新米がおいしい季節がやってきました。ご飯をいつもはおかずと一緒に食べている方も、この実りの秋だけは、ほかほかの炊きたてご飯だけを頬張って、お米そのものの味を堪能したくなるのではないですか。噛むほどに独特の甘みが出てきて、新米は本当においしいですよね。
長く日本人の主食として愛されてきたお米ですが、最近になってもうひとつの食べ方も注目されてきています。それが"米粉"、お米を粉砕した粉を使った料理です。米粉自体は新しいものではありませんが、近年になって「粒子を平均数十マイクロメートル以下まで細かくした微細粉米粉」(ウィキペディアによる)が出回るようになって俄然注目されはじめ、いまでは街のスーパーなどでも、米粉パンや、米粉ケーキなど、様々な商品が売られています。今回は、米所自慢が揃っている信州のJAの中で、真っ先に米粉に注目し、3年ほど前に米粉を作る機械を導入した、JA信州うえだの搗精(とうせい)工場におじゃましてきました。
もとがおいしいお米だから
JA信州うえだは、長野県の北東部に位置し、上田市、東御市の一部、長和町、青木村をそのエリアとしています。野菜や果物もたくさん作っている地域ですが、お米に関して言えば、強粘土質の水田が多く、おいしいお米が育つ好条件下にあります。特に上田市の南西に位置する塩田地区は、有名なお米が穫れることで有名です。「県内にはもっと有名な産地はありますが、うえだのお米だって、負けてはいませんよ!!」と、JA信州うえだの方も自信満々に話します。
米自慢のJA信州うえだですが、他の地域に負けないこだわりを持っています。それが、お米を精米する自前の搗精(とうせい)工場です。「搗精」という聞き慣れない言葉を辞書で調べてみると、「お米をついて白くすること」とあります。搗精工場とは、つまり大きな精米所ってことですね。
当然米粉からできたパンもおいしい
搗精工場にお邪魔するなり「まずはうちの米粉で作った米粉パン、食べてみてよ。」と言って何種類かのパンを持ってきてくださったのが、搗精工場の寺坂工場長。はじめ口に入れた時は、あれ、あんまり普通の(小麦粉の)パンと変わらないかなーと思いましたが、噛んでみるとなるほど、普通のパンよりモチモチ感を感じます。そしてさらに、噛めば噛むほどお米の甘み・風味が出てきます。これこれ、お米独特の甘さを感じられるのが米粉パンの魅力なんですよね。
この米粉は搗精工場で精米された自慢のコシヒカリやあきたこまちを使って製粉した、100%JA信州うえだ産の米粉。おいしくないはずがありません。学校給食で時々米粉パンを食べるという地元の小学生にも、「米粉パンの方が好き。だってモチモチしてるもん。」と好評です。
パンを作っているのは、地元食材でパンやおやきなどを作って販売している東御市の農事組合法人"味工房ゆらり"。上信越自動車道、東部湯の丸ICの近くの"湯楽里館(ゆらりかん)"という温泉施設・レストランに併設されています。米粉パンの他にも、米粉を使ったおやきも作っているので、是非お試しあれ。
もちもちのうどんもできた
パンの種類も沢山あり、何より米粉の風味が癖になるのでパクパクと食べていたところ、「こんなのもあるんだよ。」と出していただいたのが、米粉を混ぜた"うどん"です。米粉だけだと千切れやすくなってしまうので、普通のうどん粉に混ぜてあるとのことですが、どれどれ、お味のほどは。。。ん、うどんのモチモチ感がアップしていて、やっぱり噛めば噛むほどお米の風味が感じられます。かといってうどんっぽさは無くしておらず、麺つゆとの相性もバッチリ。これも癖になる味です。
米粉うどんは、上田菅平ICを降りてすぐの直売所"食彩館"併設の食事処、"しなの木"の人気メニューとのこと。食彩館では、味工房ゆらりの米粉パンや米粉おやき、搗精工場で製粉された米粉も購入することが出来ます。米粉料理に興味のある方は、上田菅平ICをご利用の際に是非お立ち寄りください。
1時間に10キロしか作れません
搗精工場に米粉を作る最新式の機械、米粉用製粉機が導入されたのは2年前、2009年の1月。県内JAでは初、東信(長野県の東部地方)地域では民間も含めて初めての導入だったとか。その製粉機は気流粉砕方式といって、小さく砕いたお米を気流で高速回転させながらぶつけあうことで、小さな粒子にする仕組み。70〜80ミクロンと、ものすごく細かくするため、作れる量は1時間に10kg程度と少量ですが、この技術が開発されたことで、小麦粉のようにケーキやパン、うどんなどに混ぜることができるようになりました。そのおかげでJAの直売所やAコープで粉のまま販売されたり、米粉パンに使われたりと大活躍。最近では、米粉用製粉機の導入を検討している企業やJAなどが見学に来ることが多くなったそうです。学校給食で出される米粉パンも、以前は年に4回程度だったのが、1ヶ月に1回ほどの頻度で出されるようになったようで、静かに米粉が盛り上がっているのがわかります。JAで作られた米粉が地産地消や食育、地域での米消費拡大の一端を担っているんですね。
食料自給率がカロリーベースで39%と、食べ物の半分以上を輸入に頼っていることになる日本。主食としてずっと培われてきた稲作で自給率の向上を目指すためにも、米粉にはこれからも注目です。なおJA信州うえだ産米100%の米粉を使用したケーキやパン、うどん用の麺などは、直営の農畜産物直売所"マルシェ国分"でも手に入れることが出来ます。
関連サイト:
長野県米粉情報 長野県公式ホームページ