肉厚で中華料理に欠かせないチンゲンサイは、1972年(昭和47年)に中国との国交が再開された頃に中国から野菜の苗が導入されて、以後30年ほどですっかり日本に定着した中国華南地方の野菜です。導入当時は、野菜の生産量が需要に対して飽和状態であり、野菜の消費拡大には新しい品目の開発が課題となっていたために、「中国野菜」として華々しく宣伝されました。導入当初は、中国各地での呼び名や日本名である「タイサイ(体菜)」や「中国白菜(パクチョイ)」をそのまま使っていたのですが、用語の混乱を正すために、葉柄が緑色のものをチンゲンサイ(青梗菜)、白色のものをパクチョイ(小白菜)と呼ぶように統一されました。英語名は「チャイニーズ・キャベッジ」ともいわれますが、これも混乱を招く名前なので、最近では「Qing-geng-cai」と表記され「クゥィン・ゲン・サイ」と発音されるようになりました。
シルクロードで中国へ伝来した万能野菜
チンゲンサイはフウチョウソウ目アブラナ科アブラナ属の植物で、原産地は地中海沿岸から中東の高原にかけての亜寒帯冬雨気候地帯と推定されます。それがシルクロードを経て中国に伝わり、さまざまな栽培用の品種に分化しました。
基部(尻)が張り、胴がくびれているものが良いとされ、肉厚で煮くずれしないために、炒めものから煮もの、漬けものと用途も広くて、万能野菜と言われています。栄養は、カリウムやカルシウムのミネラル類や、ベータ・カロチンやビタミンK・Cなどが多く、ビタミンAの効力が大きい緑黄色野菜です。カロチンは茹でたり炒めると急増する性質がありますから、料理では湯を通したり、油で炒めると一層鮮やかな色合いにもなります。中華料理をはじめ、おひたし、汁の実等どんな料理にもあう野菜です。
夏場のチンゲンサイは長野県がいい
長野県内では昭和50年頃からチンゲンサイの栽培がはじまりました。平成4年には作付け面積で267ha、販売量で6,024tにまで伸びましたが、栽培期間が短くて、一年を通して栽培が可能なことから、全国各地で作られるようになり、平成16年には作付け面積で130ha、出荷量で2,390tとなっています。日本における主な産地は茨城、静岡、愛知、群馬、埼玉、長野。県内では、南牧村、小諸市、御代田町、川上村、塩尻市、軽井沢町が主産地となっています。
特にこれからの夏場は、成長が早くて、葉と葉の間(節間)が伸びてしまう節間伸長という現象が起きるため、冷涼な高原で生育する長野産のニーズが高まります。チンゲンサイは作りやすい野菜のひとつですが、家庭菜園やプランターで栽培する場合は、園芸用培土のようなフカフカで栄養分の豊富な土で栽培すると、この節間伸長を起こしてしまいます。普通の土に堆肥などを混ぜ、緩やかな肥効で栽培すると尻張り・胴くびれのチンゲンサイになるそうです。
おいしいときにたくさん食べよう
軽井沢町古宿の荻原俊一さん・千津子さん夫婦(写真左)は、中国野菜の苗が導入された頃からチンゲンサイの栽培に取り組みました。レタスやキャベツとともに、5月から11月始めまでチンゲンサイの出荷をします。減農薬栽培と有機肥料による栽培に取り組み、安全・安心な野菜づくりを心かげています。
「この時期のものが一番味が良い」と荻原さんが話すように、収穫したてのチンゲンサイはみずみずしくて株もしっかりしています。軽井沢の風土が、とても栽培に適しているのです。荻原さんは年間10,000〜15,000ケース(1ケース3kg)を、主に関西方面に出荷します。最近はFGフィルムという水滴がつかずに鮮度保持に効果を発揮する特別な青果物用ポリ袋に入れ、そのまま店頭に並ぶ出荷方法(写真右下)にも取り組んでいます。
千津子さんおすすめのチンゲンサイの食べ方は、漬けもの。刻んだチンゲンサイを市販の浅漬けの素につけるだけで、とても美味しく、たくさんいただけるとか。ぜひお試しください。