長野県の特産品のひとつ「マロンなピーチ」の収穫が始まり、今年もいよいよ26日から全国へと出荷されます。
「えっ? マロンなピーチ?」
「マロンなの?」
「ピーチなの?」
と疑問を持った方もいるのではないでしょうか。
マロンなピーチとは、独特の甘みと華やかな香り、そして何より黄金色にオーラを放つ黄色い桃のことで、栗の特産地として知られる小布施町をはじめ須坂市、高山村とを合わせた県北部の須高(すこう)地区で栽培されています。
桃色って何色? キーワードは「色」でした
桃といえば絵の具やクレヨンといった画材に「桃色」があるようにピンク色のイメージですよね。ところが桃は外観にかかわらず果肉の色から白桃や黄桃といった品種に分けられています。マロンなピーチも実は「色」がキーワード。外観の色に関するある1つの疑問から生まれた桃だったのです。
JA須高営農生活部農業振興課の藤沢茂樹課長は振り返ります。
「地元で収穫した黄金桃を出荷していた時『黄金桃という名前の桃なのになぜ見た目は赤いのですか』‐そんな質問を受けたことがきっかけとなりました」
実をいうと随分前から須高地区では皮が赤みがかった色の黄金桃という品種が栽培されていて、現在でもあります。ところが先の疑問をきっかけとして10年ほど前から「黄金桃を、名前の通り黄色に実らせよう」との取り組みが始まりました。こうして生まれた黄色い桃が「マロンなピーチ」という訳です。
桃が桃色となるのは日光の紫外線による影響です。多くの桃は収穫する1週間ほど前に果実へのキズや病気から守るための袋を外して太陽の光で色づきます。ということは、黄色い桃を作るには太陽の光を遮断すれば良いのです。
理屈は簡単なのです。
しかし女性が帽子を被ったり日傘をさしたりして日焼けを予防するのと同じように、太陽の光を遮断し、なめらかで美しい黄色を保つのは容易ではありません。
JA須高販売企画課の前澤純一さんは言います。
「果実を収穫する際、袋を外しやすいように入っていたミシン目から紫外線が差し込んで紅が入ってしまったことから、果実に被せる袋からミシン目をなくしたり、遮光のため内側の黒い袋にしたりと試行錯誤がありました」
別格の扱い。美しい外観で甘味も充分。
脱サラで就農して7年目となる生産者のひとり清水一宏さん(41歳)は、マロンなピーチの栽培に取り組んで3シーズン目です。「雨が降ると湿気で袋と果実が接している場合が多く、そのまま外すと黒っぽい色が付着してしまうので雨の翌日は収穫を控えています。それに、収穫時に袋を外すまで果実が見られないことも不安で、収穫時期の見極めが大変です」と"美肌"で出荷する苦労を話します。
こうして大切に大切に育てられた黄色い桃は、生産者が1つ1つ丁寧に袋から外して、緩衝材で覆って箱詰めして出荷されます。通常、桃は選果場で選別されてから出荷となりますが、マロンなピーチだけは別格なのです。
今季は雨や風が少なかったことから「出来は上々です」と胸をはる藤沢課長。糖度も13〜14度と甘みも十分。今年は6500ケース(5キロ)の出荷を予定しています。オーラを発しているような黄金色の桃は縁起の良い贈答品としても喜ばれそうです。
ところで「マロン」とは、栗のむき身のように黄色い桃といった意味で名づけられたので、栗の味はしませんので、あしからず。ちなみに小布施特産の栗の収穫は、マロンなピーチの収穫が終了する9月中旬以降、秋の声が聞こえてから始まります。