美容と健康に敏感な方は、すでにご存知でしょう。「ルバーブ」のことを。
ルバーブは英語で「Rhubarb」と書きます。和名は「食用大黄(だいおう)」ですが、現在はそのままルバーブと呼ばれています。街の高級食材店や自然食品店などにルバーブのジャムが置かれているのも、もう珍しくありません。
肉食中心の食事をする欧米では、古くから食卓に欠かせぬ食材として広く栽培されていましたが、生活スタイルの変化につれて日本でもようやく数年前からジャムなどとして広まりはじめました。
バターや牛乳など乳製品との相性の良さが発見されるなど、21世紀になって需要は急増しています。繊維質が豊富で、ビタミンCやカリウムやカルシウムも多いため、お通じを良くし、肌の調子を整える効果もあるのです。
西洋人には必需品だった
ルバーブが育てられている信濃町は寒冷地で、冬は積雪の多いところですが、夏は涼しく、高原のさわやかさが感じられる、緑あふれる静かな場所です。
「北信五岳」と謳われる妙高、黒姫、戸隠、飯綱、斑尾の山々に囲まれるこの地には、野尻湖(のじりこ)という湖があり、湖畔の国際村では夏、多くの外国人が避暑に訪れてのんびりと過ごします。
「この地にルバーブを持ち込んだのは外国人宣教師です。時代は大正から昭和のはじめ頃でしょうか。食事でよく肉を食べる彼らが、信濃町の一部の農家の方に、この繊維の豊富なルバーブの栽培を依頼したのが、この地がルバーブの産地となるはじまりです」
信濃町の気候が適していたおかげで
口を開いたのは文雄さんです。「このルバーブの生命力の強さには驚かされます。年2回の堆肥と肥料を与える程度。とても栽培がしやすいんです」
ルバーブは多年草で、翌年に時期が来ると、また葉を茂らせて大きくなります。「株分けして各家の畑に植えると、今ではこの辺りのほとんどの家の畑の隅っこにルバーブが2〜3本は植えられているのではないか、というほどに広まりました」
もともとシベリアの寒い地方が原産のルバーブ。「この涼しい信濃町の気候は適地だったようで、現在まで何十年もの間、絶えることなく栽培は続いているんです」
どうやって食べるの?
とはいえ、当時はこの地の大方の人にとって珍しく、食べ方はもちろん、名称さえ定かでなかったそうで、「畑に植えられているあの大きな葉っぱはなんだろう?」といった感じだったとか。
登江子さんは30年ほど前、当時、国際村にあった店で売られていたルバーブを見つけ、「これはどうやって食べたらいいの?」と販売員に聞いたものの、確かな情報を得られず、謎を秘めたまま月日は流れました。
そして今から20年ほど前のこと。「信濃町の特産品であるブルーベリー以外にも、何か特産品となるものはないだろうか?」と考えて目に留まったのが、伊藤さんの畑で大きな葉を広げていたルバーブでした。
以前から国際村の外国人と交流があり、そこで食事やお茶受けとして出されたソース状のもの、あるいはお菓子やそのつけ合せがルバーブであることは、うすうす感づいていたそうですが、その印象は「あまりおいしくない……」。問題は、その食べ方でした。
日本人に合う食べ方を試行錯誤
「外国人がいろいろな食べ方で楽しんでいるルバーブを、日本人の味覚に合うように作ることに頭を悩ませました。熱を加えるとドロドロに溶けてしまい、あれやこれやと仲間と試行錯誤を重ねながら、いろいろ試してみたなぁ」。文雄さんは当時を振り返ります。
そうして完成したルバーブのジャムやジュースは、今から10年ほど前、テレビなどで「ルバーブが美容と健康に効果的」と報道されたのをきっかけに、多くの人から注目されるようになり、町での生産が増えていきました。
信濃町の人がよく作るというのが「ルバーブのシロップ漬け」です。この辺りではお茶請けによく登場する一品ですが、その作り方を登江子さんに教えていただきました。ポイントは、ルバーブが熱に弱く溶けやすいため、直火にかけないことです。
ルバーブのシロップ漬け
材料
○ルバーブ...1kg
○砂糖...400g
作り方
(1)ルバーブは4cmくらいの輪切りにする。太いものは人指し指くらいの太さに切る。(2)1に砂糖をふってかき混ぜ、置いておく。しばらくすると汁が出てくる。
(3)ルバーブを別の容器に取り出し、残った汁を鍋に入れて火にかける。
(4)沸騰したら火を止め、鍋にルバーブを戻す。ルバーブは火にかけると溶けやすいため、火にかけないこと。
(5)冷めたらまたルバーブを取り出し、汁だけを火にかける。
(6)上記の4・5の作業を全部で3回くり返す。
美容に良く、身体の調子を整えてくれる
このシロップ漬けは、ジャムやパイ作りに利用するだけでなく冷凍庫に入れておけば、保存食として年中楽しめます。
「夏の昼寝の後には目覚めがシャキッとするし、冬はコタツに入りながら食べるのもなかなかいいのよ。ルバーブを煮たあとに残った汁は、水で薄めてジュースにしたり、凍らしてカキ氷のようにして食べるのもおいしいの」
余すところなくルバーブを堪能している登江子さんは「ルバーブは身体や美容にいいから、どんどん食べた方がいいわよ」と勧めます。想像を超えたおいしさに、虜になってしまう人が数多くいるとか。
ジャムとしてヨーグルトに混ぜたり、パイの具として焼いたり、また肉料理のソースにしたり、薄くスライスして生のままサラダにしたり。いろいろな食べ方を楽しめるルバーブは、7月頭くらいまでと、涼しくなる9月、年2回が収穫時期です。
ルバーブはどこで手に入るの?
「農事組合法人・信州黒姫高原ファミリーファーム」(ぶんぶく亭)と、道の駅しなの「ふるさと展望館」で、生のルバーブやジャム、ジェラードなどとして販売しています。ふるさと展望館では、ルバーブの通信販売も行っています。この機会に、酸味の効いた採れたての新鮮なルバーブを、初夏の味覚として味わってみてください。