春? 雪深い北信州で早くも春を告げる「すずらん」の出荷がはじまりました。すずらんといえば、北海道をイメージする方も多いと思いますが、これらのすずらんは、長野県の北部、飯山市や木島平村で栽培されているのです。
木島平村上木島の新岡純生さん、美恵子さんのハウスを訪れました。なんともいい香りが、ハウスいっぱいに漂っています。真っ白な雪で囲まれたハウス内の温度は常に14度以上に保たれ、そこはまるで別世界・・・。
ここは住み心地の良いところ
新岡さん夫妻が横須賀市から木島平村に移り住んだのは30年前。純生さんのお父さんが北海道出身で、たびたび信州へスキーに訪れたこともあり、いずれはこの地で暮らしたいと願っていたそうです。夢が実現したのだから少しぐらい雪が多くたって平気、時間を見つけては趣味のスノーモービルに乗って、今も楽しく山の中を遊んでいるのだといいます。「静かだし不自由してないし、住み心地いいですよ」
言葉にならないほどかわいい花
夏はアスパラ、ズッキーニ、ウドなど、直売用の野菜全般を栽培し、冬の仕事としてはじめたすずらんは、今年で4年目を迎えました。すずらんは、別名「君影草(きみかげそう)」とも言い、一般的に観賞用に栽培されているものの多くはヨーロッパ原産のドイツすずらん。
すずらんの栽培は全体的に減少気味ではあるものの、それでもなお雪国の春をイメージさせるこの花は、贈り物用として人気があります。
「ちっちゃくて、鈴みたいな花がかわいくてね、香りもいいし、芽が出てくると、ほんと、言葉にならないほどかわいいですね」と美恵子さん。
出荷できるまでに3年間
そんなかわいらしいすずらんになるまでには、なんと3年もかかります。畑に養成芽を植えて花芽が出るまで2年。畑には雑草が次から次へと出てきます。それを全部で手で取っていきます。
「草取りが一番大変ね」
丸2年かけて育てた花芽は、3年目の秋に全部掘り上げます。それを洗って消毒して30−40日間冷凍保存。そして、ふかし器に移して、温度をかけて芽出しをします。すると、3週間ぐらいで葉が出て、40日目ぐらいで花が咲くのだそうです。
「子どもと同じで成長過程が楽しみですね。手をかけないとだめ。かけすぎてもだめなんですよ」
1年1年が勉強の積み重ね
すずらんは、先端のつぼみが3つぐらい残っている状態で出荷します。今年は1月21日に初出荷になったのですが、葉っぱの色に悩んでいる様子。
「日照不足のせいか、葉の色が薄いみたいね」
すずらんはもともと涼しいところで育つ植物。直射日光でなく半日陰がいいのですが、こればかりはなかなか思うとおりにいきません。周囲を山に囲まれているので、特に冬は日のかげりが早く、ライトを当てるなど人工的に光を当ててみようか、なんてことも考えることも。
「ちゃんと色がつくように、納得いくように、毎年勉強ですね」
目と鼻と心を喜ばせる花
すずらんはブライダル用のテーブル花として、多くは県外へ出荷されます。今年度は、昨年の2倍の4000鉢の出荷が目標だとか。
「すずらんは雪国の春のイメージです。かわいがって香りも楽しんでほしい」
すずらん。その花言葉は、「意識しない美しさ」「純潔」「純粋」・・・。パリのフランス人は、毎年5月1日を「すずらんの祭日」とし、この日にすずらんを贈ると幸福が訪れると信じています。見れば見るほど小さな鈴のような花がかわいらしいすずらん。
上手に育てれば何年でも花を咲かせてくれます。愛らしくて清楚で香りも楽しめる花。いい香りに癒されてみませんか。