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菊芋・太陽の根が土の中でこのイモになった

kikuimo_sunroots.jpgキクイモ(菊芋)はキク科ヒマワリ属の多年草植物で、最近では美容や健康面から注目を集めつつある食品です。原産地は北アメリカ大陸東部から中部にかけてで、土地のアメリカ・インディアンの人たちの重要な作物のひとつであり、彼らはこれを「太陽の恵み」と信じ「太陽の根 sun roots」と名づけていました。英語名は「エルサレム・アーティチョーク」といわれますが「エルサレム」の土地とも「アーティチョーク」という野菜とも関係ありません。

日本にはヨーロッパを経由して江戸時代から明治時代の頃にやってきたといわれています。はじめは飼料用作物として導入され、もっぱら家畜などの餌にしていたことから「豚いも」などとも呼ばれていましたが、ほおっておいても育つその生命力の強さから、戦時中の食糧難の時代には食用とされました。

キクイモは「天然のインシュリン」といわれる「イヌリン」という成分を豊富に含んでおり、このイヌリンは血糖値の異常によっておこる糖尿病などの病気の治療への応用が期待されている成分でもあることから、近年脚光を浴びるようになりました。ヨーロッパでは「21世紀の革命的食材」などといわれていたりします。

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晩秋の菊芋畑。太陽の根はこの下に
不思議な力を与えられた食材
キクイモは非常に丈夫で、繁殖力が強く、一度種芋を植えさえすれば翌年以降は、地中に残った芋のかけらから次々と芽を出すため、新たに芋を植えなおす必要がないほどで、それは生命力のかたまりのような食べ物なのです。寒さにも強く、無農薬でもどんどん育つため、安心な食材ともいえるでしょう。

キクイモという名は、秋に咲く花が菊に似ていることから付けられたと言われ、その丈は3〜4メートルほどにもなります。夏が終わって花が散ると、地中の塊茎が肥大し、芋になります。夏の太陽がそのまま地中にとどまったものと考えられたのも無理もありません。食料になるのはこの塊茎の部分で、アメリカ・インディアンの人たちはスープにいれたりしていました。キクイモの収穫はもっぱら寒さが増す11月の中旬〜下旬頃に行われます。

特産化が進む長野県
長野県内ではいくつかの土地でキクイモの特産化が進められていますが、そのひとつが今回取材に訪れた小県郡長和町にあるよだくぼ南部JAきくいも研究会です。地域の特産品づくりと遊休農地の解消を目指して、地元のJA信州うえだが呼びかけ、2005年に発足しました。現在のメンバーは32人。うち女性が20人ほどいて、年々、栽培面積は拡大しています。

毎年、11月の下旬に収穫祭を開いていて、地元の子どもたちを招待し、キクイモの収穫体験などを行っています。会長を務める樋口茂さん(73)によりますと、子どもたちが大人になったとき、思い出として話ができるような体験をさせてあげたくて企画したのだそうです。樋口さんのお子さんたちは、大人になった今でも子どものころに体験したうさぎ追いのことを懐かしく話すのだとか。

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キクイモを掘る樋口さん

樋口さんご自身は、血糖値が気になりはじめた15年ほど前から個人的にキクイモを栽培し、健康増進に役立ててきたそうです。漬物にしても、煮ても焼いても良いのですが、樋口さんがおすすめする料理は生で食べるサラダ。手間がかからず、簡単に作れるため継続して食べられます。

開発されるいろいろなレシピ
キクイモのエキスパートである樋口さんは、庭先でスライスした菊芋を自然乾燥させ、煎じて飲んだりもしています。菊芋はいまの時期と3月〜4月ころしか取れないので、そうやって一年中、摂取するための工夫をされているのです。

そこで早速、記者も生のキクイモを食べてみましたところ、食感はシャキシャキ、サクサクといった感じで、噛んだ後にほのかに芋の甘みが感じられました。また、クセが無く、確かに色々な料理に合いそうです。会ではこれまでに様々なキクイモ料理を考案しており、昨年の収穫祭ではキクイモを使ったすいとんが振る舞われ、好評だったそうです。

口当たりの良い焼酎にも
さらに会では今年、新たな挑戦としてキクイモの焼酎作りに取り組みました。4月に掘った芋を使い、佐久市の酒造会社に依頼して出来あがったのが写真の「きくいも焼酎『美しの雫』」です。

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視察に訪れた北安曇郡小谷村で作られていた菊芋焼酎に刺激を受けたのがきっかけで、樋口さん曰く、「一年目にしては想像以上に良い出来」だったとか。再び、早速、記者も一献いただいてみました。

うーむ、いわゆる一般の芋焼酎のような強い香りは全くありません。さっぱりとしていて、含むとキクイモの味が口の中に広がります。樋口さんによるとこの焼酎は特に女性の評判がよいとか。

「飲みやすさが女性に人気のある理由だと思います。乙種の焼酎であるという点にもこだわっているんですよ」

このキクイモ焼酎の「美しの雫」に興味があるという方は、JA信州うえだ生活部(電話:0268−23−4040)まで直接お問い合わせください。

この週末収穫祭にいらっしゃいませんか
きくいも研究会では今年も収穫祭を企画しています。収穫祭では、菊芋の親子収穫体験や菊芋を使ったオリジナル料理の試食会、「美しの雫」の試飲、菊芋の販売コーナーなどを設ける予定です。収穫体験や試食コーナーはいずれも無料で、どなたでもご参加いただけます。

長和町のご近所の方、週末に長和町の辺りを訪れる予定のある方、血糖値にすこし不安を感じている方、この機会に一度、キクイモを体験してみるのはいかが?

あわせて読みたい記事:

太陽の根キクイモの保存法と簡単なレシピ 長野県のおいしい食べ方 2009年1月

きくいも収穫祭・親子体験教室
日時:2007年11月25日(日)
時間:午前10時〜午後2時
場所:長和町活性化施設「蔵」
yahoo地図情報による周辺地図:マルメロの駅長門(道の駅)のすぐ隣です)
問い合わせ:JA信州うえだ よだくぼ南部統括支所
電話:0268−68−3141

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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