんじゃないでしょうか。まぁ、うるさいですが音でもしっかりと四季を感じられるということですね。

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田植え機も種類がいくつかありますが、個人的にこの写真の機種は顔がどことなくアニメ作品『交響詩篇エウレカセブン』の機体「ニルヴァーシュ」を連想させるので好きです。ヤンマーはデザインを一新してカッコよさをアピールしていますが、農機具全般を『ガンダム』とかとコラボしてデザインに遊び心出した方がもっと購買意欲出ると思うんだけどなぁ。機械の始動時とか警告音は電子音じゃなくて声優さんの声でお知らせしてくれた方が絶対テンション上がるのに。
という感じで、今年の田植えも大きな問題は無く無事終えることが出来ました。予想通り麦の生育が早いです。この後田んぼに除草剤をまいたり、草刈りしたりと沢山やることがありますが、当面は麦刈り準備に追われそうです。

ちなみに安曇野市では大河ドラマ「いだてん」の田んぼアートをやっています。6月2日に完成イベントがあり実行委員として参加してきました。中村勘九郎さんや永島敏行さんはじめ、安曇野ハーフマラソンから駆けつけてくれた有森裕子さんも含めてみんなで田んぼアートの完成を祝いました。
展望台からの観覧は6月15日から出来るようなので、安曇野に来た際は是非立ち寄ってみて下さいね。安曇野インターを降りて真っ直ぐ進んだところにあるスイス村という施設に展望台があります。本当に真っ直ぐ行けば着くので分かりやすい場所ですよ。

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完成イベントの様子。この後みんなで一緒に田植えをしました。
田んぼアートは稲が育ってみないと上手くできているか分からないので色がはっきりするまで不安です。植える場所が間違ったりしていませんように!

今回はこのくらいで、次回の農事録は麦刈りからお話できるかな。

 

農事録番外編
長野県のおいしいつまみ:5月

さて、勝手に始めたこの企画。5月はこれだ!!

破竹とさやえんどうの卵とじ

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和風なやつがでてきましたねぇ。旬なものとして意外と出てこない破竹(はちく)。破竹といえばメンマっしょという声も聞こえてきそうですが、シンプルに卵とじも美味しいですよ。ここでポイントなのがさやえんどうが入っていること!さやえんどうは私の好きなお味噌汁の具ランキング1位です。あの甘さとさやえんどうにしか出せない香りが最高ですよねぇ♪ これが入ることによって色味と香りがぐんと増して、破竹の食感とのハーモニーが幸せを運びます。

 

そしてそしてーーー

アスパラガスのピザ

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とにかく旬のアスパラは甘い!柔らかい!!うまい!!!
アスパラベーコンなんてビールのおつまみには最高ですよね~。
だがしかし、我が家のおススメはアスパラのピザ!

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我が家では月に一度は手作りピザを作ります(正確には作ってくれます)。ピザ生地だけホームベーカリー「GOPAN」で作れば乗せるものは何でもOK。子供がマルゲリータが好きなので1枚はマルゲリータ。バジルは畑に生えているやつをむしってきます。2枚目はアンチョビだったり照りチキだったり生ハムだったり♪ 全部美味しいんですが、この季節はアスパラピザがめっちゃ美味いんだなぁ。写真はトマトソースにアスパラとベーコンと生ハムを乗せています。何より家で作ると焼きたてで食べられるっていうのが一番いいですよね。手作りピザは作るのも楽しいし美味しいから子供も大好物!
そういえば皆さん、アスパラは冷蔵庫の中でどうなっていますか?アスパラの保存方法のポイントは立てて置くことなんですって。寝かせて置いておくと真っ直ぐ起き上がろうとして無駄なエネルギーを使ってしまうんだとか。でも基本は出来る限り早く食べてしまうのがいいですね。

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ちなみに我が家では「ピザを作ったら白ワインを開ける」と暗黙の了解で決まっています(笑)。ワインは詳しくはないのですが夫婦で大好きで毎回違ったワインを買ってきて楽しんでいます。お気に入りはやっぱり「NAGANO WINE」。ブドウの品種はナイヤガラが好きです。でも岩の原ワインや甲州のワインも好きだなあ。NAGANO WINEで何を買っていいか迷ったら「長野県原産地呼称管理委員会認定」のものを選んでみましょう。長野県のワインの原産地呼称管理制度は特に厳しいらしく、有名なソムリエさんも「信頼していい」と言っていました。でも最近増えているほんとに小さいブティックワイナリーも美味しいワインをいっぱい作っていて皆に知ってほしいです。普段は夫婦でボトル1本なんですが、何かしっくりする組合せがあると一晩で2本空くこともあります(;´∀`)。たまにね。ほんとたまぁに。。。
長野県には酒蔵やワイナリーやブルワリーが沢山あって本当に幸せ。近年ではシードルやサイダーも増えているし。特に農業をしていると作り手との繋がりもあり、そんなこだわりとか想いとか苦労話も聞いてしまうと美味しさが2倍3倍になりますねぇ。おや、何だかつまみよりお酒の話になってきたぞ。
今回の田植えでは日本酒の原料になる酒米も植えているので追々日本酒の話もしていけるかな。
皆さんのおすすめのおつまみやお酒も教えて貰えたら嬉しいです♪
ではでは6月のおつまみもお楽しみに♪

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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