果物がおいしい、わくわくする秋です!! 長野県は、秋果物王国。りんご、なし、ぶどう、いずれをとっても、全国に名だたる品種・品目を持っています。一口に「食欲の秋」とはいいますけれど、腹まわりや腰まわりを気にしつつも、やはり旬の信州の果物をはずしてもらっては困りもの。
南北に長くて標高差もあり、変化のある地形が育んだ長野の農産物は、なによりも味にきれがあります。なかでもりんごのシャキッと感・ジューシー感はたまりません。
朝のくだものは金といわれるように、くだものの糖質は、すぐに吸収されるエネルギー源のため、睡眠中に失われたエネルギー源を効率よく摂取できます。朝のくだもので、頭も体もすっきり目覚めて、さわやかな一日を過ごすというのもいかがでしょうか。
今回は早世種の「つがる」が終わりかける今9月中旬から下旬にかけて旬を迎える、りんごの中生種シナノドルチェを紹介しましょう。「シナノ」とはご存知のとおり、古き長野県の呼称「信濃」から、そしてドルチェ(dolce)はイタリア語でデザートなど甘いもののことで、ここから「シナノドルチェ」という名がつけられました。
あらためて「シナノドルチェ」、なかなかによい名前でしょう?
9月中旬に収穫期を迎える
長野県のりんごは、全国で青森県に続いて第2位の生産量(約18万トン)を誇っています。収穫時期は7月上旬から11月の中旬にかけて。特に11月に収穫する「ふじ」の生産量が一番多く有名ですが、今回は9月中旬を中心に収穫期を迎える長野県期待の品種「シナノドルチェ」に注目しました。生産量はまだ少なく約40〜50トンですが、早生種と中生種をつなぐ品種として期待されています。
昔から「一日一個のりんごを食べると医者知らず」「リンゴが赤くなると医者が青くなる」といわれ、りんごには血糖値と血色コレステロールを低下させる作用があるといわれていますが、近年、若年層を中心に果物離れが著しく、消費者ニーズにあった多様な商品開発や消費拡大への取り組みが行われています。
全国的にも生産、流通、消費、栄養指導、学校給食に関係する団体や農学、医学、栄養学、食生活指導等の専門家によって組織された「果物のある食生活推進全国協議会」が中心となり、「毎日くだもの200グラム運動」というものを提起して、毎日の生活に果物を定着させる取り組みが進められています。
長野県オリジナルに期待する
長野県においても「ふじ」に偏重した品種構成を、今後は自然環境、市場性、消費者ニーズ等や作業労力の配分などを考えて「シナノスイート」「シナノゴールド」「秋映」「シナノドルチェ」等、本県オリジナル品種の積極的な導入をはかっています。
「シナノドルチェ」は、昭和58年に長野県果樹試験場において「ゴールデンデリシャス」に「千秋」を交配し、その実生の中から選抜・育成し、平成17年に品種登録されたばかりのりんごです。
「つがる」よりも遅く、「シナノスイート」「秋映」よりも出回りが早い、果実が大きくて、赤くて、糖度と酸味のバランスが取れていて、食味がよいりんごです。カリウムやリンゴペクチン、アップルポリフェノールなどが多く含まれ栄養価も高い品種です。
全面が鮮紅色に着色したものを
選ぶ際には、手に持った時に見かけよりも重量感があり、指で軽く叩くとカンカンと澄んだ音がするものなら、実がしまっていて新鮮です。また、大玉よりも中玉の方が味に当たりはずれがなく、日持ちもよいのです。さらに全面が鮮紅色に着色したものを選ぶのが、良いシナノドルチェ選びの秘訣だそうです。
今回、長野市信更町(JAグリーン長野)管内のりんご専業農家、上條英雄さん(67歳)にお話をうかがいました。上條さんは、JAグリーン長野りんご部会の前副部会長さんで、エコファーマーに認定され有機質堆肥やフェロモントラップ(虫を混乱させ交尾の機会を減らす方法)を利用するなど、環境にも配慮したりんごづくりをされています。長野市の平地から200メートルほど登った標高550メートルの圃場を中心に約110アールりんごを栽培しており、6年前に長野県の試作品種としてシナノドルチェも導入し、現在約15アール栽培されています。
最初は「まったくはじめての品種でわからないことばかりだった」のですが、最近ではつがる(早生種)とシナノスイート(中生種)の間の品種として、「実がよくつき、毎年量が取れるし、サビ病等にかかりづらくロスが少なくていい」と上條さんも好感触の様子。
最も期待されているリンゴのひとつ
取材に同行いただいたJAグリーン長野の宮田課長さんによると、シナノドルチェは主に、東京、大阪、名古屋に、また長野県内では諏訪地域に出荷がされており、「今年は管内で約3ha、15トンくらいですが、昨年の2倍の量の出荷を予定、来年はさらに増えますよ」とのことでした。長野県のリンゴ関係者は、これを9月中旬に出回るりんごの品種として期待をかけています。
上條さんも「樹勢が弱くならないように、枝が下がらないようにすることと、収穫時期が難しくて、底の部分が黄みがかった時には収穫する」など、栽培・収穫にはかなり気をつかっているようです。
酸味と甘みのバランスが絶妙
シナノドルチェの売りは「とにかく食味。酸味・歯ごたえ・果汁がりんごらしく、実も硬めで格好がいいところ」で、記者も食べさせていただきましたが、爽やかな酸味と甘みのバランスがちょうどいいおいしいりんごで、リンゴ通のみなさんにもに自信をもっておすすすめできます。
JAグリーン長野では、先週の水曜日(17日)からこれの初選果がはじまり、まさに現在が収穫期のまっただ中で、9月いっぱい出荷が続きます。なお県内ではJAあづみ、JAながの、JA志賀高原などでも、このシナノドルチェは生産されています。
シナノドルチェの名前を覚えて
くだものを食べると太るなんて気にされる方もいらっしゃいますが、リンゴはいくら食べても生活習慣病の原因となる中性脂肪を増やすことはありません。シナノドルチェという名前を知ったのもなにかの縁、今秋ぜひ食べて、納得の味をお確かめ、そしてお楽しみください。
お問い合わせ:
JAグリーン長野信更果実流通センター
住所 長野市信更町赤田681−1
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