開花を待つ森のアンズ(2020年3月13日)
記録的な暖冬が明けようとしています。 「あんずの里」として日本一の栽培面積を誇る千曲市森・倉科地区。JAながの・ちくまあんず部会の西村芳春さんは「畑に雪のないまま3月を迎えるのは70年余の人生で初めて」と驚きを隠せません。 雪のない分、地温の上がりは早くなり、木の生長も早まります。
アンズの開花で地区がにぎわう「あんずまつり」は例年なら4月1日からですが、今年(2020年)は開花が早まりそうです(「あんずまつり」は新型コロナウイルスなどに伴い中止)。 この時期、農家が心配するのが遅霜です。 アンズがこの被害に遭うと、花が枯死して実が付かなくなったり、枝が傷めつけられることによってせっかく成った実が落ちてしまいます。 森地区に住む西村さんはここ数年、毎年のように霜害に見舞われ、特に昨年は「ひどかった」と振り返ります。 「5月末にテレビが取材に来ましたが、青々と葉は茂っているものの、実を見つけることができないほどでした」。 暖冬開けの今年、その二の舞になるのでは、と西村さんは心配しています。
対策は、(1)燃焼剤を燃やして木の周りの温度を上げて氷点下になるのを防ぐ、(2)防霜資材を散布して低温被害から実を守る、などの方法があります。 燃焼剤は、さまざまなものが用いられてきました。野焼きが厳しく規制されるようになった現在では、専用の資材が使われています。気温が下がり、明け方、氷点下になりそうと予想される場合、午前2、3時頃に起きだして畑で焚きます。 防霜資材は、氷点下が予想される日の1日前に散布しておく必要があります。1週間前にまいたから、といって安心できるわけではありません。「前日に翌朝の気温を読みきれるかが勝負」と西村さん。燃焼剤より予測のハードルは高くなります。 こうして細心の注意を払って凍霜害の危険を避けても、収穫直前、6月前後の干ばつの心配が残ります。実の生長期に水が不足すると、玉伸びが悪く、小粒の実になってしまうのです。 今年のように冬場の積雪が少ない年は、特に心配されます。
古い木を切り、新たに植え直したアンズの前で語るJAながの・ちくまあんず部会前会長の西村芳春さん
西村さんは、電機メーカーのサラリーマンとして60歳の定年まで勤めた後、父の後を継いで就農しました。継承前はリンゴも手掛けていましたが「手に負えない」と祖父の代から栽培していたアンズに集中しました。 「JAに相談に行ったら、森地区ならアンズだろう、と勧められました」と笑う西村さん。ただし「アンズは(リンゴに比べて)収穫が早いが苦労も多い」と打ち明けます。 古い品種を需要に合わせて植え替え、新陳代謝も図っています。 江戸時代、四国・宇和島藩から輿入れした姫君がもたらしたと伝えられるこの地区のアンズ。気候変動を乗り越えて受け継ぐことができるのか。空模様をにらみながら目前の作業手順を練る西村さんです。
こちらは 2020.03.17 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
昭和人Ⅱ
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