暑い季節になると、諏訪地方では「ところてん」の幟(のぼり)が目につくようになります。ところてんは、テングサやオゴノリといった海藻類を煮てとかしてできる寒天質を固め、突き器で細長い麺状にした食品で、諏訪地方の有数の市である茅野市は、冬の厳しく乾燥した寒さを利用する寒天の生産が盛んな地域。寒天とところてんの関係から言えば、寒天はところてんを凍らせて水分をとばしたものですから、当然、寒天生産の盛んな諏訪地域では、本場ならではのところてんが味わえるというわけです。
なぜでもところてん!
俳句では夏の季語にもなっているところてんですが、漢字では「心太」または「心天」と書くそうです。「こころぶと」が「こころたい」となって、さらにそれが「こころてい」と変化し、それが転じて「ところてん」となったとまことしやかに[また苦しまぎれに]語られますが、真偽の方は定かではありません。
いずれにしたところでこの「ところてん」、その歴史は古くて、遣唐使が中国から「こころぶと?」として伝えて奈良時代から食べられていたというのですから、まさにもう日本の伝統食と言って良いでしょう。図は江戸時代の「心太屋(ところてん売り)」の図です。
健康食として見直される
関東以北や中国地方以西では三杯酢や二杯酢に和辛子を添えて食べますが、関西では黒蜜をかけてスイーツとして食べます。よく冷やしたところてんは、透明な材質の視覚もあって夏にピッタリの食べ物。しかも整腸作用があるので夏バテ防止にも効果があるとされています。寒天と同様、近年は低カロリーの健康食品としても見直されてきているのです。
本場のところてんを食べなされ
中央自動車道諏訪インターチェンジを出てすぐのところにある信濃寒天農業協同組合(諏訪市沖田)は、「昔なつかしい味を提供したい」と今年5月に敷地内にところてんの直売窓口を開きましたし、オンラインショップもあります。
2年前からテレビで健康食品として寒天が取り上げられ、ブームとなっていますが、寒天の製造工程でできるところてんにも注目が集まっていることから、試行的に直売をはじめたのです。
世の中には粉末寒天を原料としたところてんが増えていますが、信濃寒天のところてんはテングサの風味と八ケ岳の水と信州の気候を生かしたまろやかな味が特徴です。商品は2〜3人分の400グラム袋詰めで、三杯酢の専用たれが付いて250円。黒蜜のたれも別売しています。
諏訪にお越しの際はお立ち寄りになってみてはでしょうか。信濃寒天農業協同組合のウェブサイトでも注文できます。
また、中央自動車道の諏訪湖サービスエリアでも、ひと休みと共にところてんを味わうことができます。諏訪湖を眺め、温泉に入り、ところてんをいただくのはどうでしょう。きっと、ツーンとしてしゃきっとして、ドライブの疲れもふっとびますよ。
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