みなさんはパセリの畑を見たことがあるでしょうか? これがパセリ畑です。パセリ。アルファベットで書くと parsley 。そう、おそらく知らない人はまずいないはずの、世界で最も名の知れたハーブである、あのパセリであります。
実はわが県、冷涼な気候を生かしたパセリの一大産地なのです。長野県では、すでに出荷ははじまっていて、南から北へと移動する産地リレーの特徴もあり、これからの7、8月は、まさにトップシーズンを迎えます。昨年は17万1316ケース(5kg換算)を出荷し、8月の東京都中央卸売市場では(2007年度実績)全国1位で、シェア61.5%までのぼりつめました。
そこで、間もなく最盛期を迎えるパセリ産地の長野県茅野市へと足を運び、彼の地で農業を続けて40年、パセリを作ってぬわんと20年の林作雄(はやし さくお)さんを訪ねることにしました。
パセリを作って20年
林さんは72歳。現在、JA信州諏訪で約300人いるパセリ専門部会の会長(茅野南部野菜部会副部会長)を務めている、この道一筋のプロフェッショナルであります。「長くパセリ作りを続けてこれたのは夫婦で一緒に作業を分担できたからかな」とおっしゃるあたたかい人柄の部会長さんです。現在はパセリを2反(20アール)を中心に、そのほかブロッコリーやほうれん草をご夫婦で栽培しています。
日本の夏のパセリはここが支える
長野県東南部の茅野市。八ヶ岳や白樺湖、蓼科高原など名だたるリゾートエリアが点在するのでご存知の方も多いかと思いますが、ここは昔から精密業を基盤とする工業都市として発展した一方で、パセリ、セルリー(セロリ)などの高原野菜の生産がさかんな地域でもあります。また、冬の寒さと乾燥した気候をうまく利用して作られる伝統産業の角寒天のほとんどが、茅野市で生産されています。
今回訪れた林さんのお宅も標高約1000メートル付近。「この冷涼な気候と昼と夜の寒暖の差が良い作物を育ててくれるんだ」と開口一番。JA信州諏訪(茅野市)では、統計によると2007年度実績で8万2018ケース(5kg換算)ものパセリを出荷しています。
飾りのままではもったいない
残念なことにあまり広く知られていませんが、パセリの栄養価は、まさに緑黄食野菜の王様といえる存在。主な成分を栄養の専門書やインターネットで調べるだけで、β−カロチン、フラボノイドのアピゲニンや件フェロール、食物繊維、芳香成分のピネンやアピオール、カリウム、カルシウム、ビタミンC、ビタミンAなどなどずらずらっと出てきます。
パセリは手間のかかる作物
7月の収穫を間近に控えて、パセリ農家には気が抜けない日々が続いているそうです。林さんは「パセリは乾燥に比較的強いが、大雨・長雨には弱い作物。雨が続くと根が腐ってしまう場合がある。いかに、今収穫前の時期によい株を残し夏につなげるかで収穫量も大きく異なる」と言います。さらに、天候だけでなく、そのほか「うどんこ病」「斑点病」と呼ばれる病気や、アブラムシなどの天敵にも目を光らせなくてはなりません。話を交わしながらも、林さんの足は、3月から大事に育てているパセリ畑にさっそく向かっていました。
「パセリはとても手間のかかる作物なんだ」パセリのひとつひとつにいとおしそうに手で触れ、林さんはできばえを確認しています。よいパセリの見分け方を訪ねると「パセリは色とちじれがポイント。ほら、色が変色したりちじれが弱く、開いているものはダメなんだ」とていねいに教えてくれました。「ダメな葉はこうやって『かく』んだ」と林さん。
「かく?」すかさず、たずねると、
「パセリを摘んだり取ったりすることを、わたしたちパセリ屋は『かく』と言います。大きくなってきたパセリの株も間もなく夏に入ると、かいてもかいてもぐんぐん大きくなる。夏場、よい株にはパセリの葉を収穫後、約2週間程度でまた新しいパセリが成長し収穫できるんです」と嬉しそうに話してくれました。実際によく手元を見てみると、根本を折るのではなく、収穫後そろえるためにパセリを傷つけずスプーン状のように「かく」のがプロの技なのです。
安心して食べてください
「栽培で気をつかうことは、農薬。当然、みなさんの口に入るものなので安全安心なパセリ作りにはに力を注いでいます。よいものを作るには、農薬も最低限必要です。現在、生産者みんなで正しい農薬の使用法や農薬の履歴をつけ、産地で徹底しているので、自信を持って安心して召しあがっていただけます」と夏の日本の全国の食卓をパセリで支えるプロとしての発言。
林さんにとってパセリとはなにかたずねてみました。
わたしはパセリをこう食べる
「パセリは、人生そのものかな。生きる糧ですからね」そしてプロのパセリ農家ならではのパセリの食べ方も教えてくれました。「わたしの家では、昔からパセリの『てんぷら』や『おひたし』を食べています。パセリのてんぷらは、サクサクころもにパセリ風味がきいてうまいよ。多くの人にいろいろなパセリの食べ方を知ってもらいたいね」
料理の付け合わせや飾りにする以外のパセリを主役にするハーブとしての食べ方については、JA信州諏訪はじめJA全農長野などでも、パセリの新たな食の提案を行なってきました。そうしたもののなかから今回、ご家庭でもできるパセリ料理をふたつ紹介しておきましょう。またぜひみなさんの斬新なパセリを使った料理のレシピがあれば当記事のコメント欄でお教えください。
パセリをおいしく食べるレシピ2題
健康食パセリのふりかけ
○材料
・パセリ 300グラム
・生しらす 280グラム
・干し桜えび 15グラム
・削り節 50グラム
・卵黄 100グラム
・白ごま 大さじ2
〇調味料
・塩小さじ 3
・みりん大さじ 1
・砂糖大さじ 1
・だしの素小さじ 1
□作り方
1.パセリを塩ゆでにして電子レンジで水分をとる。
2.しらすをフライパンでから煎りする。
3.卵を固ゆでにしてつぶし、電子レンジで黄身の水分をとる。
4.材料を全部混ぜて調味料で味付けをし、フライパンでから煎りする。
□要点
パセリを青く仕上げること。よく水分をとること。
パセリとジャガイモのスープ
○材料
・パセリの葉 30グラム
・玉ねぎ 1/2個
・ジャガイモ 2個
・バター 15グラム
・牛乳 200CC
・水 250CC
・生クリーム 50CC
〇調味料
・塩 少々
・コショウ 少々
□作り方
1.玉ねぎとジャガイモを薄切りし、水にさらす。
2.熱した鍋にバターと1を入れ、透き通るまで炒めて、軽く塩とコショウをふる。さらに水200CCを加えて煮る。
3.パセリをゆで、水50CCとともにミキサーでピューレ状にする。
4.2で煮たものの粗熱をとってミキサーに加え、ポタージュ状にする。
5.4を鍋に戻し、牛乳を入れながら温め味をととのえる。
6.器に入れ、生クリームをそそぎかきまわす。
レシピ提供:全農長野中信事業所JA園芸事業推進協議会
過去記事:
まさかパセリを残したりしないでしょうね
(長野県のおいしい食べ方アーカイブ 2006.5.17)