さわやかな季節。よく晴れた空の下、新緑の中を散策しながら、採れたての高原野菜をふんだんに使ったサラダを今日はランチのメニューに入れてみようかな・・・なーんてことを考えてはみたものの、今年の5月はチョット様子が違います。なにしろ毎朝の天気予報を見てもイマイチな感じ。早々梅雨の走り(?)のような空模様が広がって、スッキリとした晴れ空が恋しくなりそうです。と、いつまでもグチこぼしていてもしょうがありません。今週は満を持して、ともすれば「サラダという名のもとにひとくくりにされる葉菜」(モンテーニュ・16世紀のフランスの哲学者)の代表であり、わがサラダ王国長野県高原野菜の王様である『レタス』に登場を願いましょう。しとしと入梅なんて、まだまだ先の話、ここはひとつこのレタスパワーで雨雲も飛ばしてしまうことにします。
ウェルカム・トゥ・ザ・レタスワールド!
誰もが見慣れたレタス。食べ慣れているレタス。でもひょっとしたらそんなレタスにも、あなたの知らない世界があるかもというわけで、ウェルカム・トゥ・ザ・レタスワールド! これからいっしょにその世界を探索してみることにしましょう。用意はいいですか? タイムマシーンのシートベルトをおしめください。
人類がレタスを愛する理由
レタスはキク科の1〜2年生の植物。原産地は地中海沿岸から中近東地帯です。実はレタスは人間が利用した食料の中でも最も古い野菜とされます。紀元前4000年頃のモノとされているエジプトの古代遺跡の壁画には、レタスと思われるレリーフが発見されていることからも、それはうかがい知ることができます。アレクサンダー大王によってギリシャに伝えられ、その後ローマ帝国の全域に広まりました。古代に「レタスを最も好んで食べていたのはローマ人だ」と言われます。現在のレタスの種類に結球しない「ロメインレタス」がありますが、これは文字通り「ローマ人のレタス」を意味するのです。
ローマ人ははじめのころサラダを食事の最後にしめとして食べていたのですが、1世紀の終わりになにがあったのか順序が逆転して、食欲増進のために食事の最初に取られるようになりました。現在、たくさんの種類に多様化してきているレタスは、このころに分化されてきたという説があるのも、「ローマ人のレタス好き」というところからきているのです。
古くから西国で食べられてきたレタスが、いつ頃日本列島に来たかといえば、あれは大和朝廷の頃、もしくは平安朝の初期。はるか遠くの地中海沿岸あたりを旅だったレタスは、しだいに西アジアを経て太陽の昇る東方へ東方へと移動して、やがて中国に不結球性のレタスを定着させます。ここで、カキチシャと茎レタスとに分かれて茎レタスが中国の固有品種に、カキチシャタイプが、「チサ」という名前で日本列島に入りしばらくは薬として利用されたのがわが国でのルーツになります。『食物和漢本草』という書物にチサの薬効として「京童の戯れに銭を苣(チサ)の葉に包み噛み割るに歯痛まず、銭欠くるなり」とあります。またおもしろいことに西洋でも東洋でも、この苣の実を煎じて服用すると初産婦の乳のしこりを和らげるのに奇効があるともいわれたようです。
その後時代は一気に移り明治の世となった頃、ざんぎり頭で文明開化の波に乗って、異国の野菜種子が導入されることとなり、サラダナ等が試作されるようになりました。そしてまた時代は大きく移って第二次世界大戦後、敗戦の結果を受けて食生活が洋風化するとともに、レタスの消費量もうなぎのぼりに増えていき、昭和30年代後半になると野菜の主力品目にまで成長することになったのです。
サラダの国のレタスの季節
一言で「レタス」といっても、一種類ではありません。色々な仲間がいます。長野県で生産されている主な種類だけでも、いわゆる玉レタスの他にサニーレタス、グリーンリーフレタス、ロメインレタス、フリルレタス等々があるのです。
レタスはかなり気温にデリケートな野菜。このクールビズが進んでいる世の中で、レタスのお好みの温度は15〜20℃だとのこと。気温が高いとレタスは苦くなります。だから、高原の冷涼な気候を活かして栽培される長野県のシェアが全国1位なのです。標高差(350〜1500m)の中で、4月中旬から11月中旬まで栽培される信州のレタスは、まさにこれからの6月からがピークを迎えて、秋風が吹く9月までが最盛期になります。
長野県のレタス農家では、新鮮なまま全国の皆さんの食卓にお届けできるよう、早朝の太陽が昇る前の暗いうちから収穫したものを、鮮度保ちながら保管・輸送して届けるのです。こう聞いただけでもシャキシャキしたレタスの歯応えが口の中いっぱいに蘇るようではありませんか。
なぜレタスを食べるのか
食べ方はサラダはモチロンのこと、軽く炒めたりスープや味噌汁の具に使うこともOK。サニーレタスは手巻き寿司や焼肉を包んで食べてもとても美味しくいただけます。近年ロメインレタスを使ったシーザーサラダがアメリカで大流行との情報も以前からキャッチされています。機能性成分も食物繊維などタップリなので、いろいろな食べ方を試してみるのも良いでしょう。
カットした生のレタス1カップあたりの栄養価
- カロリー 9
- 食物繊維 1.3
- プロテイン 1g
- 炭水化物 1.34g
- ビタミンA 1456IU
- ビタミンC 13.44
- カルシウム 20.16
- 鉄分 0.62
- カリウム 162.4mg
正しいレタスの扱い方
食べる直前に冷たい水で洗い、清潔なふきんで水気を拭き取ります。あらゆるサラダのベースにお使いください。くたびれ加減の葉は氷水にしばらく浸すと元気になります。あらかじめカットされたレタスよりも、食べる直前にカットしたものの方がおいしいです。いたんだ葉をいつまでもつけたままだと全体のビタミンCが破壊されてしまいます。お好みのドレッシングは食べるときに振りかけるようにしましょう。
今年の長野県のレタスは?
今年のレタスは作柄も概ね順調な様子。毎年心配される霜の害もなかったので、産地も一安心のようです。低温傾向の影響は若干あるものの、適度な雨と涼しい気候が、これから瑞々しいレタスをつきつぎと運んでくれることでしょう。
よし、決めました! 今日のランチは、やっぱり盛りだくさんのレタスとトマトにパプリカ、キュウリやそれからエート・・・とにかくサラダを食べなくては!!