加工品

厳寒期の信州の風物詩寒天づくりを見てきた

八ヶ岳山麓の寒天の干し場

ここ数年の健康食ブームで、人気が高まっている寒天ですが、その寒天には2種類あるのをご存じですか? ひとつは「冬季に自然の寒気を利用して製造する天然寒天」と、もうひとつが「工業的方式(加圧脱水法、冷凍法等)によって製造する粉末状の工業寒天」です。国内の平成17年度の寒天製造量は1047トン、そのうち天然寒天が353トンで、工業寒天が697トンです。

 

大自然が作る「天然寒天」は、長野県や岐阜県が主な産地。長野県内で寒天づくりがされているのは、茅野市を中心とする諏訪地域で、この地の冬季の冷え込みが厳しく、しかも晴天の日が多くて湿度が低い――いわゆる典型的な内陸性の気候が、品質の良い寒天づくりにはかかせないからなのです。寒天は、簡単に言ってしまうと、いわゆる「トコロテン」を凍結させて脱水したもの。フリーズドトライ・トコロテンなのです。干し場となる水田には一面に稲ワラが敷かれ、所狭しと寒天が並べられている光景(写真)は、信州諏訪地方の冬季にだけ見ることができる風物詩となっています。

この時期だけの寒天づくりを見学に
茅野市金沢にある寒天工場、有限会社富屋(信濃寒天農協)さんを訪ねると、今季終盤の寒天づくりに追われていました。

釜で煮沸
釜でぐらぐら煮沸
完全凍結したトコロテン
完全に凍結したトコロテン
融解・乾燥中の寒天
ただいま融解中の寒天
仕上げの乾燥
ここで仕上げの乾燥
寒天づくりの作業風景
作業は2月中旬まで

寒天の製造方法は、まず原料となる天草やオゴノリなどの海藻を洗浄機にかけて土砂や貝がらなどを取り除きます。きれいになった海藻に酸を加え釜で煮沸し、ろ過槽でろ過します。そしてこれをコンテナに入れて冷ますと、いわゆるトコロテンができあがります。

つぎにトコロテンを一定のサイズに切りそろえたら、厳寒の屋外で2、3日かけて完全凍結させます。その後、日中の冬の弱い日差しで2週間位かけゆっくりと融解させつつ乾燥させていきます。寒天の干し場で、北向きに太陽に背を向けるように並べられているのは凍結中のトコロテンで、南向きに太陽に向かって並べられているのは融解・乾燥中の寒天というわけです。

最後にビニールハウスなどで仕上げの乾燥をし、できあがった寒天は結束されて品質検査をして出荷されます。この地方は、夜間の気温がマイナス5度からマイナス15度にまで下がり、日中の最高気温は5度から10度以下で、晴天の日が多く、湿度が少ないという寒天づくりには理想的な気象条件。そして八ヶ岳山ろくの豊富で清らかな地下水も、寒天作りには欠かせません。

生のトコロテンもおいしい
有限会社富屋さんでは、1日に2万2千本、1シーズンで120万から130万本の天然寒天を製造するそうです。近年は暖冬のため、製造期間が短くなる傾向だそうで、日差しが強くなる2月中旬には、寒天づくりが終わります。その後、工場では生トコロテンを製造し、諏訪地方の飲食店などで特産品として食べることができます。

寒天は日本列島で生まれた
寒天は、およそ350年前の江戸時代に、日本で発明された食品です。冬のあるとき薩摩藩の一行が参勤交代で伏見に陣をとった際、美濃屋太郎左衛門という人物がもてなしにトコロテンを出したそうです。その使い残しのトコロテンを屋外に放置したままにしておいたところ、寒さで凍結して干からびていました。それを試しに煮戻して冷ましてみますと、白く透明なゼリーができたことから、寒天が偶然発見されたと言われています。

寒天づくりの干し場の風景寒天に注がれる熱い視線
寒天の調理方法は、沸騰させて溶かし、固めるとゼリーができますが、最近は毎日のごはんに炊き込んだり、水にもどし、みそ汁やスープ、サラダにちぎって入れるだけで手軽に利用する方法なども紹介されて、話題を呼んでいます。成分の約9割が食物繊維の寒天。ガンやリューマチ、糖尿病などもに効果があることが発表され、健康食品としても熱い視線が注がれています。

■寒天についての詳しい情報やレシピなどは次のウェブサイトでどうぞ。

arrow2.gif 信濃寒天農業協同組合

arrow2.gif 長野県寒天水産加工業協同組合

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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