幻のキノコ、神のキノコとして「神茸」とも呼ばれる「バイリング(はくれい茸)」を、ご存じですか? 「はくれい」は「白嶺」とか「白霊」と漢字で書かれることもあります。中国の西の端にそびえる雄大な天山山脈に自生する希少種のキノコです。
日本全国を見渡してみても、数えるほどにしか生産している人がいないキノコ。丸く大きな形と純白の肌、クセのない味と軟らかな独特の食感が特徴で、海外では高級食材として珍重され、国内でもごくわずかしか生産されないめったに見ることのないキノコです。そこで今回は、この希少なキノコのお話を聞こうと、長野県のキノコの本場、北信州中野市で唯一バイリングを栽培する竹内秀治(たけうちひではる)さんの工場にお邪魔しました。
栽培技術の改良は今もつづく
竹内さんがバイリング栽培に取り組みはじめたのは6年前の2002年のこと。山中勝次さんという京都でキノコを専門に研究する先生に種を分けてもらったことがきっかけでした。栽培方法が確立していないなかでの取り組みとなるため、竹内さんはJA中野市に協力を依頼、以後共同で研究を進めてきました。「バイリングは中国の新疆ウイグル自治区に自生しているキノコでして、中国では菌床栽培されています。それを瓶を使った栽培にしたので全く新しいチャレンジだったわけです」と竹内さんは話します。
もらった種が複数種類あったため、味を第一に考えながら種の選別を繰り返しました。「まともな味のものを選び出すのに2年はかかった」といいます。それでもさらに良い味、良い形を目指して、現在でも種の選別や栽培方法の改良を続けているのだとか。
とにかく手間のかかるキノコ
バイリングが珍重される背景には、そもそも栽培する生産者がほとんどいないという現状があります。その理由のひとつは、これがほかのキノコに比べて栽培日数が長く、手間がかかることが考えられます。
竹内さんは最初のバイリングを育てるのに140日近くかかったといい、現在でも100日以上の日数がかかっているそうです。これは比較的生育時間の短いヒラタケ(40日ほど)の3倍近くになる計算です。また、ひとつの瓶で1本のキノコしか育てないため、瓶の中のほかのキノコを摘み取る「芽かき作業」が必要になるなど、手間も余計にかかるのです。それでも竹内さんは昨年、バイリングを年間40トン生産され、今年はその倍の80トンを目標に取り組んでいます。
食べられた方の声を求む
これまでのJA中野市などとの共同研究の結果、栽培日数を短縮する栽培方法も確立できたのですが、施設投資が必要なため、現在のところ、その方法を使った栽培はまだしていません。竹内さんは今後の取り組みについて次のように話しました。
「作れば売れるという時代ではないですから、お客さんの声を聞きながら、お客さんの声に合わせて生産体制を作っていこうと思っています。少しずつ生産量が増やせればいいですね」
で、その食感は?
さて、このようにして手間のかかった貴重なキノコですから、おいしさだって格別です。歯応えがあるのに軟らかいという独特の性質を持ち、その食感はしばしばアワビに例えられたりもします。また煮ても型崩れすることがないため、色々な料理に使いやすい素材でもあるでしょう。
すぐ食べてみたいですか?
現在、竹内さんのバイリングは、東京を中心に出荷され「チャイナグリル・シェンロントーキョー」「キハチチャイナ・ギンザ」などの中華料理店で使われているほか、「ザ・ガーデン自由が丘」というスーパーマーケットでも取り扱われています。事前に各店舗にご確認のうえ訪ねてみてください。
また、JAタウン「僕らはおいしい応援団」でも取扱っておりますので、興味のある方はこちらのサイトからどうぞ。
どこか食べれるお店は?
竹内さんはいま、地元への提供を強化したいと考えているそうで、今後は、中野市内やその周辺の飲食店・旅館等で使ってもらえるような取り組みを考えているそうです。
そこで一軒、中野市内で竹内さんのバイリングが味わえるお店を紹介しましょう。それは中野市三好町にあるラーメン & 食事処「かわら家」さんです。
かわら家 住所:中野市三好町1-1-8 電話・FAX:0269-23-0697 営業時間:11:30-14:00 18:00-0:10 定休:月曜日 地図 |
「かわら家」さん自慢のバイリング料理のひとつが"まるごとバイリンご丼"。その名の通り、バイリングを丸々ひとつ使ったボリューム満点の丼です。上にかけられた中野市産のリンゴを使う甘酸っぱい「りんごだれ」が良く合います。ふたつ目は"バイリングの味噌漬け"。肉厚なバイリングを、信州味噌で漬けたこの品は、お酒のお供に最高の逸品でしょう。
このかわら家さんでは、ほかにも中野市特産のキノコをふんだんに使った料理メニューがありますので、あなたがキノコ大好き人間なら、旅などで中野市を訪れた際は是非立ち寄ってみるべきかもしれません。
手に入れたら先ずはこうして食べよう
それでは最後に、あなたが神のキノコ「バイリング」を手に入れることが出来たと仮定して、そんな幸運なあなたのために、竹内さんに伝授された簡単料理レシピをご紹介しておきます。
バイリングのソテー
1.オリーブオイルをフライパンに薄くひく
2.バイリングを厚めにスライスする
3.スライスしたものをフライパンに入れ、
塩、コショウで味付けしながら炒める
4.お皿に盛ってできあがり!
このほか、JA中野市のホームページにもバイリングを使った料理のレシピが掲載されていますので、こちらもご覧になってください。
JAタウン「僕らはおいしい応援団」バイリングのページ
JA中野市のホームページ(料理レシピのページ)
"かわら家さんの丸ごとバイリンご丼"を紹介するページ