日本列島、朝鮮半島の南部、中国の華南や華中の沿海部、そして台湾など、東アジアの広範囲において、毎年5月から7月にかけて巡って来る雨期のことを「梅雨(ばいう/つゆ)」と呼びます。なぜ「梅の雨」なのでしょうか? きっと多くの人が考えたことがあるはずです。
梅は1500年ほど前に遣唐使が唐から持ち帰りました。梅の原産地が中国であるのと同様に、「梅雨(ばいう)」の語源も中国にあります。中国では「梅が熟して黄色くなる時期の長雨」を「黄梅雨(フアンメイユー)」と呼ぶそうです。この「メイユー」が「梅雨」のことなのです。今年は信州の梅雨入りはまだですが、下伊那郡中川村ではそろそろ梅の実が熟す時期となって、名産の「竜峡小梅」の収穫がピークを迎えていました。
梅は身体によいのです
栽培を始めて40余年になる木下宏志(きのした・ひろし)さんの梅園でも、小粒の梅をひとつひとつていねいに収穫する作業が続いています。この地域では昔から、小梅を漬けるのが各家庭の"年中行事"でした。でも最近は漬ける家庭も少なくなり、地域全体の収穫量も減少気味です。そこでJA上伊那では「なんとかたくさんの人たちに名産で健康によい梅を食べてもらいたい」と、家庭で簡単にできるレシピの提案などをはじめました。
実をならせるには手がかかる
木下さんの梅園は村内に約35a(アール)。この時期は近所の女性たちの手も借りながら収穫をおこないます。枝を広げた梅の木の下に入ると、古木から伸びた枝に、みずみずしい葉と同じ黄緑色に実った小梅がびっしりなっています。梅園の木漏れ日は気持ちよく、できればレジャーシートを広げてお弁当を食べたくなるほどです。実のなる今の時期は特に香りはありませんが、春の花の時期には白い花とともに甘酸っぱい香りに包まれるのだとか。
梅の枝は、花を咲かせて実をつけるまでは、空へ向かって上へ上へと伸びていきます。でもその枝が収穫の時期にはそれを悟るかのように垂れ下がってくるのです。もちろん、そのためには、冬の間に行う剪定で、日当たりや風通しを良くするための空間づくりなど、収穫までのことを考えた作業をおこなわなくてはなりません。木下さん(左写真)は約25日間をかけて全部の梅の木の剪定作業を行うのです。キノコやワラ、もみ殻などで作る自家製の堆肥を使った栄養補給も、良質な小梅を作る秘訣です。
梅漬けは食文化のひとつ
「竜峡小梅」は大正時代、中川村と隣接する松川町で発見された自生の品種で、その後、県農事試験場で選抜されて栽培品種となりました。天竜川流域の峡谷で栽培されることに由来するこの名称は昭和37年、1962年から使われるようになりました。小梅1粒の大きさは直径2cm前後。家庭で漬けるには粒が大きめの小梅が好まれますが、加工用は1.8〜2cmと小粒が人気。近年は、弁当やおにぎり用の梅のほか、おつまみ用に個別包装された梅漬けとして使用されることも多くなりました。特徴は、種が小さくて肉厚なこと。昔からこの地域ではカリカリと歯ごたえのある梅漬けを作ることに使われ、カリカリ梅漬けは各家庭に伝わる健康食品として食文化のひとつでもありました。
身体に気を使うなら梅を食べるようにしましょう
昭和から平成に入るころにはJA上伊那管内の出荷量は農家約300人で400トンと多く、高値で取引されたことから「青いダイヤ」と呼ばれました。その後中国産の輸入や、家庭で梅漬けをしなくなったことから生産量は次第に減少し、現在は農家約120人で80トンあまり。今年は60トンとさらに減少傾向にあります。そこでJA上伊那では、大切に守り続けてきた「竜峡小梅」の消費拡大につなげるレシピ作りにも力をいれはじめました。「梅はその日の難のがれ」という言い伝えが江戸時代からありますが、梅は疲労回復に役立つクエン酸やリンゴ酸を多く含むほか、老化予防や整腸作用のある食品としても知られています。
最後に手軽にできるレシピを紹介しておきましょう。
誰でも出来る梅の調理法
小梅と塩昆布のしょうゆ漬け
■材料
●小梅 1kg
●しょうゆ 300cc
●塩昆布(漬物用)40g
■作り方
1)小梅を水洗いしてから1〜2時間ほど水につけてアク抜きをし、ざるに上げて水気を切る。
2)瓶(ポリ容器でも可)に小梅と塩昆布を交互に入れ、しょうゆを入れて漬ける。小梅がしょうゆに浸るように入れる。足りない場合は酢、水などを足しても良い。
3)1週間から10日で食べられます。
おいしい梅干しの作り方
■材料
●小梅 1kg
●塩 100g
●しそ 適量
■作り方
1)完熟した梅をひと晩水に浸けておきます。
2)水気をしっかり切り、梅に塩をすりこむようにして瓶に漬け込み、重石を載せます。
3)水が上がってきたら赤しそを用意してもみ込みます。
4)土用(7月)のころになったら、天候を見て3日3晩干します。その間に数回裏返します。
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