加工品

自然と人が育む伝統の味。毎日食べたい諏訪の寒天

寒天

長野県諏訪地域は、茅野市を中心に寒天づくりが日本一盛んな地域であることをご存知ですか?
寒天は、簡単に言ってしまえば「トコロテン」を凍結・脱水させ、乾燥したもの。健康食として近年注目を集めていますが、その歴史は江戸時代までさかのぼります。
今回は、寒天づくりの最盛期を迎えた茅野市に行ってきました。

180年以上前から伝わる諏訪の寒天

諏訪地域で寒天づくりが始まったのは、江戸時代末期の天保年間(1830~1843年)のこと。全国を旅していた諏訪出身の行商人、小林粂左衛門が京都の寒天を見て、故郷信州の寒さに寒天づくりが適しているのではないかと考え、その製法を諏訪地域に持ち帰りました。
そう、実は諏訪地域は「夜間の気温が低い(マイナス5度~15度)」「晴天の日が多く日照時間が短い」「雪や雨の日が少ない」「水がきれい」など、質の高い寒天づくりに欠かせない条件をすべて満たしています。小林粂左衛門の読みは見事的中し、以降180年以上、信州諏訪の冬の風物詩として、また農家の農閑期の副業として定着しています。

自然環境を生かし、より純度の高い寒天に

茅野市宮川にある、長野県寒天水産加工業協同組合の小池隆夫組合長を訪ねると、晴天の寒空の中、組合の皆さんによる作業が行われていました。

寒天

寒天

寒天

これが、いわゆる「寒天干し」の作業です。夏場はセルリー(セロリ)をつくっているという20代の農家の方から、この道数十年のプロ、80代の農家の方まで、力を合わせて作業をしています。
一見すると羊かんのような固形物。これが寒天です。前日に原料の海藻(テングサ・オゴ草)を煮沸し、抽出した寒天液を夜間に流し箱(青い色の箱)に入れて固め、てん切り包丁で切断したもの。これを一旦箱から出して積み重ね、夕方には干し場一面に敷き詰めます。
こうして完全なる自然環境の中、凍結・乾燥を繰り返し、約20日間かけて寒天ができあがっていきます。
凍結・乾燥を繰り返すことで、水溶性の不純物が取り除かれていき、より純度の高い寒天ができあがっていきます。
できあがった寒天は、最後にビニールハウスなどで仕上げの乾燥をし、1梱包600本ずつ結束され、品質検査をされて出荷。12月から2月の間、1日1万8千本、1シーズンで100万本以上の寒天を製造しています。

小池組合長に1日の作業スケジュールを伺いました。

10:00~14:00 海藻を煮沸
14:00~    寒天液を蒸らす
22:00〜    寒天液をろ過
0:00~3:00  寒天液を流し箱に入れて固める
6:00~7:00  固まった寒天液をてん切り包丁で切断
10:00~    寒天干し

もちろん分業制で行っていますが、寒天づくりは1日がかりの作業であることがわかります。

寒天

海藻の煮沸

寒天

流し箱に寒天液を入れ、固まった後に切断されたもの

寒天

前日に寒天干しをし、凍結した寒天

寒天

乾燥が進み、出荷間近の寒天

寒天

結束され、出荷を待つ寒天

「手作業で人手がいることや、天候によって品質が大きく左右されるなどの大変な面もありますが、先祖代々続いてきた長年の食文化を絶やさないよう、これからも寒天づくりに取り組んでいきたい」
小池組合長はこう力を込めます。

寒天

産地ならではのおいしい寒天料理に出合えます

昨年開催された、7年に一度の諏訪地域のお祭り「御柱祭」ではおもてなし料理としてふるまわれるなど、地域の名産としての確固たる地位を築く一方、都内にある長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」にも出品、また、健康食としてメディアにも取り上げられるなど、信州諏訪の寒天に全国的な注目が集まる兆しもあるように感じます。

汁物に、ご飯に、デザートに・・・、いろいろな料理に簡単に使用できるのも寒天の魅力。諏訪地域には、寒天のさまざまな「おいしい食べ方」が味わえる直売所や、寒天を使用した料理を楽しめるおしゃれなレストランもあるんです。
歴史と伝統と健康を味わいに、諏訪地域に来てはいかがですか?

20170201kanten11.jpg■直売所 松木寒天
■レストラン トコロテラス

【寒天豆知識1】
寒天は製法によって2種類に分かれます。ひとつは、角寒天(棒状の寒天)や糸寒天(糸状の細い寒天)などの天然寒天。もうひとつは粉末になっている粉寒天などの工業寒天で、工場でつくられています。
粉末寒天は、加工食品の安定剤として使われているほか、化粧品や芳香剤、歯医者で歯形をとるときに使う歯科用印象材、DNA指紋法と呼ばれる警察が犯人逮捕に使う検査のベース材にも活用されています。
今回取材をした寒天水産加工業協同組合でつくっているのは、すべて角寒天です。

20170201kanten12.jpg【寒天豆知識2】
寒天の食物繊維含有率はレタスの67倍で、あらゆる食品の中でナンバー1。また、コレステロール低下作用を持つ「アガロペクチン」という物質が含まれています。
寒天水産加工業協同組合が、茅野市と医師の協力により実施した調査によると、40~70歳の男女60名に3カ月間、週に5日以上角寒天を摂取してもらったところ、寒天摂取期間中、総コレステロール・悪玉コレステロール・中性脂肪・血糖値は、摂取量に関係なく低下。摂取終了とともに増加をしたとのことです。

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

この記事を書いた人

グァルネリ

1485874800000

関連記事

厳寒期の信州の風物詩寒天づくりを見てきた
加工品

厳寒期の信州の風物詩寒天づくりを見てきた

信州の寒風が育てた白い糸 「糸寒天」
加工品

信州の寒風が育てた白い糸 「糸寒天」

寒さ厳しいときにこそ良い寒天ができるのだ
加工品

寒さ厳しいときにこそ良い寒天ができるのだ

ほんもののところてんの味を知ってますか?
加工品

ほんもののところてんの味を知ってますか?

新着記事