不可能に挑戦したすごい農家の話をしよう

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ご覧あれ、ここに、でーんと一本の純米酒があります。清酒が酒米(さかまい)と呼ばれる特別なお米からつくられる事はご承知の通り。そしてわれらが信州は、県内各地でお米を栽培する全国屈指の米どころでありますが、しかし、長野県のすべての土地がこの酒米づくりに適している土地であるわけではありません。酒米を育てるには厳しい自然条件があるからです。今回は、不可能とまでいわれた土地で酒米づくりに挑戦した上田市の男たちの熱い物語をご紹介いたします。

 

れは2年前、上田市にある蔵元の沓掛酒造(下塩尻)の「地元産の米で酒を作ってみたい」という夢を実現しようとの呼びかけからはじまりました。同市にあるJA信州うえだ管内の塩田地区では、信州随一の酒米である「美山錦」の栽培経験はありません。と言うより、そもそもそこは酒米の栽培が不可能と言われてきた地域でした。美山錦は元来、標高600〜700メートルで栽培されている米で、上田の米栽培地域はそれより標高が低く400メートル前後でした。そこで同JAでは「栽培を誰に託せるか」を思案した末に「この人しかいない!」との思いで、ある一人の男に白羽の矢を立てたのです。

kosihikari.jpg不可能に挑戦する気概
その人物とは、長野県の北東部に位置する上田市塩田地区で代々お米を中心に栽培する大農家の小林好雄(こばやしよしお)さんでした。小林家の農作物栽培技術は県内でも屈指で、好雄さんの父、善一さんは「粟」を宮内庁に献上、さらに好雄さんも「米」を宮内庁へ献上したという経歴があります。親子2代にわたり、宮内庁へ献上をしたのは全国の農家でも小林家がはじめての事だったそうです。そして2年前、酒米の栽培の話を持ち込まれたとき、「不可能と言われたら、やってやるしかない」と、あえて厳しい環境で挑戦する心に火がついたと、小林さんは振り返ります。ご家族は何も言わなかったんですか――と質問すると、息子の圭一(けいいち)さんは「父は一度いったら必ずやる人ですから」と苦笑い。

tokubetu.jpg現在小林さんは、JA信州うえだの特別栽培米の代表を務めています。特別栽培米とは、化学合成肥料や農薬を通常栽培より50%以上も減らして作られる、念を入れて手をかけた、とてもおいしい、安全安心のお米のことです。そもそも内陸性気候のおかげで長野県の農薬の頻度は全国でも少ない県のひとつでしたので、そのため「特別栽培米」の表示をするためにはなおいっそうの手間をかけて、ホントに厳しい基準をクリアしなくてはなりません。もちろん、今回純米酒に使用された酒米「美山錦」も特別栽培米100%です。

miyama.jpgイネも人間と一緒で暑い夜は疲れる
昨年、出来るはずもないと言われた環境で、小林さんは60aに作付けしました。美山錦の特徴は、一般のお米に比べ成長が早く7月頃に稲に穂がつきはじめ、暑さにとても敏感であることです。上田市では一番暑い季節に成長し、本来なら昼につくった養分を夜に蓄えるところですが、暑い夜にせっかくの養分を消費してしまうためにひび割れを起こしやすくなるのです。

小林さんは「イネも人間と一緒で暑い夜はとっても疲れんだよ」と語ります。栽培法を調べたり、産地へ足を運び、視察を行い、種まきの時期やたい肥の内容の試行錯誤の連続だったと。さらなる、ヒントを聞こうとすると、具体的な内容は企業ヒミツだよと笑って回答。しかしその結果、なんとも一年目にして不可能と言われた美山錦を18.5俵も収穫したのです。酒造会社も同JAも行政もみな目をまるくしたほどでした。

ninnsyou.jpgそしてここに銘酒が誕生した
この美山錦は沓掛酒造へ持ち込まれて今年の2月に初しぼりが行われました。小林さんは初しぼりの酒の味を確かめ「無事収穫でき、自分の育てた米がこうして酒になるなんて、感無量だね」と思いを寄せました。そしてさらに、寝かせること半年。ついにここに純米酒が完成したのです。

名前は「郷の舞」(さとのまい)。この名前には「お米の生産地でもある地元(郷)のことを大切にしたい、知っていただきたい」という想いが込められているのです。

また、「郷の舞」は小林さんの高い技術も評価され、平成18年度の長野県原産地呼称管理制度の認定を受けています。

誰でも出来ることではつまらない
今年も、同じ作付け面積で同じ程度収穫ができました。しかし、その出来上がりは段違いに良く、「昨年一回の栽培過程でコツをつかんだから」と小林さんは話します。

今年は、米の等級をつける検査官が「この地区でこの酒米ができるなんて...」と驚きのあまり声をなくしたとか。ふと、小林さんが美山錦に適した土地で、栽培をしたらどうかと聞いてみると「それじゃ、誰でも出来るし、つまらいでしょう」とにこり。それは自信にあふれたすばらしい笑顔でした。

kobayashisan.jpg今回、改めてお話を聞くことができ、その豪快さに圧倒される思いがしました。苦労話を聞いても「苦労ではなくあたりまえのことをしているだけ」と語る小林さん。

あくまでも、挑戦し続ける小林さんは「何事もやるならテッペンを目指してやらないとね。美山錦は今後、生産量を増やすことはしない。さらに質をあげ、地元の人に愛されるお酒にしたい」と語ってくれました。

そうそう、最後に気になるのは「郷の舞」のそのお味。口に含んだ瞬間に広がるその感じはまさに、フルーティーなワインのよう。純米酒だから出せるこの味は格別なもので、「通が好む」と言われるのもわかるような気がします。この冬、あなたも「郷の舞」で信州上田の歴史的な第一歩を体験してみませんか。完全数量限定のこのお酒、ご希望の方は下記までお問い合わせを。

お問合せ先
沓掛酒造株式会社
長野県上田市下塩尻35番地
電話番号:0268−22−1903
メールアドレス:info@fukumuryo.co.jp

取り扱い販売店
大久保銘酒店
長野県上田市中央5−16−25
電話番号:0268−22−0194

郷の舞(さとのまい) 純米酒 720ml
長野県上田市 菅平水系の水
度数 15.1% 日本酒度 −1 酸度 1.6
原料名  : 特別栽培美山錦
精米歩合 : 麹米 66% 掛米 66%
杜氏名  : 山崎 充(小谷杜氏)
酵母   : 協会9号酵母
長野県原産地呼称管理委員会認定

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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