吹きすさぶ木枯らしに思わず身を縮ませた経験ありますか? 今回は、寒さあっての美味しさという季節野菜を紹介します。まずは上の写真をご覧ください。 何だかわかりますか? 濃緑の束が山に・・・。正解は、この後すぐ!
ここは日本の中央、八ヶ岳東麓に広がる広大な裾野、南佐久郡南牧村の野辺山高原。JRの駅でもっとも標高の高い場所にある小海線の野辺山駅(1,346m)も有名ですね。やってきたのは、寒凪の11月下旬。はっと息をのむほど美しい景色の中、ある一角だけ濃い緑色で埋め尽くされているのを発見! 近づくと、丸くて肉厚シワシワな葉がまるでタンポポの葉のように地表に広がっています。そうっ! これが正解の「寒じめほうれん草」。文字通り、寒気にさらしたほうれん草なんです。
「ほうれん草自身の防衛本能とでもいうのでしょうかね。自分で葉を縮ませ(シワを寄せ)て水分を出して凍ることを防いでいるんですよ。その時にデンプンが糖に変わり糖度(8度以上)を蓄え、ビタミン・ミネラルや鉄分もぎゅっと凝縮されます」 そう教えてくれたのは、収穫作業中の新海英貴さん。標高1,300mの高地でキャベツ・グリーンボール・レタスなど高原野菜を栽培しています。「八ヶ岳を見ながらの作業は本当に楽しい」と満面の笑み。確かに、この壮大な大地にいるだけで清々しい心持ちになりました。
生産者の新海英貴さん
一つひとつ丁寧に収穫
収穫はすべて手作業。一つひとつ地表ギリギリに包丁を入れ、ザクっバリっと切り、株元を上にしてマルチの上にそっと置いていきます。これは収穫後も土をつけないようにするためのもの。普通のほうれん草の3倍はあろうかというほど、ずっしりした重みがある「寒じめほうれん草」ならではの方法でしょうか。
収穫後のひと手間もあります。余分な葉をとり(この葉は自家用として食卓へ)、スポンジでひと株ずつ丁寧に株元の土を落としてから、茎を折らないように専用シートでそっと巻いて、これまた手作業で袋詰めです。すべて実習生とともに行います。
株元の土をスポンジで丁寧に落とし、重さをはかり袋詰め
新海さんは、「寒じめほうれん草は、土地の気候や環境にもあっていて育てやすい」とも。レタスの後作としてマルチもそのまま生かし、例年9月5日頃から種を播き、露地栽培で自然に成長させます。秋冬の寒さで虫もいない上に、霜にあたることが美味しさの秘訣とも。また、レタスは適期が短く収穫に追われる日々が続きますが、寒締めほうれん草はゆっくり成長し、ある程度の寒さで成長を止めてくれるので収穫スケジュールを調整しやすいそう。「いい子でしょ♪」と笑います。
袋詰めされ、出荷を待つ
今年は盆明けから一気に気温が下がり低温だったため、例年よりさらに甘味がのっているそう。「9月30日には霜も降りて、あまりに寒すぎたので被服(保温)し、11月には外して・・・。おかげでアク(えぐみ)の少ない美味しいものになりました」。天候にあわせた手間ひまも惜しまない新海さんです。「いつごろまで収穫できますか?」と尋ねると「ほうれん草は12月でも育つけど、土が凍ってしまって包丁が刺さらず収穫できないんです・・・」と冬本番の厳しさも教えてくれました。
一見、硬そうにも見えるかもしれませんが、「煮崩れしにくいうえに、やわらかで甘い」と教えてくれたのは、新海さんの奥様・陽子さん。素材の味を楽しめるお浸しやガーリック炒めなどをよく作るとのこと。チーズとの相性も良く、二人のお子さんの好物でもあるそう♪
南牧村の「寒じめほうれん草」は、都内大手市場で全国でも一番早く、10月中旬~11月末頃まで約3,000ケースの出荷となります。今年の出荷は終了してしまいましたが、早い冬の訪れとともに八ヶ岳山麓の「寒じめほうれん草」を覚えていてくださいね。そして見かけた時が買い時ですよ☆ その甘さの虜になること間違いなしっ!
■関連リンク JA長野八ヶ岳
こちらは 2015.12.01 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
まちゃ
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