野菜

今年は北信州でサトイモが新たな歴史を刻む

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みなさんもよくご存知のサトイモ(里芋)であります。サトイモは、うま煮・含め煮など煮物のほか、田楽、汁の実、おでんなどに大活躍。さらに親芋に子芋、そして孫芋など、たくさん芋がつくことから子孫繁栄の象徴として、お正月の雑煮やさまざま行事の料理に使われ、全国では伝統料理の食材としてもよく用いられていますね。

今回は、古来から食べられてきたサトイモを、地域の新たな主役にと産地化を目指す取り組みを紹介します。それでは、現在、サトイモの定植が行なわれているJA須高地区の丸山芳夫さん(65)の畑へご案内しましょう。


古くから人々に愛されたサトイモ
まずは、サトイモのプロフィールから。正式には「サトイモ科多年生草本サトイモ」といいます。南太平洋から東南アジアで食されているタロイモの一種で、原産地は、東インドからインドシナ・マレー半島にかけての地域というのが定説ですが、紀元前にはすでに中国で栽培されており、日本列島でも歴史がはじまる前の縄文時代から重要な食糧とされ、その伝来は稲よりも前(4000年〜5000年前)とも考えられています。

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江戸時代に、さつまいもが普及するまでは、いもと言えばサトイモのことを指しました。サトイモは、食物繊維やカリウムが多く、便秘や糖尿病予防、高血圧予防などなどその効果は数多く報告されています。少し調べるだけでこれだけ出てくるのですから、昔から人々に愛されるはずですね。

そしてサトイモを名産のひとつに
サトイモを産地にする取り組みを進めるのは信州の北に位置し、須坂市、小布施町、高山村などの地域にあるJA須高です。JAの主力は、リンゴ、ブドウをはじめとした果樹です。この果樹類の栽培作業に大きく影響を与えることなく、新たな作物の特産が出来ないものか、これまで試行錯誤が繰り返されてきました。生産者の高齢化や、多くの土地が山間地で有害鳥獣の被害が出ることや、千曲川の河川敷の農地もあり、なかなか品目を見極めることができませんでした。

あれは2006年大雨のこと。突然の豪雨によって千曲川が増水し、河川敷の農地が水没して、主力のリンゴなどの果樹が収穫できなくなってしまうという天の災いが起こりました。農家の人たちは肩を落としましたが、そんななかでも無事に収穫できた作物がありました。

そう、それが昔から作られていたサトイモだったのです。

これを契機にサトイモに注目したJAは、引き続き中山間地で試験栽培を続けたところ、有害鳥獣に食べ荒らされる被害もありません。サトイモに含まれるシュウ酸ナトリウムを鳥や獣が嫌がるためで、被害に遭いにくいこと確認されました。

さらに、栽培においては、水やりと土寄せ、防除をする程度で、管理も比較的手間が掛からない。そのうえ高齢な農家さんたちでも、過去に自家用として栽培していた経験があるので、取り組みやすいと判断されたそうです。品種は、生育が早い「石川早生」と、粘り気が強い「土垂(どだれ)」で、共に千葉県から取り寄せられました。

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1年目が失敗した理由
今回、定植直前にお伺いした丸山芳夫さん(写真)は、長年農業機械店に勤めながら自宅の畑で野菜を栽培してきた昔からの兼業農家です。このほど退職をきっかけに、奥さんと一緒に本格的な野菜栽培をはじめました。今年は、エダマメ、モロッコインゲン、ニンニク、キュウリなどをはじめ、多品目の夏野菜を栽培しています。立派に育った野菜の大半は、JA農産物直売所お百ショップ須坂店に出荷されていきます。

今回のサトイモ栽培も、直売所でJAから「作ってしてみませんか」と誘われたのがきっかけでした。チャレンジして2年目の今年は、80キロの種芋も植えることになっているのだとか。丸山さんの話す背後には、定植を待つ畑と畝(うね)が広がっていました。その広さ1反(たん)7畝(せ)=約17a(アール)ほどです。

「1年目は、失敗さ。栄養をあげすぎて、木がほけて(生い茂って)しまったよ(笑)木が大きくなりすぎるとサトイモへ栄養が行かず、サトイモ自体が大きくなれないんだ。今年は、追加の肥料のタイミングと量をしっかり見定めなくては」と丸山さんは振り返ります。

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「課題は連作障害が出るので、同じ場所で毎年栽培出来ないこと。量が量だから、畑をかえなくちゃいけないんだ。そこで、地域の遊休農地や、あいた田んぼを利用することも考えています。田んぼを使うと、ねばりのあるサトイモが出来るんだ」とサトイモの芽だしの様子を見ながら、嬉しそうな丸山さん。

野菜たちが宝石のように輝く
農業の醍醐味を聞くと「朝の収穫が時間との勝負なので大変です。でも、実った野菜はそりゃもう宝石みたいに輝いていて目をみはりますよ。朝採ったものを直売所へ持っていく。すると、丸山さんの野菜はうまいねって声を掛けてもらう。あぁ、つくってよかったなと夫婦で話しています」とにっこりされました。

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今年の秋をお楽しみに
はじまったばかりのサトイモ・チャレンジは現在、須坂市の畑を中心に種芋(上写真)の植え付けが行なわれています。七夕の頃には大きく天空に向かって広げた葉に朝露を集め、夏を過ごしたあとの9月下旬から10月上旬には収穫の予定。JAでは、丸山さんたちの協力を得ながら、今後もサトイモ栽培の農家さんを徐々に増やしていく考えです。

北信濃の空に秋祭りお囃子が響き渡る頃には、信州から丸山さんたちの手で丁寧に育てられたサトイモが登場します。そのときには中秋の名月も、そのサトイモで祝うことにいたしましょう。

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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