どっしりと構えながらも優美な姿をした信州100名山の"蓼科山"。標高780〜800メートルほどの澄んだ空気が感じられる立科町の高台に、「蓼科牛」(平成7年商標登録)とよばれる牛たちがいました。
この牛を育てているのは、牛を育てて40年の大ベテラン、現在100頭ほどを肥育すると共に、JA佐久浅間しらかば肉牛部会部会長として畜産農家19戸を束ねている山浦節男さん。"諏訪富士"または"女の神山"とも呼ばれる蓼科山の丸みをおびた頂を望みながら蓼科牛を育てています。
ゆっくり寛ぐのが美味しさのヒミツ
父親を黒毛和牛、母親をホルスタインにもつ蓼科牛をひと目見ようと牛舎に近づけば、のっそりのっそり、静かながらも堂々とした足取りでまっすぐに近寄ってきます。
なんとも興味津々の牛たち。
餌を食べた後はほぼ一日、しゃがみながらただひたすらゆっくりと寛ぐばかりですから、見慣れない顔が覗いた時などは事のほか珍しいのかもしれません。けれど、このゆっくりと寛ぐことが、より一層おいしい肉質を形成する秘訣なのだそうです。
さらに雄の場合ですと、早い段階から去勢することによって、雄が本来もっている闘争心などの気質が取り去られ、穏やかな性格となり、それが肉質にも影響し、キメ細やかになるのだそうです。
「保育一貫」でストレス少なく
山浦さんの飼育方法の特徴は「保育一貫」。通常ですと6ヶ月経った牛を購入し、連れてきますが、山浦さんのところでは県内産の牛を生後2ヶ月で引き取り―そんな仔牛たちにはおよそ1ヶ月間ミルク(脱脂粉乳)を与え―、そうして早い段階から、新しい環境に慣れるよう、新天地で育てることによって、牛たちに与えるストレスを少なくしているのだそうです。
餌やりを通じた健康チェック
牛の生長に欠かせない餌は、月数などによって内容や配合を変えますが、ふすまや大豆、トウモロコシ等の配合飼料で栄養いっぱいの穀物。そのほか、地元産にこだわった稲わらや、稲発酵粗飼料といったツ〜ンッ!と鼻をつく酸っぱい発酵したものが牛さんの大好物なのだそうです。
そんな餌くれや掃除を行いながら、山浦さんは毎日の牛の健康チェックを欠かさず、一頭一頭の変化を素早くキャッチするそうです。
蓼科山の名に恥じぬ牛づくり
そうして餌にこだわり、山浦さんが愛情をいっぱい注いで育てられた牛たちはおよそ2年、体重800キロで旅立ちの日を迎えます。
「日本100名山である蓼科山から名を戴いているので、その名に恥じぬよう"安全・安心"にこだわって、産地の維持・継続を守りながら頑張っていきたい」と、話す山浦さん。
山浦さんらJA佐久浅間の生産者たちが丹精込めて育てた「蓼科牛」の味は、肉質がキメ細やかで甘味が特徴。飽きのこない美味しさからリピーターの多いという蓼科牛。さらに、和牛に近い味を持ちながらも値段はリーズナブルとは、家計にもうれしいもの。
蓼科牛を使ったローストビーフ
この蓼科牛を使って、ステーキやすき焼きばかりでなく、ローストビーフを作ってみませんか。
県南部・茅野市の
オーベルジュ「エスポワール」のオーナーシェフ・藤木徳彦さん考案
「信州蓼科牛のローストビーフ」はいかがでしょうか。
ポイントは、3日前から重量の1%の塩を振り、その間冷蔵庫で熟成させた後、65〜70℃の温度を保って1時間湯せんすること。このとき、決して沸騰させないように注意しましょう。
信州が育てた自慢の蓼科牛、ぜひ召し上がってみて下さい。
関連サイト:
JA佐久浅間公式ホームページ