野菜

地元で愛され続ける伝統野菜「小布施丸なす」

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ナスは暑い時期の今がまさに旬。漬け物に焼き物、揚げ物、煮物にと様々な調理法で現在では一年中食べられ、料理のレパートリーを広げてくれます。ナスの凄さは、何といってもその品種の多さです。長ナス、丸ナス、小ナスのほか、白や緑色をしたナスなど、じつに種類が豊富で世界中に3,000もの品種があるといわれるほど。その土地土地で地元に愛されてきたナスがあるのです。

こと信州、なかでも善光寺平以北の北信濃の食生活において、ナスはとりわけ縁深い野菜です。この地域の郷土食「おやき」は、丸ナスを輪切りにして、間に味噌を挟み、これをまるごと小麦粉の皮で包んで蒸したもので、『丸ナスがあったから信州のおやき文化が発達した』とすら言われています。長野県北部の一部の地域では、現在でも8月14日のお盆の朝、丸ナスのおやきを仏壇にお供えする習慣があるなど、無くてはならないものなのです。
その肉質は緻密で締り、味が濃くて美味しいと人気の丸ナス。おやきにしてもひと味もふた味も違うという、そんな丸ナスの原種ともいわれるナスが上高井郡小布施町にありました。

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「京都の賀茂なす」に引けをとらないおいしさ
「北斎と栗の町」として知られ、また最近では「オープンガーデンの町」としても全国から大勢の人が訪れる小布施町にあって、栗のほかにこの時期のもうひとつの特産が、その名も「小布施丸なす」です。
このナスは丸ナスといえども、形は真ん丸ではなく、巾着型とも呼ばれる、横と下方に少しでっぷりと広がった何とも愛嬌ある姿です。掌にのせてみれば予想以上にズシリとし、中身がしっかり詰まっているのが分かります。大きいものではソフトボール程となり、その重さは1つ300〜400グラムと、なんとも堂々とした風格です。

現在、地元の多くの料理店や宿泊施設で、この丸ナスを使った料理の提供が行われています。先日は、地元の料理人たちが腕を振るった新作料理試食会が行われました。味噌田楽に煮物やマリネ、生ではもちろんのこと、デザートとしてアイスクリームと合わせるなど意外な組み合わせも登場し、小布施丸なすの魅力が引き出された料理がズラリと並びました。


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「京都の賀茂なすに引けをとらないおいしさ」と全国各地の選りすぐりの食材を扱う料理人からも評価が高い小布施丸なすですが、果肉がしっかりと詰まっているため、通常より火の通りに時間がかかるそうです。加熱した料理は、濃厚な味わいのなかにも、歯応えを残しながらトロリとしたまろやかさとほのかに広がる甘さとで、思わずニンマリしてしまうほど。調理法によって七変化するこのナスの実力には、調理人の腕がいいのか、ナスが凄いのかと疑問を抱きつつも、驚きを隠せませんでした。


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復活した小布施丸ナス
小布施丸なすは、もともと小布施町の山王島(さんのうじま)という一部の部落で明治時代から栽培されてきました。最盛期の大正時代には30戸で栽培が行われ、県北部はもとより全国にまで行き渡るほどだったといいます。この地域は千曲川沿岸に位置するため、洪水のたびに上流からの土砂が堆積して新たな土壌が形成されるという特徴があり、それが連作を嫌うナスの栽培を毎年可能にしてきたのでした。

しかし昭和30年頃に入ると事態は一転します。栽培し易く大量に収穫できるナスが全国で単一の新品種として普及するようになると、世の中の風潮はこの新たな品種の方へと流れていきました。それまで地元で親しまれてきた小布施丸なすですが、味は良くても栽培が難しいうえに収穫量が少ないといった特徴も影響し、栽培する人も、生産量も次第に減少し、埋もれた存在になってしまったのでした。
小布施丸なすは、1本の樹から収穫できる量が、現在広く出回っている長ナスの1〜2割程度と、じつにわずかなのだそうです。


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その後近年になって、在来種の野菜に注目し、掘り起こすことをねらいとして「信州の伝統野菜認定制度」ができました。
これは、その土地の気候風土に適合し代々育まれてきた県内各地の個性豊かな在来種の野菜たちの保存と継承を目的に、平成18年に発足された認定制度です。翌年、小布施丸なすも認定を受け、これをきっかけにしながら、この地で代々作られ愛されてきた小布施丸なすに興味や関心を持つ人も増えてきました。
ちなみに信州は地形や気候変化の地域差が大きい土地柄ですから、平成24年2月までの間にその数37種の作物が伝統野菜の認定を受け、また63種が24年2月時点で選定を受けているところです。

小布施丸なす研究会で活動する生産者の方は言います。
「それは今から5年前の出合いでした。『小布施丸なす』とは風の噂には聞いていましたが、それまで町内でも見る機会が無く...それがようやく、苗を売っているのを知って栽培にチャレンジしてみました。採れたナスを食べた感動は忘れられません。『必ずやこのナスを普及させなければ!!』とその時思いました」と。

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地元での栽培が減少し、作る人もほとんどいなくなっていた当時でも、この種を絶やすことなく苗の栽培に励んでいた人がまだわずかにいたのでした。そのことが幸いし、徐々にこの地で小布施丸なすを栽培する人も苗の数も増え、また人々の口から「小布施丸なす」の名も飛び交うようになりました。地元の人にとってはあの昔懐かしい丸ナスが再び、しっかりと現在に甦っています。

小布施丸なすを次世代へ
今年2月にはこの丸ナスを次世代に残していくことを目的に、小布施丸なす研究会も発足しました。生産者12名と飲食店経営者の計19組が構成員となり、種を取り苗を作る人、その苗からナスを実らせる人、そしてこのナスを使って料理作る人と、地域で暮らすそれぞれの人が自分の得意分野を生かしながら、この町で小布施丸なすを支えているのです。
s-004-R0022358.jpg 小布施丸なすの旬は10月上旬頃までで、町内の農産物直売所などで販売しています。焼いても良し、蒸して生姜醤油を付けても良し、またカレーに入れても良し、さらにおやきの具材としても抜群の小布施丸なすを、お立ち寄りの際にはぜひお求めいただき、先ずはそのおいしさを味わってください。 ただし、ナスは風邪を引き易いといわれる野菜です。保存は2〜3日以内であれば常温で、それ以上保存する場合には、風に当てず冷やし過ぎないよう新聞紙に包むか、袋に入れて水分の蒸発を抑え、冷蔵庫の野菜室に置いて早めに食べましょう。

【参考】 小布施町ホームページ

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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