クルミはおいしいだけでなく、生活習慣病の改善や、美肌・美髪促進効果があるなど、健康や美容面でも注目されています。
国内で流通している99%以上のクルミが外国産。国産クルミは非常に貴重です。長野県東御(とうみ)市は古くからクルミの栽培が盛んで、全国一の栽培面積を誇ります。
今回は東御市のクルミを紹介します。
東御市でクルミ栽培が盛んな理由
東御市が運営している「サンファームとうみ」を訪れました。
ここではクルミの遺伝資源(品種等)の保存と展示、クルミの品種改良と栽培技術の開発、新規就農者の研修の場としての活用、クルミ生産者への苗木の供給と営農指導を行っています。
展示園にある看板。約2haの農地に150本(約50品種)ほどのクルミの木が植えられています
樹齢50年ほどのクルミの木
サンファームとうみの平井尚之(ひらい・たかゆき)技術指導員にお話をうかがいました。平井さんは長野県庁や(一社)長野県原種センターで40年ほど農業技術者として勤務し、退職後、サンファームとうみでクルミの研究をして7年目になります。
「この地のクルミ栽培の始まりは、大正4年に大正天皇即位記念としてクルミ苗木を全戸に配布したことでした。日射量が多く降水量が少ない気候と水はけのよい土地がクルミ栽培に適しており、栽培が盛んになりました」
それ以降、地元の人から長くクルミは愛されてきました。
しかし、全国的に需要は伸びているにもかかわらず、生産量は昭和49~55年の2000~2400tをピークに減少し、令和4年度は80t程度と推定されています。
生産量が減少した理由は、クルミ農家の減少です。
「去年は春先の凍霜害の被害を受けてクルミが不作でした。年によって収穫量が大きく異なることがあるので、専業農家が育たないという課題があります」
収量の不安定さは、クルミの木は放っておいても実をつけるため、栽培方法があまり確立されてこなかったことが原因のひとつでした。
現在では、東御市のクルミ生産者等で組織する「日本くるみ会議」で栽培の手引きを作成して東御市産クルミの生産拡大と、さらなるブランド化を目指しています。
信濃くるみは一度食べたらやみつきになります
東御市では、皮が薄くて割りやすく、コクがあり香ばしく風味豊かな実がたくさん入っている「信濃くるみ」という品種が主に栽培されています。「信濃くるみ」は「かしくるみ」や「ペルシャくるみ」を親として自然交配を繰り返して誕生しました。
「信濃くるみは丸みのある形をしています。また、日本原産のオニグルミと違ってクルミ同士をたたくと殻が簡単に割れます」
信濃くるみ
オニグルミの血を引く「テモミグルミ」と比べると見た目の違いがよくわかります。
テモミグルミ。ゴツゴツしていて殻が厚い
例年、くるみは9月下旬から10月頭に収穫し、11月上旬まで天日干しで乾燥し、11月下旬から出荷されます。収穫後、乾燥させることで虫がつきづらく、長期保存できるようになったり、薄皮の苦みが減って香ばしくなります。
ビニールハウスの中で天日干しします
「輸入クルミは火力乾燥させていて、ほとんど剥きぐるみなので風味が損なわれています。ここのクルミを食べてみてください」
割りたてのクルミを食べさせてもらうと香り豊かでびっくりしました。嚙むごとにクルミのコクが甘味に変わって「これまで食べてきたクルミとは全然違う!」と強く感じました。
「市場流通量はごくわずかなので、食べたくなったら東御市の道の駅などで探してくださいね」
東御市はワインの生産も盛んです。クルミを食べに東御市にお越しください。