浦部さんの農事録
[浦部さんの農事録]

新しく農家になったふたりの農事録 第5回

連載※長野県北安曇郡松川村の浦部勇一さん(38歳)と同い年の千代美さんご夫妻に、月々の農事などを伝えていただきます。浦部勇一さんは2005年から長野県が行う里親支援制度に登録し、この4月に独立した新規就農者のひとりです。

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農家には忙しい時期に、
ゴールデンウイークという厄介な
――(サラリーマン時代はありがたい)――
ものがありまして・・・
ここ安曇野はご存知の通り観光地!
我家の前の道は観光道路(観光バスも通る道)!
県外車がゾロゾロ行き来して
田植えをしている農道にまで
迷った車がうろうろ。
そんな普段の村には有り得ない状況のなか、
いよいよ5月3日からはじまりました、
田植えですよ!!

「な んかさぁー毎日楽しいよねぇ〜」 3月の中頃から休みらしい休みが取れない主人の言葉です。この言葉を聞くとわたしも幸せな気分になります。

昨年あたりはまだまだ毎日の仕事に不慣れと言いますか、次に何をやったらいいのか? 何処の田んぼに行ったらいいのか? 今日必要なものは何なのか? 全てにおいて考えても分からない事、つまり経験の少なさゆえの無駄な時間がとても多かったのです。

しかし! 今年は違います。

里親のお父さんが「あそこの○○さんの田んぼに行ってくれや〜」と言うと「ハイ!○○さんの田んぼですね。」とか、主人が「明日の種まきの準備しておきますね」とか言って必要な道具を揃えたり・・・まぁなんともスムーズな感じになってきました。まだまだですが無駄な時間が有ったお陰で順序や段取りが分かってきたようです。(無駄じゃなかったのね)

dekai.JPG月の10日頃から主人は畦塗りをはじめました。主人の乗るトラクターは通称"ちびジョン"(ジョンデアー社のトラクターでお父さんの乗っているのより小さいから)と言いまして、それに畦塗り機を付けて、村中に散らばっている田んぼに順番に入って作業します。

主人曰く「この作業の唯一の欠点はトラクターのスピードだ!」と。それは極低速で、まっすぐに前進しないとダメで、その遅さ加減には居眠りしてしまいそうなほど。でも油断すると、すぐに畦が曲がっていき、昨年は2〜3枚激しく曲げて、怒られてしまったとか。

azenuri.jpg前回にも書きましたが作業する田んぼの面積が増えています・・・必然的に畦も増えます・・・と言う事は、畦塗りの作業も何日かかかりますし、機械の刃も消耗します。で、今年は畦塗り機の刃をトータル3セット変えました。この3セットの刃(3セット分の経験)のおかげで、「今年は褒められたよー」と主人は喜んでいました。ちょっと自信がついてきたのかな?

畦塗りが終わると、今度は畦塗り機をロータリーにつけ替えました。水を張る前の田んぼの起しです・・・今年はなんと3日間で終了。かなりの力技でガンガンと進めました。

度は"荒くれ"と言って、トラクターのロータリーをウイングハローにつけ替えて、水の入った田んぼに入って、泥と藁くずなどを攪拌(かくはん)しつつ、ならしていきます。

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"ちびジョン"の雄姿

これを1回やって、2〜3日後に土が落ち着いたら、今度は"代かき"で、田んぼを真っ平らに仕上げる。これで田植えの準備は終了です。

このウイングハローを使っての作業はとても難しく・・・理想は"鏡のような田んぼ"なのですが、実際はどこかしら高かったり、泥が上手く寄らなくて、スジが出来たりと、結構気を使う作業のようです。

トラクターの作業なんて「カッコイイなぁ〜」と思いまして、昨年にわたしも免許を取りました。でも主人のように荒くれ代かきなんてとんでもありません。場所によっては田んぼに入るのが危険な所が多くて、主人もトラクターをいつひっくり返す事かと、日々緊張しながら作業をするそうです。

わたしが乗れるのは畑用の小さなトラクターだけ。何年か前にトラクター事故で小さな命が亡くなっていますし、ひっくり返った話も毎年のように聞きます。機械に危険はつき物なので毎回慎重に扱う必要がありますね。慣れてきた頃が危険かもしれませんから、今年は要注意です。

回書きましたが、4月の5日、6日、12日、13日の4日間、種まきをしました。種は"美山錦(酒米)"と"コシヒカリ"です。

今年は天候に恵まれて、日中暖かく(暑いくらい)育苗ハウスの中も熱気でムンムンな程。順調に芽を出し、すくすくと伸びてくれました。昨年は毎日寒くて保温用のシートを掛けても芽がなかなか出ず「まだかいな、まだかいな」とやきもきしたものです。

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順調に育っている苗の管理ですが・・・暖かければ朝ハウスの窓を開け、保温シートを外して乾くようなら水遣りをします。夕方には窓を閉めて保温シートを再び掛けます。これを毎日繰り返すのです。

新しく建てたハウスは潅水パイプを通してありますが、潅水設備の無いハウスはホースの先にシャワーをつけて、端から入念に水遣(や)りをします。これが結構時間がかかって、2時間位はあっという間。こうして大切に育てられた苗は一面の緑で、ツンツンの絨毯のような立派な苗に成長して、それぞれの旅立ち(田植え)の日を迎えようとしています。

よいよ田植えの日。田植機が姿を見せました。あれれれれ? なんだか去年の田植え機と違うんじゃない、あれ??? 色も形も違うよねぇ〜。もしかして、お父さん(里親さん)・・・えー、買っちゃったの? かくして暴走するお父さんの状況は次回に紹介します。乞う、ご期待。

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田植機登場

「明日も田植えだって!朝早く起きれるかなぁ?」

この記事を書いた人

長野県北安曇郡松川村の浦部勇一・千代美さんご夫妻に月々の農事などを伝えていただいています。浦部勇一さんは2005年から長野県が行う里親支援制度に登録後、独立された新規就農者。おふたりは6年ほど前に神奈川県から長野県に移住してこられました。

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