飯島さんの農事録
[飯島さんの農事録]

仲間と楽しく、農業を。飯島さんの農事録 第5回

飯島さん農事録

 

こんにちは!
ここ武石地域は、お盆を過ぎたころから朝夕が涼しくなってきました。それに伴って秋の農作業も進んでいます。ダイコンや白菜、そして野沢菜など、冬を越すための野菜を畑に植え、稲刈りも9月下旬ごろから始まります。田んぼではこれから収穫の時期を迎えるわけですが、その準備もあり忙しい毎日となっています。収穫は今までの苦労などが返ってくる嬉しい時期でもありますよね。

ただやはり心配なのは天候です。全国的な7月の長雨、記録的な8月の少雨と猛暑に続き、先日は大きな台風が九州地方一帯に大きな爪痕を残しました。そして、台風はこれからが発生の多い時期となります。長野県は高い山に囲まれており、他県に比べると台風の被害は少ない方だと思うのですが、私のところもビニールハウスを建ててアスパラを栽培しているので、注意や対策を十分に講じていきたいと思っています。

 

冬に向けた作付

冒頭で秋の農作業が進んでいることをお伝えしましたが、私が出荷している作物にもそのような野菜がいくつかあります。

1つはカボチャ。冬至のころに皆さんに食べてもらいたいと育てています。カボチャは7月中旬に種をまき、11月ごろに収穫をするのが東信(長野県東部)の地域で多くみられる作付の方法の1つです。ただ今年は、7月に雨がずっと続いてしまったため畑の準備すらできず、結局8月中旬に苗を定植する事態になってしまいました。ほぼ1ヶ月遅れの栽培なのでちゃんと実は大きくなるか、大きくなった実は美味しく熟してくれるのか、といろいろ心配ではあるのですが、買わない宝くじは当たらないのと一緒で、植えないカボチャは収穫できない...。と思い見守っているところです。

種を播いた作物はもう1つあります。タマネギです。皆さんもよく使う食材ですよね。8月下旬に種を播き、10月下旬ごろに定植を行い、6月下旬に収穫をします。
今年は8月25日に種を播きました。その際にはパートさんや家族にお手伝いをお願いし、老眼鏡をお供に13,000粒をまいてもらいました。

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8月30日

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9月10日

写真は8月30日の発芽したての様子と9月10日の様子です。10日くらいの差ですが、大きさが全然違うでしょ! タマネギに限らず種を播くたびに思うのですが、植物ってすごい生命力ですよね。ゴマ粒くらいの大きさしかないものが、数100、数1000倍にも大きくなるのですから。
ちなみに、以前に収穫の様子を紹介したタマネギは今も出荷しています。上田市の学校給食用や隣町にオープンした直売所「マルシェ黒耀」に出しているのです。
今年は、西日本で栽培されていたタマネギが順調でした。しかし、淡路島のタマネギのように生産調整のため収穫されないまま潰される、などというニュースが流れていたため「今年のタマネギの値段は安いかなぁ...」と思っていたところ、7月の長雨の影響で思いがけず高い値段で買っていただいています。

 

居候の次は珍客!?

さてさて、水田や畑が一面緑色になる季節には珍客が訪ねてきます。特に山間地に近いため「お客様」も多く、私の畑にも例外なく訪ねてきたものがありました。
前回は「居候」を紹介しましたが、お客様の場合、その畑の主人が畑で作業している時にはなかなか訪ねてきてはくれず、気の向くまま(?)お腹のすいたとき(?)に勝手に来て勝手に帰っていくという、何とも失礼なお客様なわけです。
どなたであると思いますか?
私のところの場合は「鹿」です。

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鹿の食害

お土産に持って帰ったものは、柔らかくて栄養のあるカボチャの新芽でした。ある程度ツルが伸びた際にその先端を食べていったので、実にはさほど影響ないかと思っています。

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クマの被害にあったトウモロコシ畑

私の仲間のところでは、甘くて実のたくさん詰まったトウモロコシを食べにくる「クマ」や「イノシシ」が出るとのこと。我儘し放題で帰っていくようです。それに比べると私のところはかわいいお客様なのでしょうね。

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その他にもアスパラの畑をトイレと勘違いされているタヌキさんや、セリ科の作物を好んで食べる食欲旺盛なアゲハチョウのお子様などが来場されるのです。「虫」の類をお客様として紹介を始めてしまうときりがないのでこの辺にしておきましょう。

そうそう、虫で思い出したのですが、前回の問題とさせてもらった黄色いツブツブの正体、わかりましたか?
答えは「テントウムシ」の卵です。農協の技術員さんがそう答えてくれましたので間違いないと思います。

 

最近のアスパラは?

これまで、アスパラの管理方法で「茎枯れ病が...」と言いうことを何回か話題に出しましたが、今日まずお伝えしたいのは「虫」。要するに害虫のことなのです。今年は8月に乾燥していた期間が長かったので「アザミウマ」というごく小さな害虫が発生しやすい環境になっており、いたるところにいるかもしれません。ただ、本当に小さく、パッと見ただけではわからないのです。
もしアスパラの葉が全体的に以前より白っぽくなっているようでしたら疑ってみてください。そしてコピー用紙を1枚平らに持ち、そこに枝ごと軽く数回たたきつけてみてください。アザミウマが発生している場合は、針の先のように小さな黄色い物体がウヨウヨと四方八方に逃げていく様子を見受けることができるはずです。
コイツはしぶとい害虫の1つで、蔓延してしまうとなかなか厄介です。いろいろな作物で発生し吸汁するのですが、その吸汁の跡がこれから出荷するものに残ってしまったり、作物がウイルスに感染する原因にもなってしまいます。
この退治に関しても難しく、まずは雑草を少なくすることが大切だと思います。農薬を使うのでしたら、アザミウマ類に登録のある数種類の農薬を数回に分けて定期的に散布することが必要でしょう。ただし、世代交代が早いので農薬に対する抵抗性がつきやすく、1種類の農薬を使い続けるのはお勧めできませんよ。
もう1つは「斑点病」です。私の圃場では少し涼しくなった今ごろから増えてくるような気がしています。特に枝や葉の込み合った、風通しの悪いところには発生しやすいようです。
ここでもう1度「なぜ病気を防ごうとするのか?」ということを考えてみてくださいね。虫の食害による葉のダメージや茎枯れ病、そして、この斑点病の発生は、それらによって根っこへの養分の蓄積を阻害し、翌年の収穫量に影響を及ぼすのです。来年も美味しいアスパラをたくさん食べれるようにするためにも、しっかり防除していきたいものですね。
残念ながらこれらの写真がありません。アザミウマに限っては小さすぎて写せないこともあります。インターネットなどを利用して詳しく調べてみてくださいね。

農薬を使用して防除を行うということも大事なのですが、畑をきれいに保つことも大事です。前回は雑草の管理の悪い例をお伝えしました。育てたい作物のそばや畑の周囲で雑草が大きくなることで、そこから害虫や病気がうつってくる可能性が高くなります。
同じように考えると、病気だからと言って取り除いた茎を畑に放置しておくことも良いことではありません。特に病原菌は土の中で今か今かと待ち構えているものが多くて、その菌が土の中で待機している数が多くなればなるほど病気が発生するリスクも高くなるのです。
そのようなことから先日福祉施設の方々にお願いして、畑に放置されていた茎をきれいに片付けていただきました。おかげで畑も私の気持ちもスッキリ!

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その時期に味わいたい!

さて、夏場の太陽の光をたくさん浴びた野菜は、見た目も味も美味しいわけですが、これからの作物だって負けていません。「食欲の秋」と呼ばれるくらい、どの食材も美味しい時期となりますよね。もう少し我慢すると新米が食べられます。近くの直売所ではブドウが棚いっぱいに並ぶようになってきています。なかなか手は届きませんが、山からはマツタケなんかも届く時期です。
昨今はどの作物に関しても施設で栽培できるようになっています。栽培技術も向上していますし、鮮度を保ったまま長い時間保存できたり、輸送できたりもするため、どのような食材も1年中手に入るようになっています。便利であることは素晴らしいことなのですが、せっかく美味しいものがたくさんある時期なので、旬の作物を旬の時に食べる贅沢も味わってみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

飯島正行さん

農業を行っている会社や農業に携わる組織で仕事をしていた飯島正行さん。そこで培った経験から「自分で農業がしたい!」と、上田市武石で就農して5年目になります。武石は水も気候も農業に適しているし、何より若手が多くにぎやかなのがいい!青年部の仲間とともに楽しい農業を目指します。

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