長野県が国内一の生産量を誇るプルーンの出荷が、いよいよはじまりました。プルーンというと加工製品や乾燥ものというイメージが強いかもしれませんが、国内産はそのほとんどが「生」のままで食べられています。
「生で食べるプルーンのおいしさをもっと多くの人に知ってほしい!」と考えた当編集部では、今回、県内のプルーン産地のひとつ東信の佐久地方に出かけて、生産者の方に話をうかがうことにしました。
長野県内では、長野市、須坂市のほか、今回ご紹介する佐久地域の佐久市や佐久穂町などがプルーンの主な産地で、県全体で全国の生産量の6割以上を占めています。佐久地域は1965年頃からプルーンの栽培がはじまった、長野県のプルーン生産発祥の地なのです。
今回、お会いできたのはJA佐久浅間の南佐久プルーン部会長を務める菊池信和さん。佐久穂町の30アールの果樹園で、かれこれ20年以上も丹念にプルーンを育てています。生のプルーンを食べたことがある人が少ないことを話すと、菊池さんは口を開きました。
「まずは口にしてみて、生のプルーンのおいしさを知ってほしいですねえ」
生プルーンは夏に食べる果実
佐久穂町の山沿いの道を少し進むと菊池さんのプルーン園がありました。菊池さんは、アーリーリバー、パープルアイ、プレジデント、サンプルーンなど8種類の品種を育てており、写真にある紫の実をつけているのが、現在、出荷真っ最中の早生種(早くに出る品種)アーリーリバーです。アーリーリバーの出荷は7月27日から開始され、今週の末頃まで続き、その後10月まで各品種が出荷されていきます。
プルーン栽培の一年は冬場の剪定(せんてい)作業からはじまります。剪定次第で、その後の日当たりの良さが変わるため、そこが非常に重要な作業となります。
剪定は12月末から翌年3〜4月にかけて行われ、その後、4月下旬から5月の連休頃に花が咲き、6月初旬から7月中旬にかけて摘果作業が行われます。菊池さんの場合、この間に米ぬかなどの有機肥料を与え、7月下旬から前述のアーリーリバーなど早生種の収穫がはじまります。
シカもクマも食べにくる
一年の作業の中で最も大変なのはいつごろですかと菊池さんに聞くと「やはり収穫の時期ですね」と答えが返ってきました。
この時期は朝8時30分頃から収穫作業をはじめ、終わるのが夕方の4時頃。その後荷造りの作業があって、一日の全ての作業が終わるのは夜の10時をまわった頃だそうです。とりわけ主力品種のサンプルーンが出る9月下旬から10月頭までが、とても忙しい季節だといいます。
また、シカやクマなどの獣害にも頭を悩ませているそうです。クマなどは園地に入り込み、ちゃっかり木の上に座ってプルーンの実を食べてしまうのだとか。
これまでも園地の周囲にネットを張ったり、夜間にラジオを流したままにしておいたり対策はするものの、なかなか完全に被害を防ぐことは難しいのだと菊池さんは話します。動物たちにもプルーンが体の健康にとてもよいものであることがわかっているのでしょう。
雨にあたるだけで実が裂ける
菊池さんの園地を見回すとシートの束があちこちに見受けられ、園地全体に支柱が張り巡らされています。プルーンが雨に当たって割れてしまうことを防ぐためのものです。
プルーンには裂果しやすいという特性があり、雨が降ると実が割れてしまいます。そのためシートで木を覆い、雨が当たらないようにしてあげる必要があるのです。
菊池さんの園地ではシートを支柱に沿って広げ、雨よけをします。雨よけについて菊池さんは「早生種など糖度の低いうちはそれほどでもないのですが、糖度が高くなるほど割れやすい傾向にあるようです。これからの時期、糖度の高い品種が出てきますので裂果には細心の注意が必要になりますね」と話してくれました。
これからどんどん甘い品種が
現在、出荷されているアーリーリバーは糖度が若干低めで、その分酸味があります。「甘いだけでは嫌だ」という方にお勧めの品種といえます。これから糖度の高い品種が続々と出荷されますが、糖度18度ほどで県の主力品種であるサンプルーンは、来月後半の9月20日頃から出荷されます。
「気の早い人は9月10日頃から出荷をはじめますが」と菊池さんは続けます。「味がしっかりのるのは20日過ぎころだと思いますよ」と。
プルーンは昨年、雹(ひょう)の被害があり収量が下がったのですが、今年はこれまでのところ災害もなく、収量・味ともに上々のものが出来ているということですので、是非、生のおいしいプルーンを皆さんに味わっていただきたいものです。
一度とれたてを生で食べてごらん
菊池さんのお宅も含め、JA佐久浅間管内でとれたプルーンは東京、名古屋、大阪や県内を中心に出荷され、2005年度には12万ケース(400グラム×10パック)の出荷実績があります。また、菊池さんのプルーンは佐久穂町直売所(町の駅)にも出荷されています。
さらにご自宅にはプルーンを求めるリピーターの方から毎年、電話があるそうです。贈答用に贈られた方がまたファンになり、問い合わせをしてくるという形で、口コミで人気が広がっているのだとか。「とれたてのものを食べるのが一番おいしいので、長野県を訪れた際には直売所などで探してほしい」と菊池さん。
夏休みなどで長野県を訪れる機会のある方は、是非生のプルーンを探してみてください。骨を丈夫にし、血液中のLDLコレステロールを減らす働きが確認されている奇跡の果実プルーン。ちなみにプルーンの表面についている白い粉状のものは「ブルーム」といってプルーン自体が出しているものなので、口に入れてもまったく心配はありません。安心してがぶりとお召しあがりください。