「好みの問題ですが、ぽよんとした水風船のような弾力のものが好き」と話す生産者の南智尋さん。さて一体何をつくっている方なのでしょうか???
こたえは「プルーン」でした♪
飴色は完熟の証。早生の「アーリーリーバー」
ちなみにこちらは、極早生品種の「アーリーリバー」(取材は2017年8月1日)。割ってみると、飴色の果肉がつやつや輝いているのがよく分かります。夏の日差しをたっぷり受けて育つプルーンは、完熟前にはさわやかな酸味とシャキッとした歯ごたえを、完熟後には柔らかな食感とジューシーな甘味を楽しむことができるんです。
人気品種発祥の地・長野市若穂へ
今回ご紹介するのは、食べればハマル☆ 人気沸騰中 の「プルーン」。やってきたのは、県北部に位置する長野市若穂。プルーン生産量全国1位を誇る長野県でも生産量が多い産地、JAグリーン長野管内にあります。同JAのある善光寺平は雨が少ない地域でもあり、「大の雨嫌い」とも言われるプルーンの栽培にピッタリ!
この地で農業を営む南さん。もともと飲食業に就いていた南さんが「旨いものをつくる」ことにこだわり たどり着いたのは、就農への道でした。きっかけの一つには、奥様のご実家での農業体験もあったそう。現在、就農4年目でプルーン7品種・ブドウ6品種を栽培する南さんのプルーン畑で、収穫や摘果などを体験させていただきました。品種の違いや収穫のタイミング、食べ頃の見極め方など、いろいろ聞いちゃいます♪
畑に足を踏み入れると、ふんわりあま~い香りが漂っています。
就農4年目の南さん。プルーン7品種とぶどう4品種を栽培
経験値がものを言う収穫のタイミング
まず、収穫の目安から。「ヘタ(軸)の色の変化も一つ、ヘタ周辺のしわの寄り具合も一つ。でも、どれもコレッと言う決め手ではない、やっぱり経験値がものを言う」と南さん。(難しい...)
続いて、「ブルーム(果皮表面の白い粉)*1越しに見える果皮の色もポイント」。(皮の色? 見えませんけど???)とハテナマーク全開の編集部員に、特別にブルームを落として皮の色を見せてくださいました。おぉっ~、比べてみれば一目瞭然☆ 収穫期を迎えた左側の果実は"黒味を帯びた濃い紫色"、右は収穫にはまだ早く、ちょっと固そうな"赤みがかった紫色"の果実・・・。「これも慣れが大きいかな」とさらりと南さん。(スゴイです!!)
左が収穫時。まだ少し赤みを帯びている右は収穫までもう少し
早速、完熟の「アーリーリバー」をいただきます♪ かぶりつくと、少しとろりとするほどの柔らか食感!! 果肉は完全につやっつやの飴色です。「柔らかっ、あっま~!!」とつい叫んでしまうほど...。その中でもプルーンならでは、ほのかな酸味も感じられ、口当たりは意外とさっぱりしています。
完熟のアーリーリバー。果肉が飴色
まだ少し早いサンタス。果肉の色もまだ黄色っぽい
次に「こちらは少し早いけど、食べ比べて」といただいたのは、「サンタス」。果肉の固さや割った際の黄色みがかった果肉の色が、先ほどのものと全然違います。今年は春先に続いた低温の影響から、1週間から10日ほど収穫が遅れたそうです。こちらも種に気をつけながらがぶり!(おっ~、こちらは果肉がしっかりしていて歯ごたえがいい!)「酸味がつよめだけど、そこが好きかも~」と編集部員個人としては、少し固めのしっかりした歯ごたえと"酸味>甘み"が、ドンピシャ好みの品種でした。
もぎたてサンタス
畑で見つけた不思議な光景
色がのってきた「くらしま早生」。収穫は8月中下旬
ふと、隣の木を見ると、ようやく少し色がのってきた「くらしま早生」や、まだまだ青い(緑色)のプルーンの木が。同じ畑の同じ列でもいろいろな品種の木があります。「混在植」と言い、他の木の受粉をさせやすくしてくれる木(アーリーリバー)を混ぜて植えてあるんだとか。「アーリーリバーは、良い花粉を出して自然と受粉をすすめる良い子なんですよ」。
トロピカルフルーツにさえ思える「くらしま」の木
また、明らかに他の木と違う一風変わった木も。南国風にワッサ~と生い茂る葉の中で、小さな果実がみっしりなっている木は「くらしま」。よ~く見ると小さな実の中に一つ大きな実が! こちらは受粉した大きな実と、その周りに受粉しないまま小さな実がなると言う不思議なもの。養分を取られて大きな実の成長が遅れたり、味がのらなくなるので、小さな実はすべて手作業で落とさなければなりません。割と簡単に落とせるとはいえ、大変な作業となることは必至。「大きな実に栄養を集中させたい。おいしいものをつくるためにはいとわない」と南さん。木一本に対して、一日がかりの摘果作業となることもあるそう。
受粉しなかった小さな実はすべて手作業で落とす(摘果)
一本一本枝の細部まで確認する
そんな作業疲れを癒してくれるのは、お隣ぶどう畑から眺める長野市内の景色。「ここは、秋のえびす講花火大会(11月23日開催)の特等席」と笑います。
ちなみに「くらしま」は、長野市若穂牛島地区の倉島さんが品種改良して生まれた品種。たくさんの葉が糖度をあげてくれ、またジューシーかつ食べ応えのあるサイズ感で人気の品種です。地元発のプルーンを盛り上げていきたい、との想いも強い南さんです。
プロに聞く!おいしいプルーンの見分け方&食べ方
アーリーリバーの完熟具合を確認する南さん
「おいしいプルーンの見分け方は?」と尋ねると「好みによって違う」と言いつつも、「黒味がかった果皮、果肉のハリ・つやの良いもの」とのこと。固めの場合は、常温に少しおいておき、果肉に弾力が出てきてから食べるとおいしい、とのこと。おいしい食べ方は「完熟を冷蔵庫で冷やして、生を皮ごと」。食べる前にさっと水洗いして中央の種に注意して「そのままかじる」のが一番ですよ。
【南さんの園地で栽培している7品種】
○アーリーリバー(極早生)
JAグリーン長野管内で、トップバッターとして登場する7月中旬~8月上旬までの品種。小ぶり(25~30g)で巨峰をふた周りほど大きくしたような円形のかわいらしいプルーン。果皮は黒紫色で、果肉は飴色に近い濃い黄色。完熟すると、ねっとり柔らかな果肉の甘さの中にほどよい酸味が感じられます。
○ツアー(中生)
果実は円形に近い短楕円形。少し小ぶり(30g)で、果皮は紫色。食感も良く果汁も甘味も多い。
○トレジディ(中生)
8月上旬から旬を迎える。ラグビーボールのような楕円形で40~50gと食べやすいサイズ。果皮は黒紫色で果肉は黄褐色。果汁が多くバランスのとれた味わい。
○サンタス(中生)
ぶどうや桃等との複合栽培*2にも適しており、同JA管内での栽培量1位品種。8月上旬から旬を迎える。ラグビーボールのような楕円形で40~50gと食べやすいサイズ。果皮は黒紫色で果肉は淡黄色。さわやかな酸味が魅力で、さっぱり味が好きな方にはたまらない♪
○くらしま早生(中生)
8月上旬から旬を迎える。長野市若穂牛島地区の倉島さんが品種改良して生まれた品種。果皮は黒紫色で果汁が多く、食味が良い。
○くらしま(晩生)
8月下旬から旬を迎える。長野市若穂牛島地区の倉島さんが品種改良して生まれた品種。50~70gと気持ち大振りな楕円形。果皮は黒紫色で果肉は黄褐色。果汁が多くジューシー。「くらしま早生」と共に人気。
○ベイラー(晩生)
8月下旬から旬を迎える。50~60gの楕円形。果皮は黒紫色で果肉は少し黄緑がかった色。甘く濃厚な味わい。
7月中旬の「アーリーリバー」「サンタス」から9月の「くらしま」「ベイラー」と、さまざまな品種が登場するプルーン。こうしてみると本当にたくさんの品種がありますね。しかも、酸味から濃厚な甘味まで、これほど違う味わいが楽しめるというのも、プルーンならではの特徴です。シーズンを通していろいろ食べ比べてみると、きっと好みの味に出会えるでしょう☆ そうそう、どの品種でも、まずは「生で皮ごと」をお楽しみくださいね♪
JAグリーン管内のプルーンは、生産者の出荷物を検品・選果の後、関西・東京はじめ県外各地へと届けています。県内では、JAグリーン長野果実流通センター、A・コープ松代店・ファーマーズ篠ノ井店・ファーマーズ南長野店などでお買い求めいただけます。プルーンの旬は10日ほどと短く、しかも品種ごと数に限りがありますのでご注意ください。
*1 ブルーム
果皮の表面をおおっている白い粉。果実自身から出てくるもので、水分蒸発を防ぎ、病気などからも保護する役割がある。厚ければ厚いほどおいしさの証でもある。ブルームを落とさないよう、洗うのは食べる直前に。
*2 複合栽培
他の品目と平行して育てる栽培方法。
JAグリーン長野