果物

リンゴの剪定は悩まず感じるままに枝を切る

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今年の長野県の冬は、スキー場のある山間部を除けばあまり雪もふらず、底冷えする日はあるものの、日中は晴天の日が多い。そのために県下各地のリンゴ農家では、早くも実りの秋に向けて例年よりも早く「剪定(せんてい)」の作業をはじめています。

剪定とは、今後のリンゴの木の成長する姿を見極めながら、不要な枝をひとつひとつ切り落としていく芸術的作業で、一年の一番最初の作業であると同時に、その年のリンゴの出来・不出来に直接大きく影響をおよぼす最も重要な作業です。

今回、その剪定作業がどのようにして行われ、またいかにそれが大切な作業なのかを教わるために、千曲市のリンゴ農家、宮原明彦さん(54)を訪ね、お話をうかがうことにしました。

秋のリンゴの木の姿が見える
宮原さんはリンゴを作りはじめてから30年以上のベテランで、JAちくまりんご部会の部会長を務められています。

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例年であれば1月15日過ぎからはじめられるこの剪定作業(雪の多い年は1月下旬から)も、今年は例年より2週間ほど早く、1月3日からはじまったそうです。すべてのリンゴの作業の中でも最も難しいとされる剪定作業、宮原さんはどこに注意して行っているのでしょうか。

作られているリンゴの種類や規模などを教えてください。

宮原明彦(MA) : リンゴは、つがる、秋映、王林、シナノスイート、シナノゴールド、サンふじなど色々と作っています。規模は9反歩(90アール)で、一年間に18キロの箱で平均1500〜2000箱は出荷しますから、27〜36トンくらい生産している計算になりますね。

リンゴを作り続けて30年以上とのことですが。

MA : わたしは父を早くに亡くしてしまったので、リンゴの作業を色々と教わることができなかったんです。だから、父を亡くしたあとリンゴ畑に立って「さぁ、剪定だ」と思ってみてもどの枝を切ればいいのかさっぱり分かりませんでした。一日中、悩みながらリンゴの木下をグルグルと歩き回っていましたね。それが今では、切るべき枝が直感的に「パッ」と分かるようになりました。まぁ、それでも悩んで時間を費やしてしまうこともあるのですが、悩みはじめればキリがありません。それに、直感的に感じたもののほうがどうやら正しいということが分かってきましたね。

感じたままに剪定するのですかぁ?

MA : それから、剪定という作業には農家もそれぞれこだわりがあって、みんな自分の方法が正しいと思ってやっています(笑)この時期には剪定の講習会があってみんな参加するのですが、そこでしっかり学ぶというより「これから剪定がはじまるぞ」という一年のスタートのきっかけとして参加するベテランの方もも多いんじゃないですかね。

直感で切る枝を感じるようになるまで、どれほどの枝を切り続けてきたのですか?

MA : いや、さすがにそれは覚えていません(笑)剪定の一日の作業はわたしの場合、午前8時から午後4時まで行います。それが1月から3月いっぱいくらいまで続きますから、まぁ、"相当な数"を切ってきたとしか言えないですね。

1日6時間から7時間をまる2ヵ月は続けると。

MA : ただ、大事なことは自分自身で切るということです。ときどき剪定をしてほしいと頼まれることがありますが、剪定だけは分からなくても自分ですべきだと思います。講習会などで基本も学べますが自分で数をこなすことが結局一番の勉強だと思います。

摘果、葉摘み、玉回しなどリンゴにはさまざまな専門的な作業(注1)がありますが、剪定の位置づけはどのようなものですか?

MA : 剪定は一番最初の作業であり、一番重要な作業です。作業の良し悪しで収量にも品質にも必ず影響が出ます。7〜8割は剪定で決まるといってもいいでしょう。例えば、剪定が悪くて枝が混んでいると、消毒しても害虫が発生したりします。だからこそ難しい作業でもあり、その木が今後どのように育つか考えながら切っていく必要がありますね。

切ったあとの枝はどうされるのですか?

MA : 炭にしたり、お風呂の薪にしたりします。我が家は今でも薪風呂なんですが、リンゴの枝で焚いたお風呂は最高ですよ!

今年の秋は期待しても良い
宮原さんのリンゴ畑は標高500メートルほどのなだらかな斜面にあります。上のほうの畑の木から剪定作業をはじめてきていると聞き、実際に畑に足を踏み入れてみると、剪定済みのところと、これからのところでは、リンゴの木々の姿が大きく違うことが分かります。

剪定を終えていないところは、木と木の間を通り抜けるのにも頭を下げ、腰をかがめてと一苦労なのだが、剪定のすんでいるところは、ほとんど引っかかるものがなくスイスイと通り抜けられるのです。

畑のあちこちには剪定された枝が積まれています。今年のリンゴの状況についてリンゴ農家として30年以上の経験を積んできた宮原さんに尋ねると、昨年のこの時期は花芽の出がいまひとつで、はたせるかなそれが収量等にも影響したとか。だがそれに比べると今年は花芽の出もよく、収量、品質ともに期待できるのではないかと教えていただきました。

リンゴ好きの読者のみなさん、1月半ばだというのに、早くも今年の秋の収穫が待ち遠しく思えませんか。

(注1)摘果:小さいうちに実を摘み取り、残した実を肥大化させること。葉摘み:実に太陽の光が当るように周囲の葉を摘み取ること。玉回し:リンゴを回転させて陽の当たっていない部分に陽を当てること。

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