酒どころ・長野県で生まれた様々な種類のお酒を心ゆくまで堪能できるお店が、東京のど真ん中にあるのです。その名も「信州おさけ村」。この「村」はただの居酒屋にあらず、電車を乗り継いでわざわざ訪ねてくる常連さんも多いといいます。さてそれはどんな「村」なのか、ウキウキと偵察に行ってまいりました。
「信州のおさけ」、とひと口に言っても、その酒類、いや種類は実に豊富です。 近年とみに注目されているワインは、毎年新しいワイナリーが生まれるほどの隆盛ぶり。ウィスキーの醸造所もありますし、長野県下で競い合うように造られているクラフトビールは、全国のビール好きをうならせています。また、たくさんの焼酎銘柄もありますが、長野県はなんといっても日本酒の醸造所が多く、その数はなんと80社を超え、新潟県に次ぐ多さです。(※国税庁:平成25年調査) それぞれのお酒の原料となる穀物や農産物の品質の高さに加え、良質の水がおいしいお酒をたくさん生んでいることは間違いありません。
「信州おさけ村」は山手線新橋駅前のビル内にあって、長野県産のあらゆるお酒を取り揃えた直売所併設のスタンドバーです。 この店(村?)に訪れたのは2月のとある土曜日の午後でした。まだ日が高いので誰もいないだろうとの予想は見事に外れ、すでに4組のお客さんがお酒をたしなんでいます。 開店は午前11時ですが、「平日はやっぱり勤務が終わった5時半ころからお客さんが集まりますね。でも土曜日は開店と同時に入店する人も珍しくないんですよ」と話すのは、店長の鈴木さんです。鈴木店長は約10年前のオープン以来、ずっとこの店を切り盛りしてきました。
手前の二人組が「この店は今日初めて」と言うアメリカ人。インターネットに投稿されたブログを見て、わざわざ探してきたと言う
「外国の方もよく来ますよ」との説明を聞くまでもなく、すぐそこで二人のアメリカ人が陽気に飲んでいます。見ると、カウンターにあるのは日本酒のきき酒セット。「ビールを飲みに来たんだけど、途中から日本酒も飲みたくなったから」らしいのです。えっ、いったい何時から来てるの? と聞いたところ「11時半から」。う~ん、ここですでに3時間半か・・・、恐るべし! ちなみにこの店には椅子が一脚もありません。
鈴木店長によると「種類としては日本酒が一番注文されるのだけれど、銘柄でいえばここのクラフトビールが今は一番人気だね」。ということで、北信濃生まれのそのビールを注文してみました。味わい深いビールを堪能しながら、隣で飲んでいる男性にもお話を伺ったところ「2カ月に一回くらい来てますよ。5年位前からですね」とのことで、これは立派な常連さんです。東京の方なのですが「信州の酒が好きなので。若い時から長野へはよく行ってましたよ」とのお話。うれしいですね。 この店では日本酒をはじめワイン、クラフトビール、焼酎、そしてウィスキーと、すべて長野県内で造られた酒のみを、よりどりみどりでとことん味わうことができます。おつまみもすべて長野県より仕入れているものだそうです。 ちなみに先ほどのアメリカ人の飲んべえ二人が味わっている「利き酒セット」とは、3つのグラスにお好みの組み合わせで3銘柄の日本酒が注がれたもので、文字通り「利きながら」飲むセットです。今やこの店の定番、と言っていいくらい、人気の飲み方になっています。
酒を「利く」のはなかなかに面白く、病みつきになりそうです
あらゆるお酒が並ぶこの部屋に座っていると、とっても幸せな気持ちになります
さて店の奥を覗いてみると、少し薄暗い部屋(酒蔵)に長野県中の酒がズラリ。この数えきれない銘柄の中から好きなものを購入することもできるんです。どうですか、お酒好きにはたまらないスポットなんです。長野県の様々なジャンルの銘酒がこれだけ揃っているお店は、ちょっと見つからないと思います。 長野県のワインやクラフトビールが評価・人気とも全国的に高いことはよく知られていますが、日本酒はどうなのでしょうか。鈴木店長に聞いてみました。 ここ数年はとても注目されていて、今まであまり知られていなかった銘柄を指定されるケースも増えてきたそうです。長野県の日本酒はどちらかというと濃醇で、深い旨味を特徴とするものが多く、世の中の好みがかつての端麗辛口一辺倒から、旨味を楽しむほうに少しずつ変わってきたことによって、長野県の日本酒がより好まれるようになったのではないか、というのが鈴木店長の推理でした。なるほどプロは言うことが違います。
この店の人気の理由は、鈴木店長のにこやかなお人柄にもありそうです
常連さんはかなりいるようですが、初めてのお客さんも多く、店長はこれからの店の伸びしろをまだまだ感じているようでした。平日は、この界隈に職場や自宅がある方の来店が多いのですが、土曜日はわざわざ電車に乗って来店する方が中心とのこと。この店に来ると「あれも飲みたい、これも飲んでみたい」状態になってしまいそうで、「また来よう」と思う気持ちになることは充分理解できます。さあ、皆さんもここに来て幸せな気分になってみませんか。(つかはら)
けして「おじさんのたまり場」ではなく、若い方もけっこう集まってきます
こちらは 2016.03.01 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
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