春の山菜にも数々あれど、この時節に新鮮な香りと春の息吹を感じる食感といえば「ウド(独活)」できまりです。ウドは、わざわざ遠くの山に出かけていかなくても、手軽に手に入るのが魅力のひとつ。ウコギ科で数少ない日本列島原産の野菜で、全国に自生しています。一般に、11月から2月に出荷される寒ウドと、3月に入ってから登場する春ウドの2種類があり、栽培もののほとんどが春ウド。春ウドは、茎が軟らかく、香りも良いのが特徴です。
まさしくこれから本格的に店頭に並ぶウドたちですが、今年は暖冬の影響で例年より早めにお目見えしています。昔は、自生のものを山ウドと呼んでいましたが、近年は天然ものも少なく、露地で育てたものも「山ウド」の名で流通しています。漢字の「独活」は、長く伸びた葉柄が風がなくても、独りでに動くところからつけられたと言います。
ウドは体に良い植物
ウドは、ほとんどが水分で、特有の香りやほのかな苦味、またその歯ざわりが春の風味として、わたしたちを楽しませてくれます。アスパラギン酸というアミノ酸のひとつが含まれますが、これは旨味物質で、体内でタンパク質の合成材料となり、新陳代謝を高め、疲労回復、スタミナ増強などに役立ちます。また、リンパ液の流れをよくし、カルシウムなどのミネラルを身体のすみずみに運ぶ作用があるため、神経痛やリウマチ、関節炎、腎臓病などによい影響があるとされています。さらに、春の季節に悩む人が多い、気圧や温度、湿度の変化がもたらす頭痛や不快感。そうしたものは、むち打ち症の一種で、これもリンパ液が関係しており、ウドを少しずつ食べることで、症状が軽くなると言われています。
山ウド栽培のベテランに会いにいく
長野県の南に位置し、伊那盆地の北半分を占める上伊那の「ファーマーズあじ〜な」(南箕輪村)でも、山ウドが早速店頭に並んだとの便りを耳にして、さっそく足を運んでみました。販売コーナーでは、南箕輪村でウドを栽培する清水忠雄さん(73)が、収獲したばかりの山ウドを並べていました。清水さんは、山ウド栽培を行なって25年以上の大ベテランです。
清水さんが山ウドを並べると、早速お客さんが寄ってきて、よいウドの選び方や食べ方などの話が盛りあがります。よいウドは、表面のうぶ毛が多く、白い部分が純白でツヤのあるもの。また、鮮度が落ちたり・日に当てすぎると茎が褐色になるのもウドの特徴だそうです。清水さんは「こうして、並べてお客さんが品物を見て買っていく姿をみると、また元気がでるな」と話しました。
あなたが上伊那産の山ウドと会えますように
清水さんがウドを栽培するハウスにお邪魔すると、次から次へと山ウドたちが出荷を控えていました。清水さんは「ウド切り機」と呼ぶ特殊な道具で、つぎつぎと手際よく丁寧に収獲していきます。ウド栽培では、畑で栽培した根株を地下室に植えて日光を遮断する「軟化ウド」栽培もありますが、清水さんはハウスに地域で取れるモミを使って栽培します。この山盛りのモミが、日光をさえぎり鮮度を保ち、ウドのツヤツヤピチピチの白い肌を保ってくれるのです。
全長50〜70センチのモミを掘りながら、清水さんは「何年やっていても、収獲のこの季節が一番楽しいな」と話します。上伊那産の山ウドは、農産物直売所の「ファーマーズあじ〜な」の他、中京・関西方面へも出荷されています。あなたともどこかで出会うかもしれません。
まさに今が旬の春ウドですので、香りと歯ざわりを楽しむ料理を食卓に一品加えて、春の風味を食卓で味わうのはいかがでしょうか。
季節を感じる春ウドのレシピ2題
*ポイントは、下ごしらえ。皮は、繊維が残らないように厚くむきましょう。皮の部分は特にアクが強いからです。白い部分が出ていれば問題ありません。剥いたり、切ったりしたら、水に晒(さら)します。切り口は、空気に触れると褐色します。これは、アクにポリフェノール系物質が含まれているためです。つけ水には、酢を加えるといっそうウドが白くなり、見た目がよくなりますよ。
recipe1 春ウドの酢みそ和え
1.ウドの皮をむき、短冊または乱切りにして酢水につける
2.お好みで酢とみそを混ぜ合わせる。
3.水を切ったウドと酢みそを和える。
4.わかめを加えるとより春らしくなります。
recipe2 春ウドの皮のきんぴら
1.厚くむいた皮を繊維にそって細く切り、酢水につける。
2.種を取った赤とうがらしをお好みで、輪切りにする。
3.水けをきったウドの皮と赤とうがらしを油で炒め、砂糖・酒・しょうゆで味を調える。
4.汁気がほとんどなくなるまで、混ぜながらしみこませる。
関連情報:
JA上伊那 ファーマーズあじ〜な
長野県上伊那郡南箕輪村 神子柴8143−1
アクセス:伊那ICからを車で5分。
伊那ICから伊那市街方面(左へ)「駒美」の信号を左ですぐ
ファーマーズあじ〜なウェブサイト
参考図書:『野菜の効用事典』山口米子・大滝緑 編著 明治書院刊