あれはほぼ1ヶ月前の9月中旬、ナイアガラを求めて塩尻市を訪れた際、「10月に入れば、とっておきのナイアガラが出来るから是非またおいで」と声を掛けていただいていたわけで、そんなブドウに期待を膨らませながら、今月もまた塩尻市の広丘地区へと出掛けたのでした。
ブドウの出盛りもそろそろ終盤を告げる頃とはいえ、この時期になってようやく巡りあうことの出来るブドウと会うために。ナイアガラという名を一部に付けながらも、あの若々しい黄緑色をした、甘さと爽やかな酸味を持つナイアガラとは異なり、香りいと高く、まったりとした甘みをもつそのブドウの名は"ゴールデンナイアガラ"。それは見た目だけでなく、実にその名に相応しい味わいのブドウでした。
タメイキのもれるブドウ
出迎えてくれたのは、再びブドウ部会部会長の山田英昭さん。袋掛けされたたくさんのブドウがぶら下がる園の中を見渡しながら、そのなかから目ぼしいブドウの、覆い被さる袋をおもむろにビリビリと破り、現れたそのブドウを見るなり「い〜い色をしているなぁ」と感嘆した様子でひと言。
破かれた袋の中には、まるでブドウも紅葉に合わせるかのように黄金色に色付いているブドウが見えました。「収穫をしながらこのブドウを目にする度ワクワクするんだよ。だから自分の手から離れていってしまうのはちょっと惜しい気もするほどだけど、誰がこのブドウを食べてくれるんだろうという楽しみもあるね」
と、そんな話をしながら手渡してくれたブドウの、なんて豊かないい香り。胸いっぱいにその香りを吸い込み、そして慎重にひと粒、その粒に吸い付いてみれば、まるで心までトロケそうなほど。「う〜ん・・・」と唸ったきり言葉を発するのも忘れます。
味は言葉にできない
「このブドウの味を上手く表現するのはちょっと難しいほどだよね」とさしもの山田さんも言うほど。
このゴールデンナイアガラ、じつはナイアガラとは同じ木から生るのですが、ナイアガラが陽の光りを直接浴びて育てる一方、このゴールデンナイアは、しっかりと実の付いた形の良いものを選りすぐり、それに袋掛けをしたもので、通常ナイアガラが9月中旬くらいから収穫となるところを、ゴールデンナイアはナイアガラよりも20日ほど収穫を遅らせ10月頭くらいから収穫がはじまるもので、その間十分に完熟させて育てたもの。けれど長い間木に実を付けておくのは、木にも負担がかかるため、ゴールデンナイアガラとして栽培するのは1本の木で全体の3分の1ほどに留めているのだそうです。
とてもスペシャルなブドウ
ナイアガラのなかでもゴールデンと呼べるナイアガラは、ひと房の目方が230グラム以上、形がしっかりとしてゴールド色をした見た目の美しさ。そして粒にメロンの表面にあるようなスジが浮き出てくるものが特徴だそうです。糖度計でその甘さを測ってみるのなら、20度くらいはあるのではないかという程に、ひと粒にたっぷりと甘味の詰まったブドウです。
ちなみに、ワインの原料にもなるナイアガラですから、「ゴールデンナイアはワインにしないのですか?」との問いには「ワインなんてもったいない! これはこのままを直接人の口の中に入れてじっくりと味わって欲しい味だよ」と(山田さん)。
ゴールデンナイアガラ!
現在では実に多くの品種があるブドウ。そのため今ではナイアガラの生産は国内でも3%ほどだとも。「昔はこのあたりでも多くブドウが栽培されていたけれど、今はブドウを作る人もだいぶ少なくなってしまって・・・」と残念そうに言いながらも「このナイアガラが大好きなんだよ、このブドウは他にはない、ここ塩尻の特産だから、ずーっとこのナイアガラを作り続けていきたいって思う」と山田さんは力強く話し「果物の中でも、やっぱりブドウが一番好き。毎年毎年この時期がくると収穫しながら自然と笑顔になってるよ。毎年のことだけれど収穫は、やっぱり楽しいね」と笑みがこぼれました。
10月上旬から収穫の始まったゴールデンナイアガラ。10月20日過ぎまで収穫が予定されています。
お求めは:JA塩尻市 ワイン農産物直売所 塩尻市広丘郷原1811−6
電話0263−521965