果物

クルミの里でクルミを育てて、60回目の秋

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高地から紅葉が少しずつ下りはじめています。中生種のリンゴも出回るなど、信州はいよいよ収穫の秋本番といった雰囲気です。

 

収穫の秋といえば、リンゴ、ナシ、ブドウなどばかりではありません。栗やクルミなどさまざまなナッツ類も、忘れることができない楽しみな旬の味のひとつです。さて、そのクルミですが、「信濃グルミはわが国最良」と古来いわれてきましたし、生産量でも長野県が全国1位です。

今回は、いま改めて注目を浴びているクルミのことを、長老生産者の花岡和次さん(72)のお話も交えて、みなさんにお伝えすることにしました。

信州にクルミの里があります
県東部の東御市のあるあたりは、「小県(ちいさがた)」という古い名前で『風林火山』にしばしば登場しますが、ここはまた"クルミの里"として知る人ぞ知る存在です。大正時代には同市の和地区(当時の和村)で、大正天皇の即位を記念して全戸にクルミの苗木が配られました。

こうした事業がその後の産地形成に大きな貢献をしたのでしょう。また、昭和30年代には現在の東御市を含む東信地方一帯のクルミから優良品種の選抜・育成が行われ、日本の栽培品種のほとんどが当地区で育ちました。

しかし、県のクルミ生産量は昭和49年に生産量1500トンを記録してからその後は減少に転じはじめます。elder_hanaoka.jpgそこで東御市(当時の小県郡東部町)では、先人たちが作り上げた産地を守ろうと10年ほど前から信州大学やJA信州うえだなどと連携し、クルミの生産振興に努めてきました。

クルミには可能性があります
最近では、クルミの栄養成分が美容や健康にいいと注目され、あちこちから注文や問い合わせがあり、また少しずつ生産量も増えてきています。最近では殻をむいたものもありますが、長期保存などのことを考えたら殻つきを、可能なら第一の選択にするべきでしょう。割れていたりヒビがあったり穴が開いているものは避けてください。すぐ食べてしまうのならむいたものも便利。そして細かくチョップして、ご家庭でさまざまな料理やサラダのトッピングにご利用ください。

kurumi_tree.jpgクルミの話を聞こう
クルミを育てるベテランである花岡和次さんは、清香(せいこう)、要鈴(ようれい)という品種を50アールの畑で35本育てています。だいたい1本当たり20〜30キログラムほどのクルミが収穫できるということで、年間600〜700キロほどを出荷しているそうです。

「子どもの頃から手伝っていたから、栽培暦は60年以上ですね」

と笑って話す花岡さん。そのお話にちょっと耳を傾けてみましょう。

「クルミはほかの果実に比べると、言葉は悪いですがある程度放っておいても育ちますので、収穫まではそれほど手間がかからないんです。ただし、怖いのは遅霜(おそじも)で、4〜5月の開花の時期に霜に当たると、その年はもう、ほとんど実が付かなくなってしまいます」

「2〜3年に一度、遅霜に当たると運が悪かったとあきらめるしかないんですね。昔は本当に大木と言えるくらいのクルミの木が多くあったのですが昭和32年の台風でそのほとんどが倒れてしまいました。その後も、クルミの木はアメリカシロヒトリがつく"公害の木"だと呼ばれ、クルミの木を見れば『切れ切れ』と言われたりもしました」

「まぁ、そういう声に反発して意地を張って切らずにいたのですが、そのときの意地が今の産地形成に少しは役立っているのかも知れませんね。クルミは植えてから出荷できるほど実が付くまでにだいたい10年くらいかかります。今、うちで盛んに実を付けているのは昭和61年に植えたものです」

「一般的にはクルミの木が実を付けるのは20年くらいだと言われているのですが、20年を過ぎても実を付けているので、私は30年くらいは大丈夫だと感じています。ただ、あまり木が大きくなりすぎると今度は管理が大変になってしまうんですけどね」

と、ここまでお話をお伺いしたところで、実際の収穫の場面を見せていただこうと、クルミ畑に移動しました。さて、みなさんはクルミの実がどのようになっているかご存知ですか?

クルミの実はどこ?
クルミがどんな様子で木になっているかに思いを馳せることは、まずもって普段なかなかないと思いますが、既に知っているという方はともかく、知らない方にとってはちょっと驚きですよ。

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そのなっている実の姿が上の写真。緑色の果物のような実が木についていますが、この緑色の中に、みなさんがよくご存知のクルミの殻が入っているのです。あの硬い殻をさらに果皮で包んでいるというのは、なかなか想像しづらい状態ですよね。

kurumi_treebeating.jpgさて、クルミの実の成る様子を見ていただいたところで、早速花岡さんに収穫の作業を見せていただきましょう。使用するのは長〜い棒です。

この棒を使って、クルミの木を「バシン、バシン」と叩きます。枝と棒がぶつかる乾いた音が畑に響くと「ゴロリ、ゴロリ」とクルミの実が勢いよく落ちてきます。

緑色の果皮が完全に割れて自然に落下することもあるのですが、花岡さんによるとそうして落下したクルミは色が少し悪いのだそうです。そのため、果皮が割れてきた頃合を見て、こうして木を叩く作業を行うのです。

写真ではなかなかわからないかもしれませんが、このクルミの木は本当に大きいのですよ! この大きな木をひたすら叩き続けるとなると、いやはやこれは大変な作業であります。

大変なのに愉しそう
続いては落ちた実を拾う作業。カゴを用意し、落ちているクルミの実を次々と拾いカゴに入れていきます。その際、緑色の果皮を剥がしていきますので、これまた大変な作業になります。

pickup_kurumi.jpg花岡さんは慣れた手つきでしゃがんだ姿勢のまま、次々とカゴに実を入れていきます。このとき、果皮がはがれない実もあるそうなのですが、そうした実は木の根元にしばらくの間、置いておくと自然とはがれるようになるのだとか。

続いて収穫した実を洗浄します。場所を移動し、クルミ洗い機のあるところに向かいます。クルミ洗い機の中には筒状のタワシが入っていて、クルミの実と水を投入し、タワシを回転させて洗います。およそ5分ほどで洗いあがった実は、葉や土が落ちて、すっかり身ぎれいになっていました。かつては手作業で洗浄を行っていたそうで、機械の導入で作業はずいぶん楽になったそうです。

そして、いよいよ作業も終盤、続いては乾燥です。

自然乾燥が一番良い
花岡さんは自宅隣のハウスで自然乾燥させていて、大量のクルミがずらりと並べられています。だいたい2〜3週間ほど乾燥させると出荷ができる状態になるそうです。

wallnuts2.jpg自然乾燥された実は春先に蒔いても芽が出るほど生命力があるのです。外国産などの多くは機械を使った強力乾燥をしているらしく、この方法だと長持ちはするものの、実が焼かれてしまい、生命力が奪われるために、春先に実を蒔いても芽は出ないのだと、花岡さんは教えてくれました。

こうして出荷の準備はほぼ整い、残すは選別の作業です。

ほとんどの方は選別機を使って行うのですが、花岡さんは700キロものクルミをひとつひとつ自分の手と目で見極めて選別していきます。花岡さんの奥さんは「気の遠くなる作業。わたしにはできない」とおっしゃいました。でも花岡さんは「楽しんでやっている」とあくまでもマイペース。

いくつも選別しているうちに出来の良いもの、悪いものははっきりと分かるそうです。疑問の残るものは割って食べてみて確認し、その感覚を次の選別に生かすのだとか。

「自分の作ったものと、買った人に対する責任がありますからね」と花岡さんは話してくれました。

クルミの里のクルミ祭り
東御市では、昨年から市内の道の駅「雷電くるみの里」で、くるみ祭りを開催しています。今年(2007年)は11月16日(金)〜11月18日(日)の日程で開かれ、今年とれたクルミの販売や殻つきクルミのプレゼント(数量限定)のほか、クルミおはぎの試食(数量限定)も行われます。

また、祭りではクルミの品評会も開催され、昨年の品評会では花岡さんのクルミが最優秀の東御市長賞に輝きました。今月末〜来月上旬くらいから、この「雷電くるみの里」のほかJA信州うえだの農産物直売所「直売センター東部店」(yahoo!地図)や、東御市の絶景温泉施設「湯楽里館(ゆらりかん)」でも、クルミが販売されます。もっとクルミについて知りたい方は下記のクルミ博物館のウェブサイトがとても詳しいのでおすすめですよ。    

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 クルミ博物館

  

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雷電くるみの里

JA信州うえだ直売センター東部店
住所:長野県東御市鞍掛39‐2
電話:0268‐64‐3153

あわせて読みたい:

えええっ、このクルミ、殻が手で割れるの?(長野県のおいしい食べ方 2010年11月)


 

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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