おいしいお米の産地として長野県をあげる人が増えています。県内各地の米どころを巡り、おいしさの秘密を探るための生産者の方のインタビューをお届けするシリーズ、第2回目となる今回は、県の東信地方、東御市八重原(やえはら)へ出向きました。
八重原でこだわりの米の生産に取り組む荻原昌真さん(28)を紹介します。
彼は、農業生産法人「信州ファーム荻原」の農場長をつとめています。現在社員は、両親と奥さん、弟妹、スタッフが4人(平均年齢29才)の計10人。若者たちが楽しみながらコシヒカリ約35ha(約3000俵)、麦・そば・大豆延べ18haを栽培しています。彼はこう言いました。
「小さい頃から手伝ってきたので、農業は嫌いではなかったし、親たちががんばっている姿を見て、俺はやらないとはいえなかったですね」
大地を舞台に踊るんだ
高校・大学と制御工学を専攻した技術系の荻原さんでしたが、いずれ継ぐのならなるべく早くはじめた方が自分のためになると考え、迷わず農家を継ぐことを決めたそうです。
八重原大地は、蓼科山系の山々を南に臨む標高600〜700mの中山間地。一帯は、県内有数の特A良質米産地です。ミネラルを豊富に含んだ清涼な天然水、強粘土の大地、年間通して昼夜の寒暖の差が大きいなど、良質米の産地としてもっとも適している大地です。
その恵まれた環境とたゆまぬ努力から生まれたのが特別栽培米「やえはら舞」。この名前には"八重原"の大地への想いと、"百姓は大地(=農家の舞台)で舞うんだ"というふたつの想いが込められています。
「やえはら舞」ですが、八重原産のお米がすべて「やえはら舞」になるとは限らないといいます。荻原さんが収穫して、目で見て、食べてみて、特に自信のあるお米だけを特別に「やえはら舞」というブランドで販売するのだそうです。それは全体の2割程度というから、かなり貴重なお米です。
「消費者にはもちろんのこと、自分にとっても体に悪いものは作りたくないですね」
大変だけれど楽しむ
9割以上の水田で、農薬と化学肥料の5割減を達成しました。そのぶん手がかかるそうです。全部で330枚ある田んぼを、毎日すべて見に行き、自分の目と頭で確認します。意識は常に稲たちと共にあり、田んぼでおきていることに常に気をかけ、草や病気など早い段階から見つけて対処しているのだといいます。
「とにかく除草が一番大変。1週間ほっとけばすごいことになっているよ」
減農薬減化学肥料栽培にするために、新しい資材に頼るのではなく、「やりがい」や「夢」など気持ちをエネルギーとして働ける若いスタッフを県内外を問わず募集して、積極的に水田に人が入り、それぞれが手作業をするーーー若い力が大いに活躍している田んぼです。
さらに肥料にもこだわりがあります。土を作るために堆肥を入れていくのですが、きのこの廃オガを発酵させて利用します。また今年は、リンゴを発酵させて作った堆肥を入れ「信州りんご米」の栽培にも挑戦しました。
隣接する加工施設で、奥さんと荻原さんの妹さんが自家製の小麦を使ってパンを焼く時に使う天然酵母からヒントを得たのだとか。もちろん、甘味があって粘りがあるおいしいお米になりました!
自分たちで考えてオリジナルの肥料を作り品質向上をめざすーー。
「それが農業のおもしろさじゃないかな、おもしろくなくちゃ意味がないでしょ?」
嫌々作っていないからおいしい
さらに、作る楽しみだけでなく、売る楽しみもあります。荻原さんは、首都圏を中心に直接店頭販売に積極的に取り組み、生の声でお米への思いを消費者に伝えています。
消費者の方から、鮮度を調べようとお米を発芽させてみたら、荻原さんのところのお米だけ芽を出したという声も聞こえたりします。お米屋さんも「荻原さんのところのお米をすすめておくのが一番安心」だと言ってくれました。
秋冬以降の米はすべてを低温倉庫にもみのまま保管し、今ずり米として年間販売します。年によって出来が多少違ったとしても「これがうちで出せる今年一番良い米、最善を尽くした米」と自信を持って提供しますと荻原さん。
自分が良いと思えるものを作り続けることが、彼にとっては「農業を楽しむこと」に結びつくのです。この徹底したこだわりは、今や全国的に広く認められるところとなっていて、平成18年には全日本空輸(ANA)国際線の機内食にも採用され、長野県産米の代表として提供されました。
また、長野県原産地呼称管理制度の認定、信州ブランドアワード2006入選など、名実ともに独自ブランドを確立してきました。
「まちがいなくおいしいお米なので、量を増やして安く売りたい。そのためにはやはり、めざせ100ha! めざせ10,000俵!です」「若い人たちががんばっています、応援してください!」
農業生産法人「信州ファームおぎはら」
〒389−0406 長野県東御市八重原723
TEL.0268−61−6111
FAX.0268−61−6112
email :
info@ac-ogihara.co.jp
信州ファームおぎはらのホームページ(現在鋭意制作中)
楽市工房(有)おぎはら(旧ホームページですが、こちらから注文もできます)