みなさんは、どのようなお正月を過ごされましたか? 初日の出を見た方、美味しい御節をたくさん食べた方、寝正月を送られた方、正月は......よかったな〜。当方はモチロン、おいしいお餅をたらふく食べて、よいスタートがきれました。これもみなさまのおかげです。で、そんなわたしのを含め(?)て、正月にずっと働き続けだったわたしたちの「胃袋」を、このあたりでひとつ休めてあげませんか。ということで、今回は、消化酵素がたくさん含まれ、胸焼け、胃もたれ、二日酔いなどに効果的な根菜類の代名詞「大根」を紹介させてください。
大根と言えば、ビタミンCも豊富で、風邪の予防になり、辛味成分には血栓やガンの予防効果まであるそうですよ。大昔から日本列島に暮らす人たちの食事には欠かせなかった野菜のひとつですよね。そうそう、今思い出すと祖母が「もちの食べすぎには大根をお食べ」とやさしく教えてくれたのを思い出します。
今回紹介する大根は、ただの大根ではありません。県内各地に昔から伝わるたくさんの「信州地大根」のひとつ、長野県の北東部に位置する上田市山口地区で約400年前、そう江戸時代から栽培されてきた「山口大根」です!!
絶滅危惧大根を守ろう!
昭和10年代に最も盛んに作られ、一時期は野沢菜と並んで信州を代表する野菜でしたが、戦後の食料政策や同地区のりんごの転作が進むにつれて、生産者は減り、次第に姿を消していきました。
しかし、この伝統野菜は同地区の農家ひとりを中心に数名で、その種を絶やすことなく現代に伝えられてきました。そして2003年、「これだけ優秀な大根があるのだから、種を守らなくては」と山口大根の生産者のひとり、福澤恵(ふくざわめぐみ)さんを会長に「山口大根の会」が発足。さらに、地域住民や長野大学の学生や協力団体、消費者グループ、行政が一体となって山口大根を守る活動が展開されていきました。
とにかく食感が抜群の大根
特徴はなんといっても、15〜20cmと短く、お尻がぷっくりと膨らんだ形。成分分析ではビタミンCが多く含まれていることが分かっています。さらに、水分が非常に少なく、適度な辛味と甘さがあるので、漬物に最適で、漬物にしたときの歯切れのよい食感は、大根の中でも抜群です。
「あったものは山口大根の本来の形にはほど遠いもので、活動は優れた形状のみ選抜を行い、種取りからはじまりました」
福澤会長は当時を振り返ります。栽培ははじめ同地区の農家さんだけでしたが、その輪はやがて広がり、2006年には自治会などにも声をかけ、遊休地を利用して、農業をしたことのない地域住民の方も栽培に取り組みました。
「今まで、農業をした事をない方々が興味を持って、栽培が楽しいと言ってくれたことがうれしかった」と福澤会長は顔をほころばせます。
山口大根は地域の宝
山口大根は、病気に弱くて、気温に敏感で、決して作りやすい大根ではないといわれます。「昨年度は大きくなりすぎて、中が空洞になってしまったものも多かった」と福澤会長の苦労話は続きます。「今年は、昨年20a作付けした中から400本程度理想的な大根を選抜し、さらに形状の統一を目指したい」と今年にかける意欲も。
現在、商店街での消費宣伝イベントや漬物料理教室、地域に種を配布するなどして山口大根は着々と認知度を広げているようです。
PR活動には、長野大学古田ゼミの学生さんも担当しています。もともと、学生が自主的に山口大根生産者の農家さんへボランティアへ行ったことがきっかけでした。
パンフレットを作成・配布したり、イベントで自ら考えたレシピを披露したり、自ら大根栽培も行っています。ひとりひとりが地域の伝統野菜復活に向け大きな役割を果たしているのです。
山口大根を栽培したひとりの郷津一輝(ごうつかずき)君は「なにげなく食べている大根ですが、一本育てることの大変さを知りました。地域の伝統野菜をもっとたくさんの人に知ってほしい」と笑顔で話します。
顧問の古田睦美(ふるたむつみ)助教授は「地域の食文化は、地域づくりの基本になるもの。山口大根は地域の宝。生徒には地域を知ってもらい、地元に誇りを持ってもらいたい」と語ってくれました。
山口大根の見るつぎの夢
福澤会長のは「ようやく、地域全体が一体となって活動が展開され、種の保存にめどがついてきたことを実感してきました」と思いを込めて話します。また、今後の展望について「山口大根をきっかけに、地域の活性化や就農者を増やしたい」と抱負を話してくれました。山口大根復活の夢をかけた、山口大根プロジェクトはまだまだはじまったばかり。
新年会続きのお父さんには、大根おろしのしぼり汁にはちみつを加えたものがオススメです。大根には冒頭でご紹介したビタミンCが多く含まれているため、二日酔いで弱った肝臓や胃腸の働きを高め、不快感、食欲不振を助けてくれるのです。今日の料理に大根料理を一品添えてみて、胃を元気にして、明日も張り切ってまいりましょう。この記事で紹介した山口大根は、上信越自動車道の上田・菅平インターすぐのところにあるJA信州うえだ直販センター上田食彩館ゆとりの里内で、「幻の大根」として残りわずかですがまだ販売されています。
JA信州うえだ直販センター
住所:上田市住吉357番地1
電話:0268−26−1050
営業時間:9時〜18時
休業日:年中無休(年末年始除く)