野菜

まさしくそれは「畑のさしみ」でありました

こんにゃく芋

さてこの写真に写っているものがなにかおわかりになりますか? これ、こんにゃく芋です。こんにゃくというのは、こんにゃくのままなっているわけではありません。それはサトイモ科のこんにゃく芋から作るものなのですが、一人前のこんにゃく芋が育つまでに、3年から4年の月日を必要とします。

生子(きご)と呼ばれる種芋を育て、その葉が枯れると直径5〜6センチに育った芋を掘り出して、保管します。これで1年目が終わります。その芋を翌春畑に植えて、また芋を大きく育てるということを繰り返すのです。つまり、こんにゃくの生産にはとても手間がかかるのです。

カロリーが低いためにダイエットにうってつけと話題になり、食物繊維が豊富なことから機能性が高いとして近年都市の人たちにも注目されているのが「こんにゃく」ですが、こんにゃくはこんにゃくでも、粉からではなく生芋をすりおろして作るこんにゃくが、とにかくおいしいのです。だから、こうして作られたこんにゃくを「畑のさしみ」と呼ぶことがあります。そこで、この「畑のさしみ」を家庭で食べられている産地に出かけ、生産者のお話を聞くことにしました。

信州新町越道地区から見た北アルプス
信州新町越道地区から見た北アルプス。
大地がこんにゃく芋を育むということを実感。

ちくまこんにゃくの故郷へ
こんにゃく芋の品種は、古くから栽培されている「在来種」「備中種」がありましたが、中国から「支那種」という種類を輸入し、掛け合わせで「はるなくろ」「あかぎおおだま」という改良種が生まれて、現在ではこれらが生産の90%以上を占めています。

信州のこんにゃく芋の生産は平成15年のデータでは、収穫面積29ha、収穫量315トンです。上伊那地方(駒ヶ根市、飯島町、中川村)、下伊那地方(喬木村、阿南町、豊丘村、飯田市、泰阜村、天竜村、松川町、阿智村、大鹿村、南信濃村)、長野地域(信州新町、小川村、中条村)で作られています。全国的には、群馬県が収穫量53,600トン(平成11年産)とダントツに多くて、わが国の9割を生産しています。次いで栃木県、埼玉県、茨城県、福島県の順となっています。

今回訪れた信州新町は、長野市の南西に位置する山に囲まれた町。そこの越道(こえど)地区栃久保(とちくぼ)集落で50年こんにゃく作りを続けている、萩原直俊さん・武子さんご夫婦を訪ねました。

お宅は小川村との境となる山の尾根に位置し、山並みの向こうに北アルプスが望める絶景きわまりないロケーション。「戦後、養蚕からの切り替えで傾斜地でも作れるこんにゃくの栽培をはじめた。当時は、『ちくまこんにゃく』の名前で販売し、高く売れた」と荻原さんは話します。

どの家でもこんにゃくは手作り
それから一気に地域ではこんにゃく栽培が広がり、家庭でも生芋からこんにゃくを作り食べるようになったそうです。その後、病気に弱いこんにゃくに大きな被害が出て、りんごなどの栽培に切り替える人が増えましたが、こんにゃくの生芋から手づくりでこんにゃくを作り食べる食文化は残り、必ずといって良いほど地域の家庭では秋から冬にかけてこんにゃくを作っています。

貯蔵されたこんにゃく芋
貯蔵されたこんにゃく芋

現在も信州新町にはこんにゃく生産組合があり、萩原さんらを中心に15人の会員が、こんにゃくの生産・販売を行なっています。地元のA・コープ信州新町店や、地場流通センターでは、そうして育てられたこんにゃく芋がそのまま売られています。

「ここの重粘土質の土壌がこんにゃくの生産に非常に適している。一度食べると、ほかのこんにゃくは食べられない。」萩原さんは胸をはります。

なんとみずみずしいことよ!
こんにゃく芋の販売価格は通常140円/1kg前後が昨年の相場ですが、信州新町のこんにゃく芋は500円/1kgで取引されています。実際にいただいてみると、市販の粉から作られたこんにゃくでは味わえないみずみずしい味。それでもこの時期は「こんにゃく芋の水分が減り、春が近くなって植物としての成長活動がはじまるので、秋の収穫したての頃より味が落ちる」と萩原さん。このつぎは時期を見て、さらにみずみずしいこんにゃくをぜひ食べてみたいものです。

萩原さんの栽培するこんにゃくの品種は「はるなくろ」。以前は在来種で栽培していましたが、生子(きご)から2年で出荷できるために品種の切り替えをしたそうです。

去年、長野市南堀の信州大学附属小学校の2年3組が校内の畑でこんにゃくの栽培と手づくりこんにゃくに挑戦したいとの話が持ちあがりました。そこで、萩原さん夫婦と、JAながのさいがわ営農センターの小池健営農技術員が種芋を提供したり、こんにゃく作りの指導をしました。(その様子は「いいJAん!信州−県内JAの話題から」をご覧ください)

「ここのこんにゃくは本当においしいので、ぜひみなさんにも食べていただきたいですね。元気なうちはこんにゃく作りを続けます。」と萩原さんは張り切っています。

さしみこんにゃく

こんにゃくのことをさらに知りたい人のためのサイト案内

arrow2.gif 日本こんにゃく協会

arrow2.gif こんにゃく特産研究センター

arrow2.gif こんにゃくドットコム(岡山県共栄蒟蒻株式会社運営サイト)

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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