その粘りは長芋をもしのぎ、また炒めてみればサクサクとした歯ごたえの中にも適度な甘さが楽しめる、それが、北信州は信濃町の特産品として栽培されている「とっくり芋」です。長芋の一種ですが、地中深くになるにつれて太さが増し、それはまるで"とっくり(徳利)"に形が似ているところから、その名が付けられたものなのだとか。
とっくり芋を作っているのは、上水内郡信濃町で米づくりを中心に農業を営む木村勝昭(きむら かつあき)さん(69歳)。県内でも一番北に位置する、北信五岳(飯綱、黒姫、戸隠、斑尾、妙高)の山に囲まれ、夏は涼しく、そしてこれから冬にかけてはとりわけ寒さの厳しいこの場所で、稲作をしながら作れるものとしてJAの進めもあり、とっくり芋の栽培をはじめてすでに6年目。「今年は豊作で上質なものが多い」と言ってこぼれた笑顔の理由も「今では栽培のコツも少しずつ掴めて、収量も増えてきている」ことが関係しているようでした。
火山灰による有機質に富んだ土壌の恵み
聞けばこのとっくり芋、粘土や砂地ではこのような形状の芋にならないのだそうです。この信濃町ならではの真っ黒な火山灰による有機質に富んだ土壌があってこそ、とっくり芋となるもので、現在この辺りでは13名の生産者が栽培しています。
しかし"とっくり"といっても、その長さは長いので80センチ程にまで生長するため、木村さんの場合重機を操作して芋の掘り出しを行います。地中に植わる芋の間際を1メートルほど深く小型ショベルカーで注意深く掘って土をどかし、その後は芋を傷つけないようにと丁寧にスコップで掘り出していきます。
今年も10月下旬から11月上旬にかけて、地上の葉っぱが緑から黄色に、やがてその葉が枯れたことを合図にして芋の収穫が行われましたが、地中で長いこと過ごすことによりアクが抜け、空気に触れても色が変わらない美味しい芋になるのだとか。
甘味のある不思議な芋
生のまま食べてみれば、まるで梨を食べているかのようなシャリシャリ感、そして甘味をもつ不思議な芋です。木村さんの年間収穫量は今年4000本ほどということですが、「いっぱい食べてくれれば、これからどんどん作っていくから、皆さんにもっとたくさん食べて欲しい。そうしてこの信濃町をとっくり芋の産地にしたい。」と木村さんは話します。
独特のヌルヌル成分は、体力の回復、滋養強壮、食力増進に効果的。
とっくり芋は、長野市赤沼の農産物直売所アグリながぬまで12月いっぱい販売される予定です。また道の駅・しなの「ふるさと天望館」(信濃町)では、このとっくり芋のすりおろしを掛けたそばを食べることができます。
長芋ほどは長くなく、持ち運びに便利な食べきりサイズは、地元ではご贈答用としても人気。生で食べてはもちろんのこと、炒めても良し、またグラタンのように中までしっかりと火を通してもホクホクとして多様な食べ方が楽しめる、このとっくり芋をあなたも試しに召しあがってみてください。
レシピ:
・とっくり芋のグラタン 藤木徳彦シェフの'おうちでフレンチ
関連サイト:
JAながの長沼農産物直売所「アグリながぬま」
長野市大字穂保274‐1
電話:026‐295−1093
FAX:026‐251−7101
http://www.ja-nagano.iijan.or.jp/
道の駅・しなの「ふるさと天望館」
アクセス:上信越自動車道 信濃町IC降りてすぐ
電話:026−255−2900
FAX:026−251−7101
http://www.michinoeki-shinano.jp/