2021年4月から当サイト「農家さん日記」(旧 農事録)に連載している、長野県原村で主にセルリーを栽培する平出悠太さん。
7月のセルリープレゼント企画の際、平出さんへの質問を募集したところ、たくさんお寄せいただきました!
多かった質問や重複する内容をまとめて平出さんにお答えいただきました。気になるアレコレを、農家さん自身に回答いただくレア企画です。
それではご覧ください!
Q.1 おすすめのセルリーレシピを教えてください!
一番多かったのがレシピや食べ方。好きな食べ方、おいしい食べ方、おすすめのレシピや、秘密のレシピを教えてほしいというご質問をたくさんいただきました。
A.1 平出さんの回答
一番、無難なのが汁物系です。セルリーは、海外では香味野菜の分類なので、「ミネストローネ」や「ポトフ」が相性抜群です。
セルリーの匂いが苦手な方は、匂いで誤魔化せる「カレー」がおすすめです。
うちでは細かく刻んで「ハンバーグ」にも入れています。
やわらかい6月までのやわらかいものは、生で食べるのもいいですが「浅漬け」も良いですね。
葉っぱは「天ぷら」が一番おいしいです。
人からいただいて最高だったのは「キムチ漬け」です。キムチの素がちがったのでしょうか、我が家では再現不可能でした。
Q.2 おいしいセルリーの見分け方や、保存方法を教えて!
やっぱり気になるのは、店頭でのおいしいセルリーの見分け方と、その保存方法。これを読めば、セルリーマスターになれそうな回答です。
A.2 平出さんの回答
セルリーは株で育つ野菜なので、外側と中心でやわらかさが変わります。外側がかたく、中心の方がやわらかいのが基本です。
スーパーでは株を分けられて売られていることが多いので、判断が難しいと思いますが、緑が多くて下の部分が扇形をしているのが株の外側(つまりかため)、白が多くて下部が四角いものが株の内側(つまりやわらかめ)だと思ってください。
時期によってもかたさが変わります。5・6月、10・11月の涼しい時期のものが特別やわらかく、7〜9月の暑い時期のものはかたいものが多いです。
セルリーは鮮度が落ちると水分が抜けていることが多いので、手に持った時にしなってしまいます。なので、やわらかいものより、かたいものの方が、鮮度があると思っていいと思います。
保存方法は、出荷時に使用する「JA信州諏訪」と表記があるフィルムに巻いておくのが一番いいのですが、スーパーではがされてしまうことが多いです。
なので、スーパーのフィルムがあれば、それを使って、さらに新聞紙を巻くのがおすすめです。とにかく水分を飛ばさないようにするのが一番です。
Q.3 セルリーとセロリ。呼び方がちがうのはなぜ?
A.4 平出さんの回答
要は英語とフランス語のちがいなのですが、スペルで書くと「celery」です。これを英語風に発音すると「セロリ」。フランス訛りで読むと「セルリー」となるようです。
つまり、どっちも同じです。夏の産地である原村と同様に、冬の産地である浜松でも「セルリー」と表記します。
SMAPの歌の影響で「セロリ」が有名になったところもあると思います。
Q.4 セルリー以外も育てていますか?
A.4 平出さんの回答
家族や従業員で食べる野菜は作っています。
今年はトマト、なす、きゅうり、カリフラワー、レタス、キャベツ、白菜、大根、菜葉、すいか、メロン、いんげん、シシトウです。
セルリー以外で出荷したのは、とうもろこし、お米、サニーレタス、ブロッコリーです。
今年はブロッコリーをやろうと思っていて、去年から練習して、 1ヘクタール植えつけました。現在、絶賛出荷中です。
自分たちで食べる野菜は、ほとんど管理しないので、勝手に生えてきている印象です。
さすがに出荷するものとなると、肥料や病害虫の管理はしますが、植えてからの管理という部分ではセルリーが圧倒的に面倒です。こんなに手がかかるのは、野菜というより果物のレベルかなと思っています。
セルリー以外の野菜を育てて感じたのは、野菜につく虫はどれも似たような虫であるということ。病原菌も種類はほとんど同じで、野菜側の発病の仕方で、病名がちがうだけということ。
なので、使用可能な薬品はけっこう共通していることが多いです。ただ、野菜によって気をつける時期やテクニックがたくさんあるので、やはり先輩に聞きながらやるのが一番です。
Q.5 雨の日も収穫するの?セルリーは雨に弱いですか?
A.5 平出さんの回答
雨の日も出荷しています。ただ、台風だけは別で、意図的に休みにすることもあります。
セルリーは、雨はあまり気にしません。ただし、最近のゲリラ豪雨のような降り方は良くないです。あのなか、平気な顔をできる野菜の方が少ないと思いますが…。
最近は精度の良いアプリが多く、2日先くらいまでの天気はわかるので、ハウス内でできる仕事をあと回しにしたり、作業量をできるだけ一定にして、きちんと休めるように工夫しています。
Q.6 平出さんの1日のスケジュールを教えて!
A.6 平出さんの回答
2月の仕込み時期は、10日に1回植え替えして、あとは毎朝、水をやって終わりです。
3〜6月の収穫前の時期は、7時から8時に仕事がはじまり、12時から13時30分まで昼休憩、17時30分には終わります。
7月からの収穫最盛期は、深夜1時30分から収穫をはじめます。朝6時ぐらいに終えて、そのあと8時から12時まで午前の仕事。14時から17時30分まで午後の仕事です。
11月は日が短いので、8時から昼を挟んで16時30分ぐらいには終わりますね。
12〜1月はほとんど休みです。
Q.7 セルリー栽培で一番うれしいこと、大変なことを教えてください。
A.7 平出さんの回答
農協へ出荷していると、なかなかお客さんの顔を見ることは難しいですが、「おいしい」「ありがとう」と言っていただけるのが、ものづくりしている人間はみんな、うれしいですよね。
あとは、ロスなく出荷できている瞬間が一番やりがいがあります。出荷は大変ですが。
大変なのは、失敗した原因を突き止めることです。
産地として有名な地域では、どこでも課題なのですが、気候の変化や疫病などをどうしたらいいのか、どこでまちがったのか。野菜は結果しか教えてくれないので、見えないものとの戦いが一番の課題です。
Q.8 テレビ業界から転職したきっかけ、気持ちや生活の変化を教えてください。
A.8 平出さんの回答
私が働いていた制作会社はテレビ局の下請け会社で、何年か経験を積めば昇格するわけではありませんでした。けっこう「運」が大きいです。
総合職のように、いろんなことを体験させてもらいましたが、人から「ありがとう」と言ってもらえる仕事ではないと感じたのと、人間関係の板挟みになることに疲弊して、だんだん自分で仕事の方向性と量を決めたいという感情が大きくなっていき、辞めてしまいました。
労働環境が良くなったかというと、じつはそれほど変わっていません。いいことはベットで眠れるようになったぐらいで、炎天下のなかで1日中、外にいるのは、テレビの時とはまたちがった大変さがあります。
一番変わったのは体型じゃないでしょうか。体重は年々増え、58kg→73kgぐらい増えました。これでやっと1年戦えるようになりました。
Q.9 10年後のセルリー栽培は、どう変わっていると思いますか?変えたいことはありますか?
長野県原村でのセルリー栽培は、100年の歴史があります。
A.9 平出さんの回答
現状の株での出荷に限界がくると思います。魚の切り身ように、ある程度、形を整えて、トレーに入れた状態で出荷するようになるのではないかと思っています。
ここでは書けないことやしがらみなど、まだまだ野菜を取り巻く環境は障壁だらけですが、10年経てば今、現役の人たちが辞めていき、私たちの世代が引き継ぐことになります。
何かが大きく変わるとすれば、まちがいなく私たちの世代なので、変化に対して後追いではなく、自分たちから変わっていけるように動いていきたいです。
まずは若い人が中心になって、SNSで発信するようにしていかないといけないと思っています。
以上、平出さんに9つの質問にお答えいただきました。ここに載せられなかった質問もたくさんあります。お寄せいただいたみなさま、ありがとうございました。
県内でも一大セルリー産地の長野県原村。みなさんも一度は口にされているかも。今回の企画で、みなさまと生産者の距離が少しでも縮まったらうれしいです!