レシピ

七種のよいことがみなさまにありますように

本藤さん夫妻「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、これぞ七種(ななくさ)」。子どものころいっしょうけんめい覚え(させられ)た春の七草の名前です。ええーっ、年も明けていないのに、もう七草の話なの? そうです。実はこれら春の縁起物の七草を、1月7日の日に向けて栽培している方がいるのです。

おそらく、長野県内では一軒だけでしょう。長野市屋島の本藤久和さん、すみ子さんご夫妻(写真)。冬の間眠っているハウスを有効に利用しようと、七草の栽培をはじめ、毎年1月2日から5日までの4日間、あわただしい出荷作業に追われる正月を過ごすと聞きます。

高校生のアルバイトや近所の皆さんなど総勢30人で一斉に作業をするのですが、まさに年に一回の大イベント。「縁起物だからね、これをやったら1年間健康にすごせるから...」と20年以上も続けているのだとか。

全部そろわないと出荷できない
取材に訪れてみると、はたせるかな20℃前後に保たれたハウスの中では、七種類の草がすくすくと育っていました。「七草だから七つハウスがあればなぁ」と本藤さん。「全部そろわないと出荷できないんだよ。あわせるのがむずかしいね」

あらかじめ出荷する日が暦のうえでかっちりと決められているうえに、七種類の草が同時に大きくなるわけではないので、当然ながらやりにくさもあるようです。話を聞きながら、七草を見せていただきました。基本的には田んぼとか自然に生えているものを採集してきて増やしているのだそうです。

seri.jpg七草には七種の悩みありて
セリ()は水耕栽培で。香りがいい若菜と根もいっしょに食べてほしいと本藤さん。ナズナはご存知のとおり別名ペンペングサ。ナズナとハコベは、自然のものがなかなか生えてこないので、家で種をとってみたりもしたけど、小さかったり、そろってきれいにはえてこなかったりと、なかなかむずかしいよ。

gogyou.jpgゴギョウ()は草全体が白い毛におおわれていて、厚ぼったくて茎は根元から株のようになっています。自然のものを田んぼからとってくるのですが、次の年には田んぼが駐車場になってしまっていたりと、毎年どこにとりに行こうかと悩みます。

suzuna.jpgスズナ()は蕪、スズシロは大根のことでおなじみの野菜。最後にホトケノザ。たんぽぽのように黄色い花をつけます。土にへばりつくように葉を広げているのですが、最近は田んぼにもあまり見かけなくなってしまいました。南信方面へ取りに行ったこともあったとか。

やはり七種類全部をそろえるのは容易なことことではありません。

中国から伝えられた行事
正月七日の日にこれらの七種の若葉をととのえて、これを産土神(うぶすながみ)と父母に奉ると、春の気病、夏の疫病、秋の痢病、冬の黄病を治す効験があるとものの本に書かれています。七草粥の行事は、宮廷の儀式として10世紀に中国から伝えられたもので、あの枕草子にも「七日の若葉」という段があります。中国では七草を羮(あつもの)にして食べていました。汁の具としての七草をおかゆに入れるようになるのは南北朝以降のことで、庶民にまでこれ広まったのは江戸時代のことでした。冒頭の「セリ、ナズナ、ゴギョウ・・」の歌は南北朝時代に公卿の四辻善成(左大臣)が詠んだ和歌の一首です。

一説にははじめは七種類の穀物で作られ、「七種粥」といわれたという話もあります。かゆに入っていたものはコメ、クリ、キビ、ヒエ、ミノ、ゴマ、アズキで、「春の七草」が使われるようになるのはのちのことともいわれています。

現在の「七草粥」は新暦の1月7日に行いますが、もともと旧暦の正月は今の2月頃。そのころになると、厳しい寒さの中にも春の陽射しが感じられはじめ、野草も芽吹きはじめるころだったのでしょう。

生活の知恵を大切にしよう
現在の「七草粥」は、正月に疲れた胃を回復させ、邪気を払って万病を防ぐおまじないでもあるようです。古くはまな板の上で、草をトントン叩いて刻むその回数も決められていたとか。

また七草は、野菜が乏しい冬場に不足しがちな栄養素を補うという効能もあるといわれます。古くからの生活の知恵なんですね。だんだん忘れてしまいそうな風習ですが、七草の一首とともにできるだけ子どもたちに伝えていきたいものです。

本藤さんに七草粥の作り方を教えてもらいました。

七草粥の作り方(3人分)

  • 米  1カップ
  • 塩  小さじ1
  • 水  5カップ
  • 七草 1パック
  • もち 3切
  1. 米を洗ってざるにあげ、水を切り炊く鍋に入れて、5倍の水につけておく。
  2. 七草は、塩ゆでにし、水にさらしてあくを抜き、みじん切りにしておく。
  3. 米を強火にかけて、沸騰したら火を弱め、30分ぐらいコトコト炊く。
  4. 炊きあがりにもちを加え、やわらかくしてから、七草を加え塩で味を調える。(もちは焼かないのを入れること)

七草は、7種類すべてそろえなくても大根やかぶの葉、小松菜など手に入れ易い青菜を使ってもかまいません。栽培技術が発達した現在でこそ、冬でも野菜を豊富に手に入れることはできますが、本来、野菜の乏しい冬に七草を粥に入れて食べるということは、ビタミンなどの補給として栄養的にも理にかなっていることなのです。それではみなさま、七草粥の準備もおこたりなくととのえて、健康で良い年をおむかえください。

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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