加工品

トウキビのあの自然な甘さをもう一度信州に

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味の記憶はタイムマシンのようなもの。子供のころに食べた甘いもので、自然な思い出の味はなにですか?

信州の中腹部に位置する松本市島内地区で、幼少期に口にした「そこはかとない甘さ」を追い求めて、「サトウキビ」という聞き及んだ名前だけを頼りに思い出の味らしきものを探し続け、2001年にはなんと沖縄から取り寄せた「サトウキビ(砂糖黍)」の栽培に長野県で挑戦したもののいまひとつ納得せず、あきらめかけていたところ今年、同じイネ科ながら別物の「サトウキビ」という同じ名を持つ「トウキビ」を育ててみて、念願の子ども時代に帰れる味との再会を果たした小沢光男さん(61)の畑にうかがい、お話しを聞くことができました。

小沢さんが幼少期に食べた思い出の味とは、イネ科の一年草の植物で、かつては信州松本平の地にも多く存在し、しばしば「トウキビ」「サトウキビ」「モロコシ」「タカキビ」などとも呼ばれ、中国では、かつては「蜀黍(しょくしゅ)」、今は「コウリャン(カオリャン)」と名づけられて、秋になると無数の赤い実をつける属名を「ソルガム」という作物のことだったのです。

toukibi.jpg畑はこんなにたのしい
小沢さんは自営業のかたわら、12年ほど前お客さんにすすめられ、興味のあった農業をはじめました。「はじめの2、3年は見よう見まねだよ」と笑いながら小沢さんは口を開きます。

しかし、今や小沢さんは年間で季節に合わせ、キュウリにトマト、野沢菜、松本一本ネギ、小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、などなど約50種類もの農産物を栽培するほどです。しかし今では「畑に出るのが楽しくてね。だって畑はこんなにも楽しいんだもの」というように、毎日畑に足を運んでいます。

小沢さんは、そのようにして毎年農作物を栽培しながら、いつかあの昔食べた思い出の「サトウキビ」を作ってみたいものだと考え続けたのでした。

「昔はこの松本平でもそれが沢山作られていてね。子供には最高のおやつだったんだよ」

沖縄からサトウキビの苗を購入し、挿し木をして試し栽培を開始したのが2001年のこと。「はじめの年は、驚くほどよく育ってね。ただ、2002年には天気の問題などでうまく育たなかったんだよ。味も確かに、甘さは似ていたのだけど、なにかもの足りなくてね。2003年には、作るのをやめてしまったんだ」

しかし、突然の吉報を目にしたのは今年の春でした。農業者のための雑誌である『現代農業』(農文協刊)を読んでいると、投稿欄から「昔なつかしいサトウキビの種子を無料で進呈します」という文字がいきなり小沢さんの目に飛び込んできたのです。「!」早速、手紙を書き岡山県の農家さんから「サトウキビ」とも「トウキビ」とも呼ばれてきたソルガムの種子を譲り受けました。

ozawasan_with_smile.jpgようやく出会えた念願の味
とるものもとりあえず自家菜園へ約600本ほど植えたそうです。「大きくなるのが楽しみだったね」と小沢さんはニッコリ。その後、「サ」のない「トウキビ」はスクスク育ち、今は見あげるほどに育っていて、その大きさは2メートルをゆうに越えています。

出来をたずねると「台風9号の影響で多くが倒れてしまってね。でも、順次刈り取って、味を確かめたときに『コレ』だと確信したよ」と小沢さんは、昔懐かしい味をかみ締めるように教えてくれました。

記者もいただくと確かに、しんをかじってみるとやさしくどこか懐かしい甘みが口いっぱいに広がります。なんでも「孫が喜んで食べているのが、うれしいね。きっと自然な甘さなのかな」と満足そうな小沢さんです。

管理は難しいのですかと聞くと「土を寄せて、草をたまに取るぐらいだよ」と教えてくれました。

小沢さんは、お店に来る方に「トウキビ」のおすそわけをします。するとそこで昔の思い出話に花が咲き、しかも大変喜ばれるのだそうです。また、地域の方々で育ててみたい方に種を譲りますと、声をかけたところ、松本市内だけで15人、近くの小学生からも学校で「育ててみたい」と声があがり、これまでに種を譲ったそうです。さらに、県外にまで声が届いて、新潟県や海を越えて九州の久留米の方にまで、これまで種を分けてきました。

小沢さんの思いと一緒に、着々と確実に「トウキビ」の輪が広がっているようです。

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トウキビを育てたくなりましたか?
「今は飽食の時代ですが、ぼくらは飢えを経験している世代。食べ物は本当に大切なものですよ。自分で作った農産物を食べることが出来ることは、嬉しいし、生きがいです。農業をはじめる人が増えるといいね」と小沢さん。

今回も小沢さんは「昔懐かしいトウキビを育ててみたいという方には種をお譲りしますよ」と話してくれました。今後は、食べるだけでなく、実を採り、束ねてホウキを作りたいと夢が広がります。昔は、これを原材料としてホウキも作られていたのですから。

これをお読みの方で、トウキビ(ソルガム)自家栽培に興味のある方は、当ブログ「長野県のおいしい食べ方事務局」まで、ハガキかFax、Eメールで、「小沢さんの懐かしいトウキビの種希望」と明記のうえ、郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号、当ブログマガジンの感想などそえてご連絡を。締め切りは、2007年11月28日(消印有効)です。

※数量に限りがあり、小沢さんのお宅にある種が終わり次第終了となりますので、配布は先着順とさせていただきます。

種が無くなってしまったため、配布は終了させて頂きました。

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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