米穀

国産小麦のパンが食べたいという声に応えて

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まだ梅雨の明けきらない長野県ではいま、小麦の収穫が着々と進められています。小麦は収穫時期が梅雨時と重なるため、この時期の生産者は天気をにらみながらの収穫作業となります。

農林水産省の統計では2006年産の小麦の国内生産量は約83万7000トンで、その6割以上を北海道が占めています。それでも国内の小麦消費量のおよそ1割ほどにしか当たらず、9割近くは輸入に頼っているのが現状です。同統計による長野県内の小麦の生産量は7870トン。その中心になっているのはうどんなどに加工するのに優れた特性のシラネコムギという品種ですが、ところがここにいま、長野県内の製パン業者から熱い視線を浴びて、生産量を少しずつ増やしている新品種の小麦があるのです。

その品種はユメアサヒといい、長野県中部の松本市を中心に栽培地域が広がっています。bread3.jpg製パン業者がこの小麦ユメアサヒに熱い視線をおくる理由は、ユメアサヒの性質にあります。ほかのうどん用の小麦と比べるとタンパク質含有量が非常に高く、グルテンの粘りが強靱で、それこそがパンを作るのに最適だというのです。

ユメアサヒという小麦はどこに?
ユメアサヒは長野県農事試験場が開発した品種で、4年前からJA松本ハイランドと、県農業改良普及センター、地元生産者が連携し、松本市の北部の岡田地区というところで栽培がはじまりました。岡田地区が最初の栽培地域として選ばれた理由は、土壌が粘土質であったということです。

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ユメアサヒの性質として粘土質の土壌でなければタンパク質の量が減ってしまうという点があります。パン用小麦としてのユメアサヒの特長を最大限に生かすには粘土質の土壌が必要であり、岡田地区はそれに適した土壌を持っていたのです。

岡田地区では「悠久の里岡田営農組合」という集落営農組織が、地域の農業生産を支えていますが、そのうち小麦については「女鳥羽受託組合(御子柴克[みこしばまさる]組合長)」が4人で全ての作業を引き受けています。

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パン用の小麦を望む声に応える
収穫時期を迎えた先週の木曜日に麦畑を訪ねてみると、黄金色に染まったユメアサヒが風に揺れていました。昨年の10月に種がまかれたもので、6月下旬から7月上旬にかけて一斉に収穫されます。今年、岡田地区では24.5ヘクタールでユメアサヒを栽培しました。

ユメアサヒについて製粉・製パン業者からは最低でも1000トンの生産量が欲しい、という需要があります。一方、今年のJA松本ハイランド全体での収穫量は平均どおりの収量があったとして、およそ160〜170トンと予想されています。ここへきて国産小麦を使ったパンへの志向が強まり、それを望む声が高まるなか、しかしユメアサヒの生産を拡大するには、クリアされなくてはならないいくつかの課題があるのだといいます。

課題のひとつは先ほども触れた土壌の問題。ユメアサヒに適した粘土質の土壌を持つ生産地の確保が必要になります。小麦は米の転作作物として作られていますが、集落営農組織の中でブロックローテーションといって、年度ごとにどの土地で米を作り、どの土地で小麦を作るかといったことがあらかじめきめられています。そのため例えば岡田地区の場合、年度ごとに若干の差はありますが「24〜26ヘクタール以上に増やすことは困難」だと御子柴組合長は話します。

また、ほかの小麦に比べ丈が30センチほども長く、1メートルにもなることから、雨や風などで倒伏しやすく、作業効率に影響がある点や、タンパク質を増やすために肥料を追加する時期が田植えの時期と重なってしまうため、労力が足りなくなってしまう点などが課題となっています。

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収量を上げる技術の確立へ
こうした課題を解決するためJA松本ハイランドや普及センターなどでは、市内の寿、中山、山辺といった地区で生産地の拡大を進めています。岡田地区では栽培する小麦は全てユメアサヒとなっていますが、他地区ではシラネコムギが中心のため、シラネコムギをユメアサヒに変えることで、生産量を拡大する狙いです。今年、JA全体で41.5ヘクタールだったユメアサヒの栽培地を来年度は69ヘクタールに増やす計画です。

また、圃場(ほじょう)ごとの収量をあげるための技術の確立も進めています。ユメアサヒは栽培開始から4年が経過したところで、まだまだ栽培技術は発展途上の段階。岡田地区の場合、当初は10アール当たり240〜300キロほどの収量でしたが、圃場に畝を作り水はけを良くしたことで格段に収量が上がり、420〜480キロが獲れるようになったといいます。また、元肥に追肥が含まれる肥料を使うことで、作業をひとつ減らし省力化が出来るような研究も進めています。

御子柴組合長は「梅雨時期に収穫が集中することを考えると、今の人数では規模を拡大しても適期を逃してしまうので、反収(=10アール当たり収量)をもっと上げるための研究を進めたい」と話してくれました。

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ユメアサヒで作ったパンが食べたい?
先月の6月24日にはユメアサヒの安定生産と消費拡大を目的に松本地域パン用小麦生産・利用推進連絡会(長野県、製パン・製粉業者、加工組合、生産組合、JAなど17組織・団体で構成)が発足しました。国産のパン用小麦の需要が高まるなかで、少しずつ生産量を拡大しているユメアサヒ。栽培地の拡大と栽培技術の研究などによる今後の収量増加が期待されます。

さて、このユメアサヒを使ったパンは下記のお店などで購入できます。各店の粉の在庫によっては販売がない場合もありますので、事前にご確認のうえお出かけください。

ユメアサヒを使ったパンが手にはいる店:

・パン工房マルショウ 長野県松本市 城西2-1-26
  電話 0263-32-1033 indexarrow.gifウェブサイト
・加工組合さくら 長野県松本市 梓川倭4175-1
  電話 0263-78-6183 
・パンの木 長野県松本市 岡田下岡田170-20
  電話 0263-46-2295 indexarrow.gifウェブサイト
・きんぴら工房 長野県塩尻市 大字宗賀1021-9
  電話 0263-53-5494 indexarrow.gifウェブサイト

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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