春めいた信州の田畑に、鮮やかな緑色をした部分があれば、それは麦の栽培をしているしるしです。去年の10月に種を蒔いた麦は、この時期からぐんぐん成長して丈を伸ばし、6月下旬から7月上旬に収穫します。長野県の16年産麦の生産量は、大麦・小麦合わせて7,890トン。「地粉」がブームになりつつある今年は更に増える見込みです。麦も、大豆やソバと同様に、米の生産調整で生産が拡大し品種の転換もはじまっています。今、特に小麦で注目されている品種とそれをめぐる取り組みを探ってみました。
ユメセイキのうどん
善光寺平の南端に位置する千曲市から長野市南部にかけての地域は、二毛作地帯で古くからの麦の産地として知られています。この地域の農家では「売れる米は販売するもの、麦は家庭で主食にするもの」として、農繁期には料理の手間がかからない小麦粉を使った料理をよく食べて来ました。そのために、うどんやおやき、すいとんといった食文化がこの地域に残っています。JAちくま管内の女性起業グループが手作り工房「夢麺(ゆーめん)」を立ち上げ、小麦「ユメセイキ」を使った昔ながらの田舎うどんの生めんを作っています。ユメセイキは低アミロース小麦で、もち性デンプンであるアミロペクチンが相対的に多い優れもの。そのため、ユメセイキを使ったうどんは、麺の弾力性が高く、食感に優れています。夢麺では石臼びき小麦粉100%の手打ちうどんにこだわり、小麦の皮(フスマ)も一緒に挽いた粉で打つうどんは、繊維質やミネラルなどの栄養素をそのまま残した甘い小麦の風味が特徴の「色がやや黒っぽい昔ながらの田舎うどん」です。JAちくま管内では、16年産小麦から品種を全面的にユメセイキに転換して、産地化をすすめています。
ユメアサヒのパン
松本市の岡田地区の麦生産組合が、昨年パン用小麦「ユメアサヒ(東山38号)」の大規模試験栽培を行いました。ユメアサヒは長野県農事試験場が育成した品種で、パンとしての加工適性が高く、輸入パン用小麦「1CW」や北海道産「ハルユタカ」と遜色ないパンが焼けます。グルテンが強靱なパン用硬質小麦ですが、収穫量がやや劣り、倒伏しやすいという短所も持っています。「ユメアサヒ」という名前は、東山地方で栽培される初めてのパン用小麦で、朝の太陽のように光り輝き、県産小麦によるパン作りの夢を紡ぐ品種となることを願って、ユメアサヒ(夢朝陽)と公募の結果名づけられました。給食用のパンとしてどうかとの検討をすすめています。今年はJA松本ハイランドやJA信州うえだで132トンの生産が見込まれいます。
唐木田製粉株式会社のホームページ
こちらは 2005.04.14 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
関連記事
おいしい千曲市のユメセイキ・ワールドへ!
国産小麦のパンが食べたいという声に応えて
信州地粉だけを使ったうどんとそばが登場!
国産希少種の小麦ハナマンテン!収穫&夏メニューを体験
新着記事
ぼたんこしょう佃煮の細巻き
長野県産の人気3種をまとめた「ぶどう三姉妹®️」
苦みがくせになる!? パリシャキ葉野菜「エンダイブ」
メルマガ800号記念!人気記事を振り返る