「花には、家庭を明るくし人を癒してくれる、そんな不思議な力があるんです。わたしは、アルストロメリアという花に出会うことができてほんとに幸せです」
そう話してくれたのは、アルストロメリアの全国シェア5割を生産し、全国1の産地である長野県南部の上伊那地方で、この花を誇りを持って育てている中原睦男(なかはらむつお)さん(36)。
インカのユリと呼ばれる花
アルストロメリアは、南米アンデス山麓(標高3,000メートル)に約60種類ほどの原種が自生するアルストロメリア科の花で「インカのユリ」と呼ばれています。ユリのように可愛らしく、花びらの一部にスジ状の斑点模様がつくのが特徴で、近年の洋花を愛する仲間が増えるにつれて人気の高い花です。
このアルストロメリアを栽培する中原さんは、本年1月末に行なわれた「第13回ウインター2008信州フラワーショー」品評会で、農水省関東農政局長賞に選ばれた実力の持ち主。さっそく、その中原さんに会ってきました。
この花を愛し続けて8年目の春
もう少しアルストロメリアの話をしますと、花の色は様々で、ピンク、黄色、白、赤、紫、オレンジなど彩り鮮やか。主にオランダの栽培種を使用し、毎年新たな品種が生まれています。花持ちの良さ(おおよそ冬場で1ヶ月、夏であっても10日以上)も特長のひとつといえるでしょう。現在、上伊那地方では、約100品種、年間1300万本を関東、関西に出荷し、切り花などとして喜ばれています。
中原さんは、10年前に脱サラして農業をはじめ、野菜などを作って農業のおもしろさ、楽しさを学びました。就農して2年ほどたった後、アルストロメリアを栽培していた地域の生産者がリタイアし、地域のJA上伊那から設備や資材が整っているので挑戦してみないかと誘われたことがターニングポイントでした。
「メリア(アルストロメリアをこう呼ぶ)をはじめたころは、わからないことだらけで勉強の連続でした。大変でしたが、正直わたしにあってるなと直感しました」と中原さんは振り返ります。
その後、JA上伊那や花卉部会などで、基礎から技術などを徹底的に学びました。8年が経過して、中原さんは現在、上伊那美篶(みすず)でハウス11棟(約50アール)にピンク、白、紫など約10種類6000カブのアルストロメリアを栽培し、年間55万本出荷するほどに成長したのです。
最も気を使うのは土の温度
栽培で大変なのは、温度管理だと中原さんは言います。ハウスの中は、2月中も約25度ほどに保たれます。やはりハウスの温度は暖かくしておかないといけないんだなと感じていると、中原さんは続けて「当然ハウス内の暖かさ必要なんだけど、実は一番気を使うのは『土』の温度なんだよ」と教えてくれました。「土?」と思わず聞き返しました。
そう、土の温度。年間これだけコンスタントに出荷できる秘密は土の中の温度のコントロールでした。もともと花本来の出荷ピークは、春の4〜5月頃。上伊那では「地中冷房システム」といわれる新たな技術の普及で、なんと1年中花がコンスタントに栽培出来るようになっていたのです。
アルストロメリアを育てるとき、よい花が着くもととなる「花芽(はなめ)」は、ある一定の地温(14〜18度)がないと育ちません。そこで、地中にチューブを埋め冷却水を流すことよって夏場は地温を下げ、今の季節は、暖かい水を流して高くしてやるのです。これが「地中冷房システム」です。
こうして年間栽培が可能になったものの、それでも虫対策など課題はまだ多いと話す中原さんは、話しながらも花に目をやります。
たくさんの人に喜びを伝えたい
今回の受賞の感想をたずねると「ひとつのことに取り組み、評価され賞をもらうということは、本当にうれしいことです。今回、新たな品種にチャレンジしましたが、もともとの品種がすばらしく、花に助けられたのが正直なところですよ」と中原さんは笑顔で答えてくれました。
今後の展望を聞くと「メリアで、たくさんの人に喜んでもらいたいのです。見て、贈って、贈られて、すべてが喜びです。今、JA上伊那と真剣に取り組んでいます。燃料高となり、コストははじめたときの倍以上になっています。それでも、この花が好きだから続けられます。次々と新しい品種が生まれ日本でわたししか育てていない、そんな栽培に、これからもチャレンジしていきますよ」
花には、人の心を癒してくれる不思議な力があります。家に絵を飾るように、家に花を飾ってみてください。たとえ一輪の花であっても、花がそこにあるとないとでは大きな違いが生じます。アルストロメリア、その花言葉は「未来への憧れ」です。
関連サイト:
JA上伊那花卉部会 最新ニュース
アルストロメリア写真館
JA上伊那る〜らるNET 「アルストロメリア花束」
長野県のおいしい食べ方アーカイブ記事:
「だからアルストロメリアの花束を!」(2005年5月16日)
アルストロメリアのご注文は:
「JA上伊那」アルストロメリア花束ミックス