加工品

王滝村の「すんき」物語

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小さな村に伝わる土地の味
「昔は各家々から"すんき"を茹でる煙がいくつも立ち昇っていたものでねぇ、それがここの晩秋の風景。そして『"酸(す)"かったら替えてくれるぅ?』なんて声が集落に響き渡って、それは賑やかだったものよ...」
そんな光景があったという舞台は、信州木曽、霊山御嶽山の麓、標高930mほどの山あいにある王滝村。現在、人口900人ほどというこの村で、300年ほど前からつくり続けられ、食されてきたのが「すんき」とも呼ばれる発酵食品の「すんき漬け」です。

木曽で栽培されている何種類かのカブの中でも、「王滝かぶ」という赤カブの茎葉部分を漬けたもので、越冬用の大切な食材として、長い間、土地の人に好んで食べられ続け、今でも欠かすことのできない漬物として、その味が守り伝えられています。

乳酸発酵を利用し、塩を使わない漬物
長い歴史をもつすんきですが、その味は各家庭、そしてその年々によっても異なるそうです。さらに、塩などの調味料を一切加えない漬け方には、決まったつくり方や分量があるわけでもなく、見よう見真似の経験と感が頼り。さらに、寒いほど美味しく漬かるというすんき漬けですが、ここ近年の温暖化による影響で以前ほどの寒さにならないため、漬け方は毎年実験的で試行錯誤の連続なのだとか。

美味しいすんき漬けは一代ではつくれない
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「すんきは漬け物の中でも一番難しいものなんです」と、話してくださったのは村のすんき漬け名人・山下愛子さん。それというのもすんきは塩を使わないため、雑菌が入りでもすればだめになってしまうから。「すんきはとても繊細なもの」と言う山下さん。「漬けはじめたころは心配で心配で。深夜に樽の蓋を開けて『きちんと漬かったかな?』って、そっと見にいったこともあったわねぇ。たいしたものではないんだけど、とにかく手間がかかる、一番難しい漬け物だわねぇ」。そんなすんきが上手く漬かると、これほどうれしいことはなく、ホッとするのだとか。
ちなみに木曽のほかの地域では、茎を刻んでから漬け込むところもありますが、茎を長いままで漬けるのが王滝村でつくられるすんき漬けの特徴。清水さんたちが試したところ、刻まずに漬け込んだほうが、まろやかで美味しいすんきにできあがるという結論に達したそうです。

酸っぱさが効く、健康増進効果に大注目!


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漬け物といっても塩を一切使わずに漬ける、国内唯一の乳酸発酵を利用しためずらしい漬け物です。酸っぱいほど美味しいとされているすんき漬けは、「酸っぱく漬かった家がある」と聞けば、そのすんきをもらいにいって"種"にする習慣があるように、「すんきの種はもらってつくれ」と言い伝えられているほど。その酸っぱさのヒミツが乳酸発酵によるもので、前の年の蕪菜を"種"として保管しておき、今年漬ける蕪菜に一緒に加えて漬け込むそうです。シャキシャキとした食感で、さっぱりとやわらかな酸味、そしてまろやかな甘さが口の中に広がります。はじめて食べる人は、「酸っぱーい!」と、その酸味に驚いてしまうかも。でも、この酸っぱさが便秘解消や美肌効果のもとなんです。そしてなんと、乳酸菌の含有量はヨーグルト並みにあり、継続的に食べ続けることで、免疫力を高め、花粉症などのアレルギー疾患の抑制や、ピロリ菌生育の抑制に対しても効果があることが、近年の研究で明らかになってきています。

山国の貧しさから生まれた貴重な食材
001-outakikabu.jpgその正体が明らかになるにつれて、全国から熱い視線が注がれはじめたすんき漬け。しかし、「すんきが息づいたのは、貧しさがゆえであったからかもしれません」と、JA木曽女性部王滝支部代表の清水和子さん。「山林に囲まれて耕作地が少ないこの土地では、今のように交通も発達していなくて。昔はなんにもなかったんです。海からは遠いので魚は川で釣って、細々と小さな土地で蕪菜を育て、そうして冬場の食べ物が手に入らなくなる間、昔の人たちが考えたのがこのすんき漬け。当時、塩はとても貴重でなかなか買えなかった時代ですから、塩を使わないこんな作り方になったのでしょう。私も昔からすんきばかり食べさせられてきて(笑)。今の食生活からしたら、よく生きのびれたなぁとも思うけど」と、穏やかな表情を浮かべる清水さん。

王滝村におけるすんき漬けの未来は...
このすんきをはじめ、地域で農業を担う中心となっているのが、清水さんら70代半ばを平均年齢とする女衆。そんな彼女たちの悩みが、すんきづくりの後継者のこと。「今の母親世代で、すんきをつくる人が少なくなっているのが一番の心配。自分たちであと何年つくることができるのか、そしてその後は...。代々この地でつくり続けられてきたすんき漬けが、これから先どうなるか。手間のかかるものだけど、ぜひともすんき漬けをつくり続けていってほしい」と、清水さんは力強く話してくれました。


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そして今、その願いを受け継ぐのが地元の中学生。授業の一環としてカブの種蒔きから漬け込みまで、すんき漬けの一連作業を清水さんらに教わりながら取り組んでいるのです。訪れたその日は王滝中学校1年の全生徒6名がすんき漬けの漬け込みを体験していました。少し遠巻きながらも興味深々の様子で清水さんの作業を眺め、ぎこちない手つきで指導を受ける子どもたち。そんな子どもたちが漬けたすんきは学校給食で食べるのだそうで、そのできあがりも待ち遠しいところです。

実は八方美人!? 組み合わせは無限大

「すんき大好き〜!」と、大声で返事をしてくれた中学生に、その食べ方を聞いてみました。
「チャーハンに入れたり、カレーにも入れて食べるよ!」と、ちょっと得意げな様子。
初心者の方におすすめの食べ方は、すんきにかつおぶしや醤油をかけて、さっぱりとした味わいを楽しむこと。ご飯にかけても美味しく、酒のつまみにもなります。
そして、木曽を訪れたときにぜひ召し上がっていただきたいのが、地元名物の「すんきそば」。木曽地方の伝統的郷土食で、刻んだすんきがトッピングされた温かいそばです。
地元定番の食べ方は、味噌汁に刻みすんきを入れたもの。ポイントは、すんきの味を消さない程度に味噌少なめで薄味に仕立てること。加える具は豆腐がおすすめだそうです。
その希少さから珍品扱いされるすんきですが、味の個性はそれほど強くありません。おやきやピザと合わせるなど、いろいろな料理に組み合わせられる無限の自由度がある食材。「3度の味噌汁は毎回すんきでいい」と、すんきをこよなく愛する清水さんが、「おいしい食べ方があったらぜひ教えてください」と言うほどです。

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秋も深まった11月から漬け込みが始まったすんき漬けは、12月中旬から年末までJA木曽王滝支所で販売される予定です。
山あいの限られた畑の中、すべてを手作業で行うすんき漬けは、あまりたくさんの量を仕込めませんが、この機会に少しでも多くの方にすんき漬けの美味しさを体験してほしいと思います。
ヘルシーで身体にやさしい王滝村の「すんき漬け」をぜひご堪能ください。

お問い合わせ

・JA木曽王滝支所
住所:木曽郡王滝村2891−1
電話:0264−48−2121

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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