春一番で、信州に花のたよりを届けてくれた梅の木は、花が散り、実となり、少しずつ成長しています。
たわわに実った梅たちは、「わたしたちを美味しく食べて」と、梅仕事の時をじっと待わびているようにも見えます。
梅仕事とは、6月ごろ、その年に収穫した梅の実を使って、梅酒や梅漬け、梅干しなどをつくること。県南部・飯田市から梅仕事のご紹介です。
カリカリが旨い"竜峡小梅"の産地へ
南信州の"小梅"の収穫がはじまりました。今年は春先から天候に恵まれ、咲いた花の数だけ実をつけ、少し小粒ですが、品質のよい"小梅"ができました。"小梅"に続いて"中梅""大梅"と収穫が続きます。
訪れたのは飯田市鼎にある、"飯田小梅"の栽培歴50年という澤柳輝夫(さわやなぎ・てるお)さんの梅園。6月1日から始まった収穫は、奥さんの静江(しずえ)さんとお手伝いさん5人の手によって、10日頃まで続きます。
取材した澤柳家の梅園ほか
南信州の小梅といえば"竜峡小梅"が有名ですが、"飯田小梅"は"竜峡小梅"より丸く、実が少し大きく、日の光が当たった部分は赤く色づくのが特徴です。
飯田小梅
「飯田小梅は、木になっているときに日が当たると色づくが、収穫された実に日の光を当てると、果実が変色したりやわらかくなってしまうから、収穫後はできるだけ日光に当てないように注意しているんだよ」と輝夫さん。
収穫された梅は、毛布をかけて日を遮る
訪れた日は、気温30度を超え、汗が噴き出すほどの夏日。その暑さとはいえ、手早くていねいに収穫作業が続けられていました。収穫された"飯田小梅"は自宅の作業場に運ばれ、その日のうちに選果機にかけ、果実の大きさごとに選別して出荷します。
選果機と小梅の入ったコンテナ
静江おばーちゃんの"ぐしゃ梅"で毎日元気!
「毎日の農作業をがんばれるのも自家製梅漬けのおかげ」という静江さんに、澤柳家の梅仕事を教えてもらいました。
"カリカリ梅"と"しょうゆ漬け梅"、"ぐしゃ梅"は、一年中欠かすことがない静江さんご自慢の梅仕事です。その中でも静江さんがネーミングした"ぐしゃ梅"とは......。
木で完熟した"飯田小梅"(黄色く色づいたやわらかい梅)を塩漬けし、そこに、みりん、砂糖、酢を入れたもの。梅の酸味と甘みのバランスが絶妙で、「暑い日には最高の味」とのこと。"静江おばーちゃんのぐしゃ梅"は、収穫してすぐの完熟小梅でないと作れない、梅農家ならではの梅仕事です。遠く離れた子供や孫たちにも大人気で、一年中おいしい"ぐしゃ梅"が届けられます。
ぐしゃ梅と静江さん
伝えたい、残したい、南信州の梅仕事
JAみなみ信州では、小梅の消費拡大と、梅仕事を地域のみなさんに伝えようと、小梅が直売所に出回る時期に、梅漬け講習会を行っています。今年も5月31日と6月1日に、農家のお母さんたちが集まる「なかよし倶楽部」のメンバーを講師に、JAみなみ信州直売所およりてふぁーむで「梅漬け講習会」を開き、「小梅の減塩カリカリ漬け」と「梅酢(梅サワー)」の作り方を来店者に伝えました。
小梅の減塩カリカリ漬け
【材料】
小梅 1kg
荒塩 100g
砂糖 250g
米酢 100cc
焼酎 少々
にがり 25cc
【作り方】
1.小梅は洗って水に3〜4時間漬ける。
2.ざるにあげて水気をきる。
3.水気をきった小梅と「にがり」、塩をボウルに入れ、思いきり強く揉む。
※強く揉むと梅が濃い緑に変わる。それが揉む目安。強く揉むことでパリパリ感を保つことができる。
4.容器に揉んだ梅を入れ、酢と焼酎を注ぎ込み、砂糖を分量の1/2程度ふりかけ、重石をして5〜7日おく。
5.残りの砂糖は、2〜3日に分けて加え、密封して風通しの良い涼しい場所に置く。
【赤紫蘇の入れ方】
1.紫蘇は茎から葉を取ってきれいに洗い、葉を大きめのボウルに入れ、塩を振って揉む。
2.しんなりしたら力を入れて揉み、黒ずんだ水(アク)を絞って捨てる。これを2回ぐらい繰り返す。
3.2に梅酢を少し加え、力を入れて揉むと赤い色が出る。この水も葉と一緒に梅の中に入れる。きれいな色を出すには、紫蘇をたっぷり使い、梅の間と上に入れるのがコツ。
※「梅は人の手を嫌う」といいますが、手順を守った梅仕事をすれば、おいしいカリカリ漬けができます。
梅酢(梅サワー)
【材料】
小梅 1kg
米酢 1.8L
氷砂糖 1kg
【作り方】
1.小梅は洗って水に3〜4時間漬ける。
2.ざるにあげて水気をきる。
3.広口の瓶に、小梅・米酢・氷砂糖を全部入れる。
4.3カ月くらいしたら出来上がり。
【活用の仕方】
梅酢を水や炭酸で5倍に割れば梅ジュース。
しょうゆと割ってドレッシングにも。
そのまま酢の物や煮魚、煮物の隠し味としても活用できます。
梅干しは大変そうですが、梅酢なら簡単にトライできそう♪
長野県では、これから本格的な梅のシーズンを迎えます。収穫したばかりの梅が直売所に並ぶ様子を見ると、なんだかワクワクしてきますね。
もちろん、JAタウンでも販売してますのでこちらからもどうぞ♪
今度の週末は、自分流の梅仕事、してみませんか。