飯島さんの農事録
[飯島さんの農事録]

仲間と楽しく、農業を。飯島さんの農事録 第2回

飯島さん農事録

 

こんにちは。
1回目の投稿を終え、皆さんから寄せていただいたコメントに返信しながら、「さぁ、2回目の原稿のネタを集めなきゃ!」と思っていた矢先、コロナウイルスの影響によって第2回の農事録(2020年5月分)中止の連絡が入りました。
前回お伝えしたように、私にとって5月は忙しい時期でしたので、その時は非常に助かったのですが、今になってアタフタしています。この2か月の間にたくさんの変化があったため、まとめきれない状態になっているからです。
とにかくありったけのことをお伝えしようと思っていた時に、編集部から「栽培方法を載せてみませんか?」というご提案をいただきました。
皆さんからいただいたコメントに「アスパラガス(以下、アスパラ)を栽培してみたいのだけど、なかなか難しくって...」や「太いアスパラを収穫したいのだけど、どうしたらいいのかなぁ...?」と言ったことが多く寄せられていたからです。
そこで、最近あった出来事をお知らせしつつ、栽培方法も欲張ってみようかと思い、パソコンと睨めっこを始めましたが、いざ文章にしてみると書くことがたくさんありすぎて、ただただ長くなってしまうばかり...。
いろいろ考えた結果、今回は3月〜6月頃までのアスパラの栽培方法をお伝えし、その他のことは次の機会にしてみよう、と思います。

 

アスパラには「がまん」が必要

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さて、アスパラの栽培方法です。
始める前に、先にお断りしておきたいのですが、これから記載することは、あくまでも私個人の方法であり、すべて正しいことではありません。自分に合った方法もあるでしょうし、その土地の気候や土の状態で向き不向きがありますので「これは私でもできそう!」とか「この方法は試してみようかな!」くらいに考えてくださいね。

アスパラは「がまん」の必要な作物だと私は思っています。もちろん肥料も大切なわけですが、植え付けてから株が大きくなるまで「収穫せずに待つこと」が必要だからです。
そもそもアスパラは、根っこに十分な養分を溜め込む特性があり、その名も「貯蔵根」と言います。私たちが春に食べることができるのは、その溜め込んだ養分のおかげなのです。そのため溜め込んだ養分以上に私たちが食べすぎてしまうと、アスパラは身を削りやせ細ってしまうことになります。

余談ですが、アスパラが収穫できるまでの数年は、別の畑でズッキーニを作っていました。そして同じ地域の農家さんがアルバイトをさせてくださったので生活できました。ブロッコリーの収穫、肥料まきのお手伝い、稲刈りの時のライスセンター(※1)のお手伝い、などなど...。その時期ごとにあちこちから呼んでいただき仕事をしていました。地域の方のおかげでどうにかここまでになっていますし、JA青年部に所属しているおかげで、この農事録ともつながることができました。
(※1)もみの荷受・乾燥・もみすり・選別・出荷などを行うところ

では、私がアスパラを植えたころにさかのぼって月ごとに追ってみようと思います。

 

《3月》畑仕事が始まるうれしい季節

山にも道端にも色々なものが芽吹いてくる季節です。アスパラに限らず畑の準備を整えておきたい時期でもありますよね。
私の場合は肥料をタップリ混ぜ込みました。使った肥料は豚糞でしたが、完熟ではなかったので秋に肥料をまいて起こして(耕して)おき、さらにこの時期にも起こしました。未熟な堆肥は作物に悪い影響を与えることが多いのです。たとえば、十分に肥料に変化していないため、そこから出るガスなどで根っこにダメージを与えたり、肥料としての養分を吸収できません。そのうえ匂いに集まってくる害虫もいるようなのです。

肥料は、堆肥を使ってみてはどうでしょうか。
理由としては、やはり味が良くなると思われること。そしてもう一つは、肥料としての持続時間が長いことでしょうか。栽培期間が長いアスパラだから、ということもありますが、畑に対しても有機物が増え、そのおかげで畑の保水力が良くなるとされ、その反面排水性も良くなるといわれています。ただし、堆肥は「昨年やったから今年はいいや」というものではなく、毎年続けていく必要があります。
ホームセンターに並んでいる「堆肥」は、どれも「完熟」堆肥として売られているはずです。化学肥料を使われる方は肥料の効果がすぐに現れるものと、ゆっくりジワジワ効いてくるものの2種類を使ってみてはどうでしょう。

ちなみに、私が施している肥料の量と回数は、植え付け前の堆肥は豚糞を8㎏/㎡以上全面散布しました。この豚糞の量は他の作物では考えられないくらい多いです。追肥には鶏糞を2㎏/㎡くらいは入れています。また、収穫していて急に収穫量が少なくなったり、アスパラガスが細くなる時が必ずあるのですが、そんなときは液肥を灌水時に入れています。

さて、準備した肥料を畑に入れるわけですが、農業技術員の方々には、畑全面、または畝に施すこと以外に、40~50cmくらい深く溝を掘った底に堆肥を入れ、そのうえに土を戻すということ教えていただきました。根っこが伸びてきた時に、深い所に埋めた堆肥が役に立つようなイメージです。

 

《4月》植え付けの時期です!

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最近は1年養成株(根っこの状態)のアスパラガスをお店で見かけるようになりましたので、こちらを購入することをおすすめしたいです。
「種をまくところから始めたい...」という方は畑に直接種をまくことをせず、小さなポットのようなものにまいてみて「発芽したかな?」から始まって「水は足りているかな? 多すぎないかな?」など自分の目の届くところで管理し、苗として畑に植えるほうが確実だと思います。種をまくための土は、ホームセンターなどで売られている「種まき用」の土を使えば、肥料もある程度考えられているはずですし、水はけも良いはずです。そして雑草があまり出てこないことにもつながります。育苗トレーなら発芽してから10~15cmくらいの丈になったら、ポットの場合は根っこが十分に伸びたら畑に移せると思いますよ。

もしかすると、「まったく収穫できなかった...」という方は、種を直接畑に播き、大きくなる前に何かしらの理由で絶えてしまった、なんてことがあるかもしれませんね。このとき灌水(水やり)に注意してみてください。多すぎる水は種や根っこが腐ってしまうこともあるのです。発芽するまでは湿っている状態にする必要がありますが、芽が出てきたら毎日たっぷりの水をやるのではなく少し渇き気味の時があってもいいと思います。そうすることで「根っこが水を探して伸びるから」と教わったことがあります。

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ようやく植えるわけですが、1年養成株は10cmくらいの深さで20~30cmくらいの幅の広い溝を切って、その溝の底に根っこが八方に広げるように置き、土をかぶせていきました。株の中心から次の株の中心までは30cmにしました。

目の届く所で種から栽培し苗を植える方は、今まで栽培したことのある野菜よりもずっと深めに植えるほうが良いかと思っています。

苗として育て植え付ける場合、畝には「ポリマルチ(マルチ)」を使うことも有効です。マルチは永久に使えるわけではなく、1年くらいが限界でしょうね。はがしやすい状態の時にきちんと剥ぎ取り(畑にゴミとして残らないよう注意)、その後はマルチに代わって、何かしら土を覆うもの(藁など)があればよりよいかと思います。

突然ですが、ここで問題です。

20200624iijima08.jpg 《第1問》
ホームセンターなどでポリマルチが売られていますが、いったいこの「マルチ」なるものを使うと、どのような効果があるのでしょうか? 3つ挙げてください。

《第2問》
マルチにも色々な色があります。
ここに①透明、②黒、③白の3色のマルチがあるとします。この中で土の温度が一番上がるのはどれでしょうか?

どうしましょうか? すぐ答えを出したほうが良いですか? いやいや、次の農事録までゆっくり考えてみてください。もしかすると答えをお伝えすることを忘れてしまうかもしれませんが...。

 

《5月》ちゃんと育つかな!?

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根っこが伸び、水分や養分を吸うことができるようになると、地上にアスパラらしきものが伸びてきます。まだ細いけれど、まだ頼りないけれど、それが1年目(植えた時から数えて)のアスパラです。
さぁ、ここで「がまん」です。私が1年養成株を植え付けた際には、その年はもちろん収穫なし! そもそも細くて「おぉっ、やっと出てきたかぁ」という感じで、その後時間が経っても「よくここまで育ったな!」と、収穫する気にはなりませんでした。

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ちなみに、その次の年(植えてから2年目)には単三乾電池ほどの太さのものもちらほら出てきましたが、それも収穫せずにがまんしました。そしてさらにもう1年後(植えてから3年目)にようやく2週間だけ収穫しました。それでも自分の親指の太さを超えてくるアスパラは数本とれるかな、と言ったくらいでした。「おぉっっっ!!!」と思えるくらいの太さと本数が収穫できるようになったのは、植えてから4年目ですから丸3年はがまんしたことになりますね。こうして振り返ると長かったなぁ...。

128穴の育苗トレーに種を播き、草丈が10cmくらいまで伸びた苗を植えた時も、養生株を植えた時と同じ年数を待ちましたが、発芽した時からを考えれば養生株に比べ1年短いのですから、やはり細く、すぐに収穫を止め、枝を伸ばす管理に切り替えました。

 

《6月》枝を伸ばす管理をしましょう

「枝を伸ばす管理?」。そうなんです。「収穫をしない」と言っても管理はしなければならず、アスパラの葉っぱが茂るように伸ばさなければならないのです。根っこからは肥料分を吸い上げてもらい、葉には光合成を行ってもらうことで、次の春のための養分を根っこに溜めてもらうのです。
伸ばすと言ってもただ伸ばすのではなく、風によって倒れないような仕組みが必要です。風に吹かれて折れてしまうことを防ぐことはもちろんなのですが、揺らされたときに地際の茎が土にぶつかり、その部分が傷つくことも極力防ぎたいです。なぜならそこから病気が入りやすくなるからです。

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「病気」という言葉が出てきましたが、これに関しても十分な注意が必要です。私が毎年困るは「茎枯病(くきがれびょう)」です。放っておくと株ごとダメになってしまうのです。
ほとんどの病気は高温で多湿の条件を好みます。そこに水が加わると病原菌が増えていくのです。それを考えると6月の梅雨は病気にとって最高の環境ですよね。
そこで病気を防ぐ一つの方法として、風が通りやすい環境を作ってあげる必要があり、アスパラの場合は1本1本の間隔をあける整理が必要となります。普及員の方の技術指導では、1mの中に10~12本の真っ直ぐで健全なアスパラが伸びていればよいということですが、要は風通しの良い「アスパラの林」を作ってあげることが大切なわけです。ただし、1年目に「アスパラの林」を作るのはなかなか難しいと思います。初めて行う管理ですし、そのうえ細いアスパラが同じ場所からまとめて出てくるからです。
他の方法としては、やはり殺菌剤を使うことでしょうか。病気の出る前から、予防のための殺菌剤を散布するということも効果的だと思います。
できれば雨のコントロールもしたいところです。私たちはビニールハウスを建てることで雨のコントロールをしています。雨によって畑の土が茎にとび、そのために病気が増えるということを防ぐのです。しかしながらこの方法を行う際には灌水のことも考える必要が出てくるかもしれません。
ではもし病気が出てしまった場合どうしましょう?
それはやはり地際から切って取り除くことが一番で、畑には残さないようにし、もっと言えば焼却したいです。

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コメントお待ちしています!

この程度のことならばきっと本屋さんに売られている「楽しい家庭菜園」的な本にも出ているかもしれません。使えそうなところだけ抜粋し、試していただければ、と思います。
もし分かりにくい表現や、もっと詳しく知りたいことがありましたら、下記にコメントを残してくださいね。

さて、次回はどのようなことをお伝えしましょうか? 7月のアスパラの栽培や、こちらから出した問題の回答もお応えしなければいけませんが、ズッキーニやカボチャのこと、自家用に作っているジャガイモや長ネギ、ゴーヤなどのこと、先日隣町にオープンした直売所のこと、そこに出荷しているハーブ類のことなどなど、農繁期でもあるので色々お伝えできそうです。
それではまた。

この記事を書いた人

飯島正行さん

農業を行っている会社や農業に携わる組織で仕事をしていた飯島正行さん。そこで培った経験から「自分で農業がしたい!」と、上田市武石で就農して5年目になります。武石は水も気候も農業に適しているし、何より若手が多くにぎやかなのがいい!青年部の仲間とともに楽しい農業を目指します。

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