野菜

辛くてうまい!甘くてうまい!ねずみの形の大根です

ねずみ大根

「身にしみて 大根からし 秋の風 はせを」
こちらは、埴科郡坂城町中之条の西念寺入口にある松尾芭蕉(更科紀行より)の句碑です。江戸時代の俳人・松尾芭蕉(1644〜1694)が、坂木宿のご本陣で「中之条大根」(辛味大根)のしぼり汁をつけ汁とした「おしぼりうどん」を食した時のことをよんだものだとか。
今回は、そんな「中之条大根」の進化系とも言われる「ねずみ大根」(信州の伝統野菜)のお話です。

地元で愛されて数世紀

ねずみ大根

坂城町にあるねずみ大根畑

「大根の里」とも呼ばれていた坂城町には、もともと深みのある辛さが特徴の「中之条大根」が栽培されていました。先に出てきた西念寺の本堂の向拝に大根の彫り物があることからも、地域に根付いた地大根だったのでしょう。
その後、品種改良をかさね、ふっくら丸形のお尻にひょろっと細長い根がねずみそっくりで、あまもっくらとした味わい(=辛みの後のほのかな甘み)が魅力の「ねずみ大根」が誕生したのも、これまた古の話・・・。

ねずみ大根

西念寺前の松尾芭蕉の句

ねずみ大根

本堂向拝の大根の彫り物

やってきたのは、「坂城町ねずみ大根振興協議会」の畑。同協議会メンバーが、地域固有のねずみ大根本来の品種を守り、特産品としてもっと育てたい、との想いから、耕作放棄地40aで栽培をはじめたそう。教えてくれたのは小宮山和衛さん。エレクトロニクス系の商社勤務を終え、現在は農業委員やボランティアで能楽教室の事務局をしながら、ねずみ大根80aと長ねぎ(ホワイトスター)0.5aを生産しています。地元の小・中学校の給食センターへ食材提供も行うなど、ねずみ大根愛はもとより、地元愛にあふれた方。

ねずみ大根

収穫したねずみ大根を抱える小宮山さん

「スポッ」がクセになる収穫体験

ねずみ大根

葉の大きさなどから収穫のタイミングをはかる

早速、収穫♪ 京菜のようなギザギザと鮮やかなグリーンが特徴の大きな葉と、土からほんの少し覗いた肩の大きさを頼りに収穫時期を見極めるそうですが、その大・小は抜いてみないと分からないのだとか。「それもまた神秘的でいいでしょ☆」と笑う小宮山さん。葉の根元をまとめてつかみ一気に抜くと・・・、スポッと思いのほか簡単に抜けました。癖になりそう・・・。「地元の保育園児も収穫体験にやってきて楽しそうに抜いていくよ」と小宮山さん。子どもたちも大喜びのようです。

ねずみ大根

しもぶくれに尻尾のような根もかわいい

幾つか抜いていくと大・小様々なねずみ大根が並びます。購入者の用途や好みも様々なので、結果オーライ♪ 大きなものはすりおろして使うおしぼりうどん・天ぷら等に、小さなものは丸ごと漬物に、とどちらも人気だそう。まずはとれたてを試食☆ ザックザックと皮をむくと中から、真っ白で、しかも普通の大根より透明感がなく白が濃い! 大根が現れました。辛いのか? と恐るおそる、でも思い切ってかじると・・・。辛くない!! どころか甘~い!! と驚いた表情の編集部員に、「すりおろしたら辛いよ~」と小宮山さん。この甘さと固くしまった実に、味がぎゅぅ~っと詰まった「あまもっくら」な味のヒミツを発見しました♪

ねずみ大根

水分が少なく、実がしまって白さが濃い

「雨の少ない気候と扇状地で小石交じりの土が、ねずみ大根の栽培に適しているんだよ。他の土地ではこの味が出ないから、たくさんの人に食べてほしいね」。今年の出来栄えに満足そうな小宮山さんでした。

地元から県外へ、人気じわじわ

ねずみ大根

10月下旬頃に収穫を迎えるねずみ大根。一連の流れは下記の通りです。

●8月上旬:
草刈り・耕うん
●8月下旬~9月上旬:
天気予報をチェックし、軽く雨が降る日の前日に耕うんを行いシーダーテープ(等間隔に種が入っている専用テープ)で種まき
●10月下旬~12月上旬:
収穫(旬は11~12月)。冷蔵庫など保存状態がよければ春まで貯蔵可能

今年は坂城町の30戸で栽培され、合計約4.5ha作付け、約60tの収穫量が見込まれています。関東方面の飲食店や県内の市場・飲食店に出荷される他、地元のJAながのちくま北部アグリサポートセンターやA・コープびんぐし店、地場産直売所あいさいなどでも販売されています。

ねずみ大根

すりおろしは辛くてうまい!
揚げたても甘くてうまい!

取材当日、JAながの女性部ちくま地区坂城支部の皆さんが、とれたてのねずみ大根と地粉の手打ちうどんで郷土料理の「おしぼりうどん」を用意してくれました。そこにはねずみ大根の天ぷらまで♪

ねずみ大根

まず、主役のねずみ大根です。栄養成分も辛みも皮付近に多いため、できるだけ皮を残してすりおろします。怒りながら=力いっぱい強くおろすと辛みが増す・・・、なぁんて話もありますよ。ちなみに、尻尾付近のほうが更に辛いそう。布巾でしぼった汁に少量のしぼった大根を混ぜてつけ汁の完成です。

ねずみ大根

おしぼり用に絞る

ねずみ大根

布巾で絞った大根を少し汁にまぜるのがポイント

ねずみ大根

地粉で手打ちうどんを打つ西澤さん

さっそく釜揚げうどんをつけ汁オンリーで一口・・・。辛み好きな編集部員は、「辛いけどさっぱりしておいしい~。確かに甘さも。想像よりは辛くなかったなぁ」と続けてもう一口いただきましたが、そのお隣では、あまりの辛さにむせる人、顔を真っ赤にしている人なども・・・。最初の一口には十分ご注意くださいね♪ そこに味噌・刻みネギ・刻み胡桃・おかかといった薬味を加え、その人その人の好みの味を作り上げていくのも楽しみの一つ☆ なんと味噌を入れれば入れるほど辛さが和らぐそうです。個人的には、みじん切りの胡桃が香ばしくて美味っ! ねずみ大根との相性も抜群でした。おかかを除けば、ベジタリアンが多い海外の方にもうってつけ、最近人気なんだそう。「一口目はつ~んとくるけど、これがやみつきに。風邪もひかないで元気に過ごせる」と笑う成澤さんの笑顔にもほっこり。

ねずみ大根

おしぼりうどんセット。味噌・ネギ・おかか・胡桃を添えて

楽しんで作って、楽しんで食べる。これが一番!

次に、初めて食べるねずみ大根の天ぷら。少し大きめの拍子切りにしたねずみ大根をかき揚げの要領で揚げていきます。アツアツを頬張ると、(アレ? 大根じゃない? お芋みたい・・・)生で食べた時とまったく異なるほっくほくの食感で、甘さも倍増しているではありませんか! ねずみ大根は、水分が少なく身がしまっているので天ぷらにもピッタリ☆ まさに衝撃的なおいしさっ! これはやみつきです♪

ねずみ大根

ねずみ大根とブナシメジの天ぷら。ねずみ大根の葉を添えて

「地元保育園の子どもたちも収穫体験に来ては、楽しんでおいしいって言ってくれる。これが一番」と小宮山さん。「地のものを作って、とって、食べる。これが基本(大事)」と西澤さん。地元で愛され続ける古くて新しいねずみ大根、皆さんもこの冬いかがですか?

JAながの

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

この記事を書いた人

まちゃ

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