11月に最低気温が零下15度ぐらいに下がる日もある標高1000m付近の八ヶ岳山麓。高原野菜の産地として知られるここ野辺山高原には"日本で一番"がいくつかあります。標高1375mのJRの最高地点に、JRで一番標高の高い野辺山高原駅(1345m)、それに全国で一番出荷時期の早い、冬季限定の「寒じめほうれん草」です。
JA長野八ヶ岳南牧支所管内では、4年ほど前からこの寒じめほうれん草の栽培に取り組み、今シーズンは22軒の農家が、11月下旬ころまでの収穫期を現在迎えています。2年前から栽培に取り組んだ高見澤玲子(たかみざわれいこ)さん(42)の畑でも、まさに今、濃い緑色と甘さが特徴の寒じめほうれん草が収穫期を迎えていました。
八ヶ岳を望む畑にホウレンソウの畝が整然と並んでいます。
広さは約10a。近づくと、ちょうどタンポポの葉が地面を這うような形の寒じめほうれん草が生長していました。肉厚の葉と濃い緑色、葉の表面がちりめんのようにシワになっているのが特徴です。
寒じめほうれん草の特徴は
「寒じめ」とは霜に当てて育てる方法で、こごえて身を縮ませたかのような葉が、甘さとうま味を生むのだそうです。これは、ホウレンソウが葉を凍らせないように水分を少なくして、糖分を葉の中に溜め込む"自己防衛本能"を使った栽培方法です。8度以上の糖度を持ち、普通のホウレンソウよりビタミンCも豊富、さらにアクとなるシュウ酸が少ないのも特長です。
高見澤さんの畑では、夏場にレタスを栽培していた畝を使い、マルチシート(防草や保温、保湿などのために畑に張るシート)を張り替えて、ホウレンソウを育てています。9月上旬には、1穴に2〜3粒の種を手でまき、途中で間引きをして、収穫も1株1株の根を切りながらの手作業。
「意外と細やかな作業が多いので、女性向きの農作物かもしれませんね」と高見澤さん。
長年、父・英範さん(66)を手伝って農業をしてきた高見澤さんですが、2年前に父が副村長に就任されたため、「急きょ、農業経営者になってしまった」のだそうです。寒じめほうれん草をはじめたのも、独立して農業を行うようになってから。
「肥料や防除、病気のことなどは父任せだったので、毎日が勉強、これからも勉強です」と高見澤さん。現在は母・恵子(けいこ)さん(63)や、いとこと一緒に寒じめほうれん草を作っています。
「土を大切にしていた父から受け継いだ土地なので、地力があるんですよ。だから、寒じめほうれん草は肥料も農薬も少なく栽培できます。ただ、寒い時期の収穫なので作業は大変ですけどね」
11月下旬までに収穫を終えた畑は、父の土を継承するべく、良質の堆肥を入れて耕します。高見澤さんの堆肥は牛糞にもみ殻を混ぜ、何年もかけて発酵させた、父から受け継ぐ自家製の堆肥。冬越しをする前に、 この堆肥を土に混ぜることで固い地盤がほぐされ、微生物が増殖して、春には土の力が回復し、また来年も元気な野菜が育つというわけです。
寒じめほうれん草は南牧村(南佐久郡)の直売所などで販売されています。
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