信州牛の歴史、それは昭和のはじめまでさかのぼります。それからすでに半世紀以上が過ぎ、農家の努力のかいもあって、信州牛にはこれまで独自の改良がなされてきました。ご覧ください、かくも立派な体躯を。この牛さん、信州牛のなかでも、地域ブランドとして今年7月から本格的に始動しはじめた「南信州牛」なのであります。
南信州牛というブランド
南信州牛は、現在、大阪・京都を中心に出荷されている知る人ぞ知る牛。なんといっても、飼育から食肉・加工・流通まですべて識別管理されている安心・安全の牛、それが南信州牛です。昔ながらの牛飼い(ジャパニーズ・スタイル・カウボーイ)、熟練加工人、信頼される流通業者と販売業者が一体となり、南信州地域の人と人が手を結びあって実現したブランド牛。そこで今回は、気になるその肉質を探るべく、消費拡大を進めるためのイベントのひとつである料理教室をのぞいてきました。
その名を多くの人に知ってもらうために
「南信州牛」は地域のブランド牛で、南信州の飯田下伊那地域で飼育している牛を指し、以前は「信州牛」として販売されていました。そもそも、飯田下伊那地域は県内で2番目に肉牛生産が多く、その肉質の評判から、ブランド化が図られることになったのです。
現在、行政、生産、流通、販売、飲食にかかわる業者が一体になり「信州牛ブランド推進協議会」を設立してPR活動に取り組んでいます。南信州牛はその高い評価から、地元での流通量が非常にすくなく、産地での知名度がいまいち。そのため、南信州牛を地元でもっと知ってもらおうと、さまざまな取り組みがはじまつているのです。
なかでも12月から年明けの1月にかけては「南信州牛フェア−2006冬の陣」と題して、地域を巻き込み市内随所の取り扱い飲食店にのぼりを立てたり、料理教室を開催したり、キャッチコピーを募集したりなど行っています。
愛情が7割でよい牛が育つ
で、どうしても気になるのはその肉質、そのお味。ということで、思い切り腹をすかせてその肉の味を探るべく消費拡大を目的に開催されている料理教室へむかいました。うむ。すでに会場には、いい香りが広がっております。
料理教室の参加者は、JAみなみ信州肉牛部会女性部のみなさん。そう、南信州牛を飼育している酪農農家さんの奥様たちなのです。部長を務める柴田千恵子さん(写真)に南信州牛の育て方を訪ねると「3割が餌。あとの7割は愛情で、よい牛が育ちます」ときっぱり。
また、「大切に、大切に一頭一頭育てています。牛舎に行く回数が多いほどよい、牛になる」とわが子のことを話すよう。味の特徴を聞くと「やわらかく、あまみのが特徴です」とニッコリ。今後についても「地域の消費者のみなさんと料理コンテストなんかやってみたいですね」と展望を話してくれました。
南信州牛はなぜおいしいか
生産者と一体になって消費活動を進めるJAみなみ信州の生産部畜産課の岡田喜昭係長は「南信州牛は、なんといってもあぶらのうまみがいい!!」と絶賛。なんでも、餌は地域の長年の経験と研究のすえ出来たものを、地域全体で使用し、味にばらつきのない生産をしているのだと熱く語ります。
「牛の育つ南信州の環境・気候が特にいいんです。寒暖の差があり四季があって、のびのびと牛がストレスなく元気に育ちます。だから、おいしい」岡田さんは続けます。「他県での評価がとても高いんです。だからといって他県で売れても、信州人に知られなくては地域ブランドとは言えない。地元の支持があって、愛されてこそ本物ですよね」
岡田さんはまた、南信州牛は、地域のあの人がつくっている牛だと分かるから、本当に安心して食べてもらえますと教えてくれました。今後の課題を尋ねると「量をどのように増やすか。たくさんの人に食べてもらうにはそれなりの頭数が必要。ほんとに美味しいので、ゆくゆくは全国の人にもっと食べてもらえる牛に育てたい」と答が返ってきました。
そして南信州牛を堪能する
訪れた料理教室では、飯伊調理師会の水野大造会長と松澤喜好副会長が講師を務め、ステーキ用の牛肉の上へ、旬の長芋おろしをかけて食べる「牛とろ丼」や、もも肉の薄切りにニンジンやサヤインゲンなどを巻いて揚げる「牛肉の和風ロールフライ」など、4品を作り、みなで食べました。うまかった! 南信州牛をすっかり堪能した記者のイチオシは、とにかく牛とろ丼!! 牛ととろろの味のコラボレーションが絶妙ででした。もしもうひとつ夢が叶うのなら、今年のクリスマスの夜は、南信州産の和牛でちょいと豪華に過ごしたいものであります。
現在南信州牛を地元で販売しているのはA・コープ いいだ店です。また、せっかくだからひとつ南信州牛を食べに行こうかというときのために、この南信州牛が食べられる和洋中各種料理店一覧も参考に。
秘伝 牛とろ丼レシピ
材料(4人前)
- ご飯 丼4杯
- 牛肉ステーキ用 70グラム
- 長いも 200グラム(どんぶりだし 大さじ2+卵黄 1個分+塩 少々)
- 青海苔 少々
- どんぶりだし 2カップ
どんぶりだしの作り方
- 醤油 1/3カップ
- みりん 1/3カップ
- 水 1と1/3カップ
- 削り節 ひとつかみ
- 砂糖 大さじ3
以上の各材料を合わせて一煮たちしたら火を止め、こしておく。
作り方
- 長いもをおろし、すり鉢にて良くする。調味料を入れ混ぜる。
- 牛肉をどんぶりだしに10分間漬ける。
- フライパンで汁気をきった牛肉に両面焼色をつける。少しのどんぶりだしを入れ、ふたをして、1分間弱火を通す。肉を削ぎ切りにする。
- ご飯に牛肉を乗せどんぶりだしを少々かける。(1.)の長いもをかける。青海苔をふる。
牛肉の和風ロールフライ
材料(4人前)
- もも肉薄切り 8枚250グラム
- 塩、こしょう 少々
- 小麦粉 少々
- わかめ 80グラム
- ねぎ 2本
- 醤油、七味唐辛子 少々
- のり 1枚
- チーズ 20グラム
- にんじん 1/4本
- さやいんげん 4本
- 卵、パン粉、パセリ、レモン
- 揚げ油 適量
作り方
- 肉をまな板に広げ、塩、こしょう、小麦粉をふっておく。
- わかめ2センチ、ねぎ縦四つ切4センチ長に切り、醤油・七味で混ぜ合わせる。
- のりを肉に合わせて切る、にんじん、さやいんげんをサッとゆでチーズも拍子切りにす。
- 各材料を芯にしてきっちりと巻く。
- フライにして揚げる。
- 付け合せ野菜、レモン、パセリを盛る。