この新緑!! この茶畑! 思わず深呼吸したくなりますよね。
なに、茶畑? もちろん、ここは長野県ですよ。眼下に流れるのは、かつて「暴れ天竜」として知られた天竜川です。この絶景を見下ろしながら、八十八夜も過ぎた先週5月8日から、信州の最南端に位置する南信濃地方、上村、天龍村等で、茶摘みがはじまっています。
長野でお茶? そう! 新茶の季節だからこそ、信州でも数少ないお茶の生産地に、行かなくてはなりません!
この絶好の機会に、みなさんに、なにがなんでも知ってもらいたいお茶があるのです。
銘茶を育む谷
と、言うことで、下伊那郡天龍村中井侍(なかいさむらい)地区に来ています。天龍村は、長野県と静岡県の県境の村で、赤石山脈・伊那山脈の谷間に位置し、時間がゆっくりとながれる場所です。なかでも、中井侍地区には、標高約350〜500メートルの急傾斜に、茶畑がいくつも点在しており、すぐかたわらをゆうゆうと流れる偉大な天竜川を見下ろすことができます。
今回は、この急峻な中井侍で、丹精込めて長くお茶を栽培する羽田野七郎平さん(78)の茶畑からのリポートです。まさに今、羽田野さんの家族や、親戚や、近所の農家さん14人がひとつひとつていねいに一番茶の手摘み作業を行なわれています。さっそくお話をうかがってみましょう。
朝日遅く霧深き谷
お茶はいつごろから栽培されているのですか?
わたしは、茶畑を昭和47年からだから、かれこれ35年くらいだね。それまで、梅を育てていたけど、なかなかうまくいかなくて、そのころ、地区でお茶の生産者組合が出来てね。仲間と地域みんなで取り組みをはじめたんだ。
中井侍地区の特長はどんなところです?
気候がお茶に適していること。山々の谷間にあるからね、温度差があり、太陽の光を十分受けることが出来る。それに、ここは朝日が遅く、霧がとっても深くて、お茶には適してる。天竜川から立ち上がる朝霧をいっぱい浴びるから、いいお茶が摘めるんだよ。
独特の渋みが甘さを引き立てる
茶摘みのコツはあるんですか?
うむ。一番先の一枚だけ摘みとるのではなく、上から三枚摘むんだよ。一枚目が「しん」と言って、いい味を出すからね。
ここで穫れるお茶の特長を教えてください。
香りがたかく、独特な渋みがあることかな。渋みといっても甘く感じるんだよ。
霜がとにかく心配
今年の出来はどうですか?
3月まで暖冬だったものの、4月に入ってからの気温の低下で新芽がそろいました。例年より、数日遅いはじまりだけど上々の出来だよ。
今心配なことは?
霜が降りることだね。霜が降りると、せっかくの芽がダメになってしまう。この茶畑は標高350メートルだから、もう霜は心配ないけど、上の500メートルにある茶畑は、まだ心配です。
手摘みの一番茶をぜひ
栽培でどのようなことに気をつけてます?
お茶、そのものを生かした品質の管理です。わたしはじめ、村内の生産者25人で、よりおいしいお茶を届けたいとの思いから、環境に優しく、減農薬などを進めるエコファーマーに取り組み、今年2月に見事認定を受けることが出来ました。今でも、地区全体で土づくりをはじめ、有機肥料の使用や生産方式など改善してます。
今後の展望をお聞かせください。
木の品質をおとさず、いいお茶を育て続けたいですね。
お茶好きな全国のみなさんへ一言。
お茶は体にいいのはご存知ですよね。わたしもほら毎年自分のお茶で元気です(笑)。昨年はエコファーマーも取り、安心して飲んでいただけます。なんといっても、手摘みの一番茶はおいしいですよ。
生産者の方が飲む、おいしいお茶の入れ方は?
特別なことはしないけど、70℃ぐらいのお湯でゆ〜っくり、お茶を出してあげてください。また、家ではお湯で入れたお茶を一度冷蔵庫で冷やして飲む。これがまた、うまいんだ。
「赤石銘茶」は来月には店頭に
羽田野さんからお話しを聞いている最中にも、天竜村にある茶葉の製茶工場からなんとも落ち着くあたたかいお茶の香りが漂い、トンテントンテンという音が聞こえてきました。羽田野さんの茶摘みの作業は今月いっぱいは続くそうで、お茶は「赤石銘茶」として、早くて6月はじめから店頭に登場します。
赤石銘茶 店頭販売店
JAみなみ信州 直売所 りんごの里