お茶といえば、静岡や京都を連想されますか? じつは長野県にもお茶の産地があるんです!
先月お伝えした下伊那郡天龍村と、今回ご紹介する南木曽地域です。岐阜県境にある南木曽町 田立地区では、40年ほど前からお茶の栽培が始まりました。現在は、およそ200件の農家が「やぶきた」という品種のお茶を栽培しています。
木曽谷の南端に位置する南木曽町
養蚕産業に代わり始まった茶栽培
南木曽町 田立地区には「やぶきた」の栽培が始まる前から在来種のお茶が自生していました。もともとは養蚕にたずさわっていた農家が、戦後、化学繊維の発達や中国からの生糸の輸入増により、養蚕からお茶栽培へと切り替えたのが、田立地区でのお茶栽培の始まりでした。この地域は、昼夜の温度差が大きいためおいしいお茶が育ちます。茶葉を触らせていただきましたが、想像以上にやわらかでした。
目を奪うほどの茶摘みの速さ
例年5月下旬から6月はじめまでが茶摘みのシーズンですが、濡れた茶葉は加工できないため、茶摘みできるのは晴れた日だけ。そのため、このシーズンは家族・ご近所総出で大忙しです。地元の保育園や小学校では、栽培から茶摘みまでを体験する授業や、一日にどれだけのお茶を摘めるかを競う茶摘み大会などが開催されています。そのため、地元の子どもたちもみんなお茶摘みができます。
すべて手作業で摘むのですから、どれほどの時間がかかるのか...と心配されるかもしれません。しかし、ベテラン農家による茶摘みの速さをご覧ください。
生産者だからこそできる贅沢
この地域では、主に自家消費を目的として、長野県茶振興協議会で定めた「茶栽培管理暦」に基づいた、丁寧な栽培・管理が行われています。"自分たちの飲むお茶だから、おいしいお茶をつくる"とは、生産者だからこそできる贅沢です。今年は、萌芽期(7割の新芽の芽長が苞葉の2倍になった時期)に凍霜害に見舞われましたが、その他は気候にも恵まれ、おいしいお茶に育っているそうです。
その日のうちに加工します!
お茶を加工する田立製茶工場にもお邪魔しました。
茶葉は発酵しやすいため、持ち込まれた茶葉は当日中に加工します。紅茶など発酵させるお茶もありますが、緑茶の場合は風を通して発酵させないようにします。
お茶ができるまで、(1) 茶葉を蒸す→(2) 冷却する→(3) 葉の表面の水分を取り除く→(4) 熱風で乾かしながら揉む(粗揉)→(5) 葉に力を加えて水分を均一にする→(6) 再び、熱風で乾かしながら揉む(中揉)→(7) 葉に熱と力を加えて形を整えながら乾かす(精揉)→(8) 乾燥する、というおよそ5日間の工程を経てお茶が出来上がります。
昼12時で茶葉の持ち込みを締め切りますが、最盛期には、その茶葉を加工するのに朝方の3時〜4時までかかるそうです。
最盛期の工場内は青々としたお茶の香りに包まれていました。南木曽町のお茶は、地元の道の駅やAコープきそ店などで販売されています。
手間ひまかけてつくられた木曽路のお茶で、ほっとひと息つきませんか?
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