夏のビールのお供、定番スティック野菜のレギュラーメンバーといえば、「セルリー」を忘れることはできません。盛夏にはシャキッとみずみずしい味わいを楽しませてくれるセルリーの定植がはじまっていました。
山梨県と境を接する標高約1000mの諏訪郡富士見町は、夏場でも冷涼な八ヶ岳山麓の気候を生かした、高原野菜の産地としても知られるところ。なかでもセルリーはJA信州諏訪管内の茅野市と富士見町と原村で栽培されており、夏場のセルリー市場の全国90%以上のシェアを誇ります。
セルリー栽培には手間がかかる
標高1150m。八ヶ岳を望む植松金昭(うえまつかねあき)さん(51)の畑でも、約120aの畑で定植作業がすすめられていました。今年は不安定な気象の上に、地元JA信州諏訪のセルリー専門委員会の副会長の要職を担っていることもあって、植松さんは「例年よりも5日くらい遅れ気味です」と言います。この日は快晴の空の下、16.5haの畑で、作業が急ピッチに進んでいました。
セルリーは水分を必要とする野菜
「セルリー栽培は意外と手間がかかるんですよ」と教えてくれたのは、JA諏訪信州営農部富士見町営農センターの篠原良平(しのはらりょうへい)さん。露地ものセルリーの栽培は、2月中旬に種まきが行われ、およそ1カ月後の3月中旬に本葉が2枚ほどの小さな苗を1本ずつ「プラグトレイ」と呼ばれる育苗容器へ、ピンセットなどを使って移植し、さらに1カ月後の4月中旬には樹脂製の「ポット」へ1苗ずつ移してから約1カ月後、5月中ごろまでハウス内で育てます。そうして20cmほどに生長した苗を畑へ定植するのです。
それから、さらに続く作業を、植松さんが言葉を引き継ぎました。
「定植したら、畝の間の通路や苗の根本に、ドロはねや雑草防止、地温度の上昇を防ぐためのワラを敷きます」
このワラを使うために、セルリー農家は稲作も同時に行い、畑で使用するワラを確保するのです。植松さんは続けます。
「成長とともに灌水にも気を使いますよ。セルリーは水分がとても必要な野菜だからね」
植松さんの畑では灌水に立場川の水を使います。立場川は八ヶ岳のひとつ、標高2889mの立場岳に端を発する清流。富士見町のセルリーがおいしいのは、冷涼な気候と八ヶ岳の伏流水という好条件がそろっていることにもありそうです。こうして定植から67日後の8月上旬、大きいもので1.8kg以上に育ったセルリーは全国へと出荷されて行きます。
ほんとうのセルリーを食べてください
セルリーの特長といえば、シャキシャキの歯ごたえと、みずみずしさ、そして独特の香りの3つです。最後の刺激的な香りはセダノリッドとセネリンという精油成分で、食欲増進やイライラを抑える効果があるといわれていますけれど、しかし、この香りが嫌われる理由にも挙げられることから、JA諏訪信州では独自に改良を重ねて、特有の香りを抑えた「諏訪3号」という品種を育てています。その柔らかな歯ごたえも特長です。植松さんは断言しました。
「本当のセルリーを食べればおいしさが分かりますよ」
セルリーにはカリウムや食物繊維が多く含まれていて、葉の部分にはビタミンAも含まれています。ほんもののおいしさを知るには、少し砂糖を加えたマヨネーズ味噌で食べる生食が一番ですが「キムチも評判」だとか。キムチの素などで簡単においしく出来るのだそうです。葉の部分は甘辛の佃煮風にしたり、天ぷらで食べたりするのがおすすめです。
露地ものセルリーは、早いもので7月中旬ころから出荷がはじまり8月をピークに11月中旬まで続きます。ビールのお供のスティック野菜だけでなく、今年はキムチでも楽しみたいものですね。
・JA信州諏訪のホームページ